第49話 高校とバカとヒーローと②
◆
・慎二サイド
警察官と合流した慎二はパトカーに乗り慎二の案内通り雄二達が連れて行かれた廃ビルまで来ていた。
廃ビルに着いた慎二達は直ぐにパトカーから静かに降りると、周りに誰もいないのを確認してからこれから行う内容を慎二が手短に話した。
「皆さん、今から前回と同様に僕が先に入って「田村亮二」達の気を引きます、出来たらそのまま犯人達を無効化しときますが、人質もいるからそれは難しいと思うので僕が入ってから5分後に皆さんが突入してきて下さい、恐らく中から男の悲鳴が聞こえると思うのでそれを合図に突入してきて下さい!」
「それは良いんだが、慎二君、君の友人が囮役をしてるからか少し焦っちゃいねぇか?焦ったら元も子もないからもっとリラックスしていきな」
櫻井所長は少し気になっていた。
パトカーに乗っている時から何処かソワソワしていていつもの慎二とは違うと思っていた為、指摘したのだ。
指摘された慎二は自分でも少し感づいていたのか、呼吸を整えると口を開いた。
「そう…ですよね……やっぱり心配みたいでさっきからずっと早く助けに行きたくてウズウズしていました。指摘して下さってありがとうございます!」
慎二は自分1人だったらこの後何が起きるか分かっている為動けるが、どうしても他の人が関わっているといてもたってもいられなくなっていた。
それは自分が無理を承知で行かせてしまったのもある。
「まあ、まだ若いんだ焦るのも失敗するのも今後色々経験をすれば良いさ、俺達はそんな慎二君を…々若者をカバーする為にいるんだからな、好きな様にやりな!」
そう言うと櫻井所長は乱暴に慎二の髪をわしゃわしゃとかき混ぜてきた。
「………カバー……頼みます」
そんな中、慎二は恥ずかしそうにされるがままになっていた。
慎二への揶揄いが終わると、少し真剣な表情になり櫻井所長が聞いてきた。
「さっき言っていたが、慎二君が入ってから5分経ってもその……悲鳴?が無かったら強行突破するからな?」
「そうですね、5分経っても何も無かったらお願いします!」
やっぱり本場の人は言う事が違うなぁ〜自分でもわからないぐらい焦ってたみたいだね気を付けないと!
「では、皆さん時間もそれ程無いので僕は先に行ってきます!後の事は任せましたよ!」
そう言って何も怖く無いのか廃ビルの中に慎二は1人で入って行ってしまった。
「参ったなぁ、あんな事言ったけど慎二君、あの子は中々大物になるぞ?……お前ら慎二君ぐらいの歳の時に何が起きるかわからない場所に入って行く勇気あったか?俺は無かった」
櫻井所長が来ていた警察官の皆に聞いたら全員が「そんな事を出来る筈がないでしょ」と、苦笑いを浮かべていた。
「………だよな……よし!お前ら気合いを入れろよ?大人の俺らが気張らなくてどうするってなぁ!」
その号令と共に全員が気合いを入れ直して突入の合図が来るのを今か今かと待っていた。
慎二は警察官の皆と別れると、直ぐに走りながら「真実の目」の力を使った。
「早速入れとくか「スイッチオン」!今から助けに行くからどうか無事で待っててくれよ!」
慎二は全速力で「未来で見た」通り道をどこも間違える事無く進んでいった。
少し進んだ所で大きな扉が見えた。
「この中に雄二達が捕まってる事になってるからね、でも「未来」の情報も全てが正しい訳じゃ無いから今まで使って来なかったあの能力を使ってみるかな、そう「透視」をね!」
恐らく誰でも「透視」という言葉は聞いた事があるだろう、名前の通り「全てを透かして見る」能力だ、かなり便利な能力なのに何故今まで使わなかったと思うかもしれないがそれにはちゃんと理由があった。
慎二曰くなんか使ったら色々と終わりそうだと、別に如何わしい事に使おうなどとは思っていなかったが、つい魔が刺して変な物でも「透視」をしてしまったら自分が自分では無くなってしまう可能性があった為だ。
ぶっちゃけてしまうと、今みたいな状況じゃなきゃ使わなかったからありがたいとすら思っている。
「「透視」は使った事が無いからしっかりと発動するか不安だけど「未来通り」なら「対象を見て透視」すると考えれば簡単に見れたんだよね……やって見るか………「壁の向こう側を見る」!」
そう慎二が言葉を発した瞬間先程まで扉があって中の様子が見えなかった筈なのに中の構造がどうなっているのか、人が何処にいるのか全てがはっきりと見えた。
「やった!1発で成功したみたいだね「見た」通り人が沢山集まっている所があるから恐らくそこに雄二達がいる筈だね、少し離れた場所に3人組がいるけどこれは「田村亮二」達かな?」
そう思い、慎二はその3人を「透視で見た」ら「田村亮二」達だと言う事がわかった。
それに「未来で見た」通りしっかりと拳銃も持っていた。
雄二達は拳銃の事を慎二は知らないと危惧していたが、「未来」を見ている慎二が知らない訳が無かった。
「今の所は全て「未来」通りだね、拳銃以外には何も持ってないみたいだから余程その拳銃が役に立つみたいだね、まあ僕にはそんな物効かないけど」
そんな事を呟いた慎二はもう待たせるのも悪いと思い、勢いよく扉を開いてショーの始まりを宣言する事にした。
悪者達が地獄のどん底に進むショーを。
「やあやあ!どうだい犯罪者諸君?今日も元気に暮らしてるかい?まあもうその生活もおさらばだけどね!本物の独房の中にこれから入るんだからな!」
と、無防備にも部屋の真ん中で両手を前に出して陣取っている慎二がいた。
その光景を部屋の中にいた雄二と由紀以外の全員が驚いた様に見ていた。
それは「田村亮二」達も例外では無かった。
慎二が犯人達を挑発する様に言ったのも理由がある、相手は拳銃なんて危ない物を持っているから出来るだけ自分にヘイトが集まる様に仕向けたのだ。
「おいおい、驚いたがお前みたいなガキ1人でどうするつもりだ?考え無しで突っ込んで来たバカとでも言うつもりか?」
驚きから立ち直ったのか慎二を憎々しげに見ていた「田村亮二」達は慎二を小馬鹿にした様に笑いながら言っていたが、そんな事慎二に通用する筈がなく。
「ちょっと何言ってるかわかりませんね〜ちゃんと人間の言葉話してもらえます?……ああ、所詮犯罪者だから何言ってもわからないか!」
そんな事を言い返し、しっかりと自分にヘイトが集まるのも忘れない。
そんな中、今がチャンスだと思い雄二と由紀は持っていたスプレーを犯人達にかけてやった。
「これでも食らえや、犯罪者共!」
「人を不幸にしてきた償いを受けろ!」
完全に油断していた「田村亮二」達の顔に思いっきりスプレーがかかった直後、到底人間があげられ無いような声を出した。
『ギャアアァァ!!顔が!目が痛い!!』
と、「田村亮二」達が悶絶している所に男達の悲鳴を聞きつけた為か待機していた沢山の警察官が突入して来て犯人達を囲んだ。
その光景を見て捕まっていた人達は「私達は助かるんだ」と希望を持ったのか喜びあっていた。
その光景を見ていた慎二は少し安堵していた。
(雄二と由紀はしっかりとやってくれたみたいだね…でも……これで終わりじゃ無いのを僕は知っている……そうだろ?「田村亮二」)
そう思い慎二が「田村亮二」の方を警戒を解かないで見てみたら、仲間の2人は警察官が来たのを見てもう無理だとその場で動かなくなっていたが、「田村亮二」だけはスプレーが直撃したせいか目を赤く染めながらも立ち上がり、慎二を親の仇でも見るように見ていた。
「全部お前だ、お前のせいで計画が台無しになったんだ……」
喋り出したと思ったら、慎二が全て悪いと言い出した。
「おいおい、僕はここに来てあんた達を煽てただけだよ?全て僕の責任か〜パニックになり過ぎて頭でもやったの?」
と、自分の頭を指差しながら尚も慎二は煽りまくる。
「終わりだ、全部終わりだ、だけどな?ただでは終わらねぇ!誰か1人でも道連れにしてやる!?」
だが、聞こえてないのかそんな事を言い出した「田村亮二」にその場にいた全ての人間が次何をするのか警戒した。
その時、「田村亮二」がジャケットの中に手を入れたと思ったら、黒い拳銃を出して慎二の方に向けて走り出した。
その光景を見て少し反応が遅れたのか慎二はその場で少し体を動かしただけだった。
「死ねーーー!」
そう叫びながら慎二に向けて拳銃の引き金を引いた。
「パンっ!」
と、鳴って拳銃から出た弾丸は寸分の狂いも無く慎二の胸に吸い込まれる様に当たった。
「………ぐっ!」
撃たれた慎二は、少し唸り胸を押さえると口から血を流して倒れてしまった。
その光景を今何が起きたのか理解が出来ず全員が動けずにしていたが……
『きゃあああああああ!!!』
と、ようやく今起きた事が理解出来たのか捕まっていた女性達の悲鳴で皆我に返った。
「慎二!?」
「慎二君!?」
『慎二君!?』
そんな言葉を慎二に問いかけるが返事は返ってこなかった。
ピクリとも動かず倒れている姿を見てその場で初めから見ていた雄二達が1番わかっていた…「もう慎二は助からないと」……そう………慎二以外は思っていた。
その光景を見て何が楽しいのか笑いながら「田村亮二」が叫び散らかしていた。
「俺をバカにした報いだ!?ただのガキの癖にして何を「ヒーロー」気取りになってやがる!爪が甘めーーんだよ!だから死ぬんだよ!?」
そんな「田村亮二」の言葉を聞き、まだ終わっていないとその場にいた人々は再度警戒を入れ直した。
「次は誰だー!?お前か!それともお前か!?死にテェ奴は出てこっがぎぇ!?」
「田村亮二」はその場にいる人々に拳銃を向けて脅していたが突如として何者かに思いっきり殴られ吹っ飛ばされた。
その光景を見ていた雄二達は理解が出来なかった。
だって、なんで「さっき亡くなった筈の慎二」が何も起きてない様に起き上がり「田村亮二」に右ストレートを入れてるのかと。
「田村亮二」も何が起きたのかわからなかった。
自分の周りには「死んだガキ」しかいなかった筈で完全にこっちが優位に立っていたのになんで、なんでそのガキが俺を殴ってるんだよ!?と。
そんな中、何事もなかった様に「田村亮二」に向けて散歩でもする様に歩く慎二は呑気に笑いながら口の端をあげながら喋り出した。
「全て僕の思うがままってね?」
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