第56話 閑話 高校とバカと部活動結成①

 



 授業が全て終わり、ある人物達以外居なくたった放課後の「F」クラス内、そこには雄二、由紀、服部の3人が、ある男の話を聞く為に集まっていた。


 そんな集まった3人を見渡すと教壇の近くに立つ男が話しだした。


「今から我々の「部活」を作ろうと思っている……その為に後必要な事がある、何だと思うかな?諸君」


 そんな質問を雄二達に投げかけている男こそ慎二だ。


 上から目線の質問に少しイラッとしながらも雄二が答えた。


「………人数は集まってる、「顧問」も決まってる、生徒会長の承諾も貰える事になってると……他に何かあるか?お前の事だから「やる気!」とかふざけた事を言うきか?」

「そんなわけ無いでしょこのアンポンタン!やる気なんて「人助の部活」を始めるって時に既に持ち合わせてるわよ!」


 そんな事を少しオカマ口調で怒鳴って来た。


「じゃあ、なんなんだよ……」

「全く雄二はそこで考えてなさい!ハトケンはわかるよね?」


 話を振られた服部は少し考えてから慎二に話してみた。


「やっぱり「人助」が目的なんだから情報とか?」

「うーん!違う!情報もとても必要だけどまず今直ぐに必要なものなんだよね〜ハトケンもわからないか……なら由紀はどう?」

「えっと…その……「部活」の名前………とか?」


 由紀の言葉を聞いた慎二は下を向いたと思ったらいきなり顔を上げて由紀に称賛の言葉を送った。


「ブラボー!由紀その通りさ!名前がまだ決まってない……だから今から皆で決めようと思うんだ」

「わかったけど、いきなり素に戻るなよ……」

「ごめん、ごめん!勢いが大事だと思ってね、疲れるから僕ももうやらないよ」


 ちょっと威厳?を出してやってみたけど僕には向いて無いね!


「名前か〜適当に言ってみたけど当たってたみたいで良かったよ、でも、皆何か決めてるの?」


 そんな由紀の言葉に3人は明後日の方向に顔を向けてしまった。


「………僕もだけど誰も決めて無かったんだね……」

「俺も決めて無かったからあまり言えんが慎二、お前は何か決めてこいよ……」

「いや、一応1つは決めて来たよ?でもこういうのって皆で意見出して考えた方がなんか良いじゃん?」


 僕が1人で決めても良いけど、今後3年間はお世話になる「部活」の名前決めだからね、皆でワイワイやった方が記憶に残るし楽しいよね!


「名前か、普通に「人助部」で良いんじゃないか?わかりやすい方が良いだろ?」

「却下、ど却下です!わかりやすいけど安直すぎ!」 

「じゃあ何が良いんだよ?お前は考えて来たんだろ?言ってみろよ」

「皆の意見が出たら言うよ、そのあとはどの案が良いか決めるからね」

「俺の案は今、却下しただろうが……」


 雄二はぶつぶつと言っていたが、気にせず次に進む事にした。


「「ヘルパーズ」なんてのはどうかな?助けるとか手伝うを良くヘルプとか言うじゃないか?」

「なんか介護関係でそんな名前ありそうだけど、ハトケンの意見はそれで良いかな?」

「ああ、僕はこれで」

「………‥」


 順調、順調!次は由紀で最後かな?なんか雄二が無言でこっちを見てるけど気にせず行こう!


「由紀はなんかあるかな?」


 由紀にそう話かけると少し考えてから伝えて来た。


「僕ねこないだあるマンガを読んだんだよ、その内容が「人助」を目的とした学園の物語でね!そこから取って「スケッ「止めるんだ由紀!その先は言ったら何かヤバい気がする!何がヤバいかはわからないけど」……わかったよ」


 何か今由紀が言おうとした言葉はこのままだと危ないと直感が言うから止めたけどなんだったんだろう?


「じゃあ、気を取り直して由紀、どんなのあるかな?」


 慎二はさっきの出来事は無かった程にして進める事にした。


「うーん……「MKKH部」とかはどうかな?」

「MKKH部」?……これはもしかするとここにいる4人の名字の頭文字を使った感じで良いのかな?」

「うん、そうだよ!読み方は「マカハ部」、全員の名前入ってると良いと思ってさ!」


 そう慎二が由紀に聞くとその通りと言わんばかりに由紀が答えたくれた。


「「MKKH部」か……良いんじゃないかな?じゃあ由紀はこの意見で決まりだね?」

「うん!」

「じゃあ、最後は僕が考えた名前を言うから今出た2つと僕のでどれが良いか決めようか!」


 慎二がそう言うとどんな名前にしたのか3人は興味深々なのか早く言えと言わんばかりに近づいてきた。


「僕が考えた名前は……「ヒポクリット部」略して「ヒポット部」だね、意味は偽善者だよ?」


 慎二のその言葉に3人は「流石にその名前は無いのでは?」という様な顔になっていた。


「………慎二君、流石にその名前はどうかと思うよ?仮にも「人助」を目的とする「部活」なんだから、もっと違う名前はあると思うんだよ」


 誰も何も言えない中、服部が慎二にそう伝えてきた。


 そんな服部の指摘に何か言われると分かっていた様な顔を慎二はしていた。


「何か言われることは承知でこの名前に僕は決めたんだよ」

「てことはだ、その「ヒポクリット部」?にした理由がちゃんとあるのか?」

「うん、しっかりとあるから今から話すよ」


 やっぱりこの名前は不審がるよね……でもこの名前が僕達には合っているんだよね。


「この名前にした理由がね、僕達はこれから色々な人々を「人助」してくね?その中で沢山のお礼や称賛の言葉をくれる人がいるだろう、でもね、それとは逆に不満や文句を言ってくる人だって出てくるだろう、例で出せば「お前達がもっと早く来てくれたら〇〇が助かったのに!」など言ってくる人もいるだろう、感情的になっていると頭の中ではわかっていても誰かのせいにしないとどうしようもない人だっているんだ、それに手遅れになってたら僕達は何も出来ない……雄二と由紀なら良くわかるんじゃ無いか?前回の「田村亮二」の件がそうだから」


 その言葉を慎二が2人に言うと苦虫を噛んだ様な顔になってしまった。


「ああ…良くわかる……俺達がどれほど力が無いのか痛感させられたよ……」

「うん、慎二君に指示してもらわないと何も出来なかった。あの不甲斐ない気持ちにもうなりたく無いよ!」


 雄二と由紀はあの時何も出来なかった事を今でも思う事がある。


 「人助」なんて初めてだからと言ってしまえば終わりだが、それはただの言い訳になってしまうのだ。


「そう、この世界は沢山の理不尽で出来ている、僕達は人間であって超人や神様なんかじゃ無いんだ。それでも「人助」をしていく中ではいつかは通らなくてはいけない道だと思う。1人は助けられても全部の人は助けられない、その逆で全部の人を救う為に1人を切り離さなくてはいけない時だってある、その時は「ああしなくては皆を救えなかった」と、自分自身に言い訳をするだろう」


 その話を慎二が言うと少し悲しい表情をしていた。

 

 でも、それでも話を辞めない。


「………僕達は助けたいから人を助ける、見返りなんていらない、助けて欲しくないと言っても必ず助ける!…だから……僕達は偽善者に思われても良いと思ってこの名前にしたんだ、こんな「部活」嫌だと思うなら抜けても全然良いからね?」


 慎二は自分が考えていた事を3人に言った、もしかしたら「こんな理不尽な「部活」なんて入りたくない!」と言われるかもしれないと思って覚悟はしていた。


 でも3人は違かった。


「バカ野郎!お前達と「部活」を作るってあの時約束しただろうが!それにもう間違えねぇ、俺は慎二達となら偽善者だって言われてもかまわねぇよ、だから抜けても良いなんて言うんじゃねえ!」


 雄二がそんな事を思ってくれたなんて……


「僕だってそうだよ!慎二君達と会う前は何もやりたい事なんて無くてただ生活していた、でも今やりがいが見つかったんだ、それを諦める様な男には僕はなりたくないよ!」


 由紀、最初は女の子かと思ってたけど、ちゃんと男らしいじゃないか……


「………慎二君疑って済まなかった、そんな理由がしっかりとあったとは……僕は雄二君や由紀君とは違って「人助」なんてした事は無い、でも君達と同じ道を進みたいんだ、僕も仲間に入れてくれないか?」


 服部は慎二に頭を下げると自分も仲間に入りたいと言ってきた。


「3人の思いはわかったよ、僕と一緒に「人助」をやってくれ!……それにバカだなぁハトケンは、もう僕達は仲間でしょ?「部活」を作るって言った人はハトケンだよ?」


 そんな慎二の言葉に雄二と由紀は喜び、服部は苦笑いしながら「そうだったね」と言っていた。


 その後は名前をどれにするでもなく「部活動名」は「ヒポット部」になった、次に部長を決めようと言ったら満場一致で慎二になってしまった、その為承諾のサインを担任の剛田先生に貰いに行くことにした。


「じゃあ、剛田先生に承諾のサイン貰ってくるからね?今なら辞められるよ?本当にこれからは辛い思いや、苦しい思い、どうしようも無い事に直面するかもしれない、地獄を見るかもしれない……それでも僕と「人助」をやるんだね?」


 その言葉を聞いた3人は何を今更と言わんばかりに言ってきた。


「そん時はその時だろ?4人でその状況をひっくり返しちまおうぜ?」

「僕達は1人じゃない、仲間がいるんだよ?こんなに信頼してる、ね?」

「愚問だね慎二君、それに情報を集めてくるスペシャリストがいた方が何かと便利でしょ?」

「………気持ちは変わらないみたいだね、では行ってくるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る