第36話 高校とバカと親友と①
◆
この頃、慎二は新校舎と旧校舎の間に設置した「目安箱」を学校に来る前に見るようにしている。
まだ「部活」も始めていない為、そんなに相談事や依頼は無いが、ごく稀に「目安箱」の中に慎二達宛で手紙がある為、毎日見ている。
「今日もあるかなぁ」と思って「目安箱」を見てみたら1通の手紙が入っていた、そこには「前田慎二様へ」と書いてあるので自分宛と言うのがわかった。
手紙を見る為に「F」クラスの教室に行って開ける事にしたら、雄二が興味を持ったのか慎二の元まで来た。
「珍しいな、慎二個人宛に来てたのか、何が書いてあるか気になるが読んでみたら良いんじゃないか?」
「うん、今から読むつもりだよ、急ぎの内容とかだったら早く読んで確認した方が良いからね」
手紙には……中学の頃の「元親友」達から慎二とまた会って話してみたいという内容だった。
話せるんだったら今日話したいとの事で、会う時間は放課後で、場所は「目安箱」が置いてある近くにあるベンチと書いてある。
「何が書いてあったんだ?言いたく無かったら別に良いが」
「いや、別に大した事じゃないよ、今日中学の頃の友人が僕と会いたいんだってさ」
「会うつもりなのか?」
「うん、一度また話をしてみたいと思っていたんだ、中学の頃は僕も色々あってね……その頃の友人とはある事をきっかけに疎遠になっていたんだ……」
慎二がまだ自分の「負幸体質」を知らず、まだ神様と合っていない中学生の頃「親友」と呼べる人が何人かいた。が、「悪意ある嘘」で疎遠になってしまったのだ、恐らく今日会いたいというのは自分の「負幸体質」が以前より改善されている為、昔の出来事をおかしいと思い、会ってみたいと思ったのだろう。
中学生の頃は友達もそれなりにいて「親友」と呼べるような人もいた。
だが小学生の頃に「負幸体質」のせいか自分は悪く無いのに「嘘つき」と呼ばれ虐めに合っていた時期があり、その「親友」達も誰かから前田慎二は「嘘つき」だと言われ、それを真に受けて「信じて」しまった「親友」達は慎二から離れていき、側から見たら「親友」達が慎二を裏切ったという形になってしまった。
慎二自身も当時はおかしいとは思っていたし、まだ何も知らず子供だったというのもあったが「親友」達に裏切られたというショックが大きく自分から何も言い出せず疎遠になってしまった。
そんな「過去」を少しでも改善出来るなら会おう、決して元の状態に戻れなくても。
慎二はそう思うのだった。
「………と、言う事があってね、今日は会って話そうと思ってるよ」
話を聞いた雄二は意外な顔をしていたが、特に慎二が話した事に何も言ってくる事は無かった。
「………ふーん…お前も色々あんだな、まぁ、何かあれば言えよ?」
「うん、その時は雄二達に頼らせてもらうつもりだよ」
「なら良いさ」
慎二と雄二が話し終わると「キーンコーンカーンコーン」と、丁度1時間目の授業を始める音が響き渡った。
◆
放課後になった為手紙に書かれていた場所まで来た、雄二達も初めは「一緒に行く」と言っていたが「これは自分の問題だと」言い、一人で待ち合わせの場所に来た。
そこには少し成長しているが懐かしい面子が待っていた、
・「元親友」で気配りが出来るイケメンの「野田守」
・「元親友」で「守」の事が好きだと思っている、いつでも明るく可愛い「佐藤愛香」
・「元親友」で「守」の事が好きだと思っている、美人の「今井穂花」
・「友達」で「ライバル」だった「神田雪」
の、4人が慎二を待っていた。
始めにどんな言葉をかけて良いか分からなかった、この世界では半年間ぐらい疎遠になっていたが慎二が元にいた世界では約15年程会ってなかったという事になる。
両者とも何も言わずただ、顔だけを見ているという時間が続いたがある人物が泣きながら慎二に謝ってきた。
「………私達は許されない事をしました、あの時、中学3年生の時訳も聞かず貴方から離れてしまい1人にしてしまった、許されないと思います、でもこれだけは言わせて下さい、貴方と友達で良かった!」
そんな事を中学の「友達」だった神田雪が慎二に泣きながら中学の時言えなかった言葉を伝えて来た、その言葉に続き他の3人も謝って来た。
「そうだ、俺も、俺もあの時どうにかしていたんだ……親友のお前の事が信じてやれなかった、ただの噂なのにそれを信じ込み……お前を1人にしてしまった!本当にすまなかった!」
雪の後に中学でも1番の「親友」だった野田守が頭を抱え泣きながら謝って来た。
「私もなの、慎二の噂を聞いた瞬間何故か、慎二の事を訳もわからず嫌悪してこの人の側には居たくないと思い離れてしまったの!ごめんなさい!今更謝っても許してくれないかもしれないでもでも!本当にごめんなさい!」
いつもなら笑顔な顔中を涙で濡らしながら永遠と頭を下げながら「親友」だった佐藤愛香が謝って来た。
「私も、です、慎二君の話を、聞いたら何かわからない怖さを慎二君に感じて逃げてしまったんです!申し訳ありませんでした!」
そう言い美人な顔を泣き濡らしながら「親友」だった今井穂花が謝って来た。
「…………」
そんな中、慎二は何も言えなかった。
わかっている自分でもわかっているんだ、皆が自分から何も言わず離れて行ってしまったのは自分の体質のせいだと、でもそれでも慎二はあの時寂しかった、こんなにも友情は脆いのかと、こんなにも人生は苦しいのかと、でもこのまま自分が何か言わないとけじめを付けないと、この先には行けないその為慎二は声を発した。
「僕はあの時とても寂しかったんだ、最初何で皆が何も言わず僕から離れてしまったのかわからなかった、気づいた時にはもう手遅れだった、いや違うね……僕が手遅れにしてしまったんだ。あの時自分で「信じて」の一言でも言っていたら変わっていたかもしれないんだ、だから皆が悪い訳じゃない!元々は僕の噂が原因だし、僕の弱さが招いた結果なんだ、だからそんなに謝らないでくれよ……それに僕の方こそ心配をかけてごめんなさい!」
慎二も泣きながら今までの事を悔しかった事を苦しかった事を伝えて謝った。
でも皆は声を揃えて『慎二君は悪く無い!』と言ってくれた。
「それにさ、皆伝えたかった気持ちを言ったんだ、謝りたかった事を伝えたんだ……なら後は仲直りだけじゃ無いか?これで終わりみたいな雰囲気を出さないでくれよ……それに「過去」の出来事はどうしても変えられないかもしれない」
その言葉を慎二が口にした時4人共顔を下に向けてしまった、でもそのあと慎二が話を続けた。
「でも、でもさ!「未来」はこれからは変えられるじゃないか、そんな事ぐらいで諦めるなよ!こんな終わり方寂しいじゃないか!………それでも罪を償いたいと言うなら君達4人に償わせる機会を今与えるよ」
慎二の話を何も言わず真剣に聞き逃さないぞと言わんばかりにしている4人がいた。
「僕と、前田慎二と友達になって下さい!僕はバカだけど迷惑をこれからもかけるかもしれないけどまた友達に、友達になってよ」
その言葉を聞いた4人は声を揃えて口々に「当たり前」「当たり前だ!」「当たり前よ!」「当たり前です!」と言い、慎二と泣きながら抱き合った。
5人は今までの想いをぶつける様に大きな声で泣いた、誰に見られようが構いやしなかった、だってそんなもの吹き飛ばすぐらい今は幸せなのだから。
その後は5人で色々な話をした、慎二以外は頑張って「A」クラスに入ったり友達が沢山出来たなど今まで話せなかった事を沢山話あった。
「皆僕がいない間も元気そうで良かったよ、僕ももう大丈夫だよ、「F」クラスの皆はバカで気が利かなくて本当にどうしようもないバカの集まりのクラスだけど、こんな僕にも優しくしてくれて沢山の友達が出来たんだ!今度紹介するよ僕の大事な「親友」達ってさ!」
そう言いながら僕達は笑い合った、そうだ泣いているより笑い合っていた方が青春っぽくて良いじゃないかと。
時間も午後7時を回っていた為今度また会おうと連絡先を交換して慎二達は別れた。
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