第50話 高校とバカとこれからと


 慎二は初めからこうなる事がわかっていた、だからわざと自分に注目させて「田村亮二」に拳銃を撃たせたのだ。


 では何で生きているのか?と言われると、この廃ビルに来る前に警察官に用意して貰ってた物が役に立ったのだ。


 その物こそ「防弾チョッキ」だ、何処に当たるかも「未来」がわかっている慎二には簡単に軌道を変える事が出来、事なきを得た。


 血を流した様に見えたのも作戦を始める前から口の中に入れていた「血糊」を噛んだからだ、最初から慎二の手のひらで踊らされていたのだ。


「何でお前が生きてやがる!?完全に当てた筈だぞ!?」


 そんな事を言う「田村亮二」だが、慎二に殴られたのが効いてるのか軽い脳震盪を起こして上手く起き上がれない為、下から化け物を見る様に慎二を見ていた。


「何でだと思う?まあアンタ如きじゃあ分かる訳ないと思うけどさ〜もう積みなんだよ?……それにうちらの高校の由比ヶ浜先生まで脅してた……許すわけが無いでしょ?」


 そんな事を言いながら拳を固めて近づいてくる慎二に得体の知れない恐怖を沸き始めた「田村亮二」はその場限りの命乞いをした。


「わ、悪かった!何でもするから許してくれ!……今まで行ってきた悪事も全部話すから!?それに由比ヶ浜の件も手を引く、絶対だ!な?だから許してくれよ!?」


 そんな事を言いながらも力が入らない手で近くに転がっている拳銃を拾おうとしていた。


 でもそんなもの「嘘」が見えてる慎二に通用する筈がなく伸ばした手を踏まれた。


「ギャア!?」

「懲りないね?アンタの次の行動は全部「見えてる」んだよ?今言っていた言葉も全部「嘘」で、僕が隙を見せた時にここにある拳銃を拾って僕にまた反撃でもしようとした?悪足掻きはよしなよ、大人がみっともない……」


 踏まれた手を押さえることも出来ずただ、ただ、何で自分の行動が全部筒抜けになってる、とさっきよりも恐怖が増して「田村亮二」は動けなくなってしまった。


 その状況を見ていた慎二は自分の足元にあった拳銃を拾って「田村亮二」の額に銃口の標準を合わせた。


「この拳銃を今アンタに撃ったらどうなると思う?バカでも分かるよね?……当たり処が悪かったら人なんてアッサリと死んでしまう……当たっても出血多量で死んでしまうかも知れない…でもお前は躊躇いもなく撃った…罪もない人を殺した…罪もない人を不幸にした…これからもするだろう…そんな奴が改心なんてする筈がない……だったらもう生きていても意味………無いでしょ?」


 その言葉を聞いた「田村亮二」は自分は殺されると思ったのかその場でガタガタ震えてしまい何も言えなくなり、ただ、慎二を見ることしか出来なかった。


「怖くてもう命乞いすら出来ないか…ならやるなよ……自分が死ぬ事も想像出来ない奴が他人の人生を踏みにじるなよ!」


 その言葉と共に一歩力強く近づいた。


「お前が今まで何人の人間を不幸にして来たと思っている?…中にはもう手遅れの人だっている、此処に捕まっていた人だってそうだ……お前に理不尽に捕まり…不幸にされ…苦しめられ…辱めを受けた……その償いを受けてもらう!」

「ーーーっ!」


 そう慎二が言って拳銃に力を込めた瞬間、恐怖に耐えられなくなったのか「田村亮二」は白目を剥きその場で気絶してしまった。


「………情けない奴だな…でもこれで良い…僕は裁かない…お前は今まで苦しめていた人達の償いとして法律で裁かれろ。それでも世界の人々がお前のやって来た事を肯定するなら僕がお前の全てを否定する!……もう聞こえていないか」


 慎二と「田村亮二」の掛け合いを見ていた人々はやっと本当に終わったと言う気持ちと慎二が人を殺めなくて良かったと心の底から思った。


 そんな中、いつもの雰囲気に戻った慎二は待機していた警察官の皆の方に振り向き後の事を頼む事にした。


「櫻井所長達、後は任せてしまって良いですか?少し疲れてしまって」

「良いに決まってるだろう?慎二君は大人の俺らが何も出来ない中、1人で解決してしまったんだ、今は休みなさい……でもあんまり無茶な事はしないでくれよ?拳銃で撃たれた時はヒヤヒヤしたぞ?」

「僕だけの力なんかじゃ決して無いですよ、ここにいる人々全員の力です……それに今後は控えます、でも無茶も無謀も子供だけの特権でしょ?」


 そう言いながらも他の警察官の皆が今回の犯人達に手錠を付けてパトカーの中に連れて行った、その時まだ「田村亮二」は気絶していた。


 そんな事を慎二達が話していたら、雄二達が近づいて来たので大丈夫だったか伝えようかと思ったその時、慎二の足元に誰かがぶつかって来たので下を見たら小さな女の子がいた。


 そんな少女に慎二は屈んで視線を合わせてどうしたのか聞いてみた。


「どうしたの?君もここで捕まってた子だよね?もう悪い奴はお兄さん達がやっつけたから安心だよ?」


 優しい声で少女に伝えてあげたら尚更足に抱きつかれてしまった。


 その事に戸惑っていると。


「本当に「ヒーロー」さんが私達を助けに来てくれた!悪いおじさん達を倒してくれた時とてもカッコよかったよ!助けてくれてありがとうね!」


 と、慎二にお礼の言葉を言ってきたのだ。


 その事が不意打ちすぎて、慎二は最初言葉が詰まってしまった。


「ーーーっ!……どういたしまして…僕も助けられて良かったよ……君もこんなに小さいのに良く頑張ったね!」


 慎二は頑張った少女の頭を撫でてあげた、初めは恥ずかしそうにしていた少女も慎二のなでなでを気持ちよさそうに体を任せていた。


 その時、ニヤニヤとした友人達も近づいて来た。


「見せてくれるねぇ、えぇ?慎二さんよ〜お前がロリコンだとはな〜」

「慎二君、その子は恵奈ちゃんて言ってねずっと君を「ヒーロー」の助けを待っていたんだよ?……でも慎二君がロリコンだとは……」

「誰がロリコンだ!僕は頑張った子がいたから褒めただけだよ!……でも2人共無事で本当に良かった!」


 慎二達は自分達の生還を祝いハイタッチをしていた、そんな慎二達を見ていた捕まっていた女性達は我先にとお礼の言葉を言って来た。


 何故か殆どの女性が慎二を見る目が危なかったが、握手も求められたが慎二と握手をした人が全然離れない為雄二達と警察官で離れさせるのが1番労力を使った。


 そんな事もようやく収まり慎二達は櫻井所長が乗っていたパトカーに一緒に乗っていた。


 あの後捕まっていた人々は警察官に保護されて自宅まで送られる事になった、残った警察官は「田村亮二」が隠していた悪事を見つけられたそうでこれで完全に証拠を掴んだと言っていた。


「やっと俺らも帰れるけど、最初は誘拐犯の車に乗りその後はパトカーか……俺ら普通の日常送ってねえよな?」


 高校までの帰路の最中雄二が今まで起きた事を思い出してたみたいだ。


「でも、これから「人助」をやるって言ったらこんな事しょっちゅうじゃないの?」

「いや、こんな事が毎日起きていたら体が持たないよ」


 由紀は怖い事を言うね、その言葉通りになったらどうするのさ。


「でも今回の慎二も凄かったよな〜犯人に銃で撃たれた時何で無傷だったんだ?」


 雄二は気になったらしく慎二に聞いたきた。


「ん?ああ、防弾チョッキを着てたってのもあるけど弾の軌道さえ分かってれば案外簡単だよ?」

「アホか!どうやって弾の軌道なんて読むんだよ……そんなの人間技じゃねえだろ……」


 それも、そうか……僕は「未来を見た」から分かったけど普通の人じゃ無理だよね……


「まあ、勘かな?」

「勘かよ……出来る気がしねぇから絶対真似しないわ」


 い、一応納得してくれたかな?


「じゃあさ、じゃあさ!慎二君が口から血を出してたのってどうやったの?」


 由紀もかなり食いつくね、、


「ああ、あれは「田村亮二」と会う前に事前に口の中に「血糊」を入れてたんだよ、「撃たれた!」と思った時に噛んで吐血してるように演出をしたってわけだよ」

「いや、慎二君それも普通の人じゃ出来ないと思うよ……」


 えぇ、これも出来ないの……


「ま、まあ?慣れだよ、慣れ!」


 そんな事を2人に行ったけど何か不満を持ってるような顔を向けて来た。


「慎二は良いよな色々出来てさ、努力は沢山してると思うんだがやっぱり羨ましいと思っちまうよなぁ〜」

「それは分かるかも、あれが出来たらカッコいいとか凄いと思う事を普通にやっちゃうからねぇ、もう尊敬の域だよ」


 何でも出来るから…か……


「僕だってね初めなんて何も出来なかったよ、失敗して、挫折して「人助」なんて辞めたいと思った事なんて何回もあったよ」

「じゃあ、どうして辛いのに続けてるの?」


 由紀がそんなありふれた事を聞いて来た。


 そんなの決まってるよね。


「人に感謝されるからだよ、多分「嘘」だと思うかもしれないけどね、僕は高校に入るまで誰からも信用も無く、信頼もされず、感謝なんてされた事なんて一回も無かったんだよ」 


 その話をしたら、雄二と由紀はやはり驚いた顔をしていた、ついでに運転をしてる櫻井所長も驚いてる。


「冗談だろ?お前みたいな奴がいんのに周りの奴らの目は節穴なのか?」


 そう言って貰えるだけでありがたいよね。


「そうなのかもしれないし、そうでもないかもしれない、僕でもわからないんだ、でもさ、初めて感謝された時は涙が出る程嬉しかったのを今でも覚えているよ、だから僕は皆の幸せの為、自分の幸せの為に「人助」をしてるんだ」


 そんな話をしていたらもうじき桜田高校に着くと櫻井所長に言われた。


「まあ、お前さんらも今後色々とあると思うけど頑張れや!……それに慎二君、君は今回ちゃんと誰かの「ヒーロー」になれたんじゃないか?」

「そうですね、ありがたい事にこんな僕なんかを「ヒーロー」と呼んでくれる子がいました、今後もそうなりたいと思えたのでもっと頑張って行きたいと思います!」


 「ヒーロー」か……僕にはそんな言葉向いてないのにね……


「ああ、頑張りな!そこの2人、雄二君と由紀君も何かあれば慎二君を支えてあげてくれ、1人じゃどうしようもない状況なんていくらでもあるからな」

「「わかりました!!」」

「ああ、それと今回慎二君達が行った事はまた表彰もんなんだけど……また貰いに来るか?」

「絶対いきません!」


 即刻お断りする事にした。


 そんな慎二が珍しかったが、慎二がそこまで嫌がるなら辞めとくかと今回は全員が辞退した。


「なんだ、つまらないな……慎二君の名言を言いたかったのに………「全てを僕が否定する!」キリッ……てな?」

「だから嫌なんですよ!?」


 そもそも「キリッ」なんてやってないわ!

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