第34話 高校とバカと聖書と訪問者と①
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レクリエーションがあってから一月が経ちもう5月の上旬だ、この時期になるとゴールデンウィークがあり学生やある一定の会社からしたら最高の月になるだろう。
高校生活でも色々と変わった、この頃いつもの4人の雄二、由紀、服部君と過ごす事が多くなりそれぞれの家に遊びに行く程に仲良くなった、この中にたまに村上君達や悠木さんや吉野さんが入るが大体男4人で行動している。
変わったと言ったら吉野さんも最初会った時よりはかなり優しくなったと思う、たまに暴力を振るわれるが……後は生徒会に入った事かな?仮ではあるが生徒会の皆は軽く迎えてくれた。
生徒会のメンバーは
・生徒会長の綾杉麗華(2年生「A」)
・副会長の由乃実里(2年生「A」)
・書記の牧ノ原鈴音(2年生「A」)
・書記の愛田小町(1年生「A」)
・会計の佐城愛香(1年生「A」)
の5人と@の僕事、前田慎二の6人だ。
皆良い人でかなり居心地はいい、最初は女性ばかりだからいづらいかなと思っていたがそんな事は無かった、ただこの頃は生徒会の皆が何かとボディタッチが多かったり2人になろうとしてくる、わからないが2人でいる所を見られると抜け駆けなどと言われ僕が処罰を受ける為、出来るだけ2人だけにならないようにしている、女子だけだから男子が珍しいのだろう……多分。
そんな僕が今何をしているかと言うといつもの4人と都内の本屋さんに来ていた。
今日は休みの日なので家でゆっくりしてようかと思ったけど雄二から召集がかかったのだ「聖書」を探しに行かないかと。
「聖書」とは何か?簡単に言ってしまえば18歳以上しか閲覧が出来ないと言う例のアレだ、ほとんどの健康な青少年なら一度は見た事があるだろう、今の時代はネット環境がありスマホさえあればどこでもそのような物が見れるようになっているが、やはり映像と実物は違う、これは人それぞれだと思うが慎二達は実物で見る事を選んだ。
ただ、実物を手に入れるというのは中々困難だ、店頭で買う場合でも恥ずかしかったり誰か知り合いに見られたらやだなという羞恥プレイにさらされる事になるからだ、そもそも今の時代はコンビニや本屋などに「聖書」は置かれる事が少なくなって来てる、その原因がさっき言ったようにスマホで閲覧出来てしまうからだ。
皆、多分思っている事は一緒だと思うけど、「人助」はしなくていいのか?って事だと思う、でもさ良く考えてよ?「3年間の内に徳を積む事」だよ?そんなに急いでも「徳」は直ぐに貯めれるわけじゃ無いんだからさ、たまには息抜きも必要だと思うんだ。
「部活」だってまだ作れてすら無いけど前回のレクリエーションの出来事があったからか、わざわざ旧校舎にある「F」クラスまで悩みとか相談してくる人が現れるようになったんだ、流石に普通の生徒がここまで来るのは申し分無いと思って新校舎と旧校舎の丁度中間に「目安箱」を設置する様になってなんとか落ち着いたよ、「貢献度」も「人助」をする毎に増えていってるからいずれは「F」クラスの教室をリフォームしたいな。
それに「真実の目」だって常時発動しとくわけにはいかないんだよ、かなり使える能力だと思うしこの能力に何度も助けられたさ、でもね一回一日中「真実の目」を使って過ごしてみたんだよ、あれは地獄だったね、最初は良かったけどお昼を過ぎた時には目が開けてられない程痛くなって、その後に頭が痛いのなんのって最悪だったよ……この事を知れたから「ここぞで使うぞ!」って時にしか使ってないんだ、人間には強過ぎた能力って事だよね。
そんな事を考えながら待ち合わせ場所の木戸書店の目の前まで来た、18歳以上の物を買う為、出来るだけ大人な感じで来いと雄二に言われた為自分が一番大人だと思う格好で来た。
「もう皆集まってるな、僕が最後だったみたいだまだ時間まで30分もあるけど皆早過ぎない?それに…皆お洒落だなー……なんか僕だけ場違い感あるんだけど」
近づいたら直ぐに雄二が僕を見つけてくれたけど、訝しげな目でこっちを見ている。
「………やっと来たか慎二、それよりもお前なんで「スーツ姿」なんだ?大人のイメージを持たれる格好とは言ったが……流石にその格好は想像して無かったぞ」
今雄二が言ったように僕は大人の格好「スーツ姿(笑)」で皆が集まる場所まで来てしまったのだ。
だってしょうがなく無い?以前の27歳の時の僕は、大人は「スーツ」と考えてたから完全にその考えしか浮かばなかったんだもん。
「まあいいじゃ無いか、慎二君「スーツ姿」も似合ってるよ……プッ!」
「おい「ハトケン」?今笑ったよな?それに僕だってわかってるよこの姿は場違いだってさ!」
服部の事を「ハトケン」と読んだが、この一ヶ月程でかなり仲良くなった事で名字で呼び合うのもなんかおかしいと思って服部が慎二の名前を言う時は「慎二君」に慎二が服部の名前を言う時は他のクラスメイトが「ハトケン」と言ってたから自分も「ハトケン」と呼ぶようになった、因みに「ハトケン」の由来は服部健太から取った名前らしい、そんな事があり慎二と服部以外でも1年「F」クラスの親しい物が名前で呼び合うようになった。
「ごめん、ごめん笑ったのは許してくれ、でも本当に結構似合ってるよ?」
本当か?今も笑ってるように見えるが……
「うん、慎二君カッコイイよ!大人の男性って感じで素敵だなぁ」
「由紀、お前だけだそんな事を言ってくれるのは、なあ僕達結婚しないか?良い夫婦になれると思うんだが?」
「いや…あの……ごめん!別に慎二君の事を嫌いってわけじゃ無いんだけどさ……ほら?僕達には「歳の差」っていう壁があるしさ?ね?」
いや、冗談で言ったのに頬を赤くして由紀は間に受けちゃったよ……それに僕達にある壁は決して「歳の差」何かじゃ無いと思うんだけど……
「ほら、お前ら馬鹿な事やってないで誰が先に「聖書」買うか決めるぞ、木戸書店の店内の内容はハトケンが調べてくれたらしい、だよな?」
「勿論、リサーチ済みさ!今の時間帯は人もあまりいないし店員も60代ほどのお爺ちゃんだから、簡単に買えると思うよ!」
「流石「情報屋」!頼りになるね!所で誰が先に買いに行く?ここは今回の首謀者の雄二が良いと思うんだけど?」
そんな事を言って皆が雄二の顔を見た。
「わかった、わかった、俺が先に行って見本を見せれば良いんだろ?その間に次に買いに行く奴決めとけよ?」
そんな事を言った雄二は果敢にも店内に入り「聖書」を探しに行った、待ってるのもアレだったんで次に行く人が誰かジャンケンで決めたら……結果はこうなった。
2番目 「ハトケン」
3番目 「由紀」
最後日 「慎二」
行く順番が決まった為、何買うか話していたら5分ぐらいして雄二が店内から出て来た。
「雄二どうだった?買えた?」
「ああ、楽勝だったぞ、買う物の目星は付けてたから後はそれを見つけて直ぐに買って来たぞ」
「雄二君は何買って来たの?」
「それは後でのお楽しみだろ?そもそもこんな人混みの中で「聖書」なんて見せたく無いわ!みんなが買ったら見せ合う事にしようぜ」
それもそうかと思い、続いてハトケン、由紀と順調に店内に入り「聖書」を買う事に成功した、最後に慎二が店内に入り買いに行こうとした時にそれは起きた、慎二は普段通りただ本を買う人を装い18歳コーナーに進んだ、「聖書」だけ単品だと周りの目が怖かった為本と本の間に挟むという常套句「サンドイッチ」を使ってカモフラージュして、いざレジへと思ったがレジにいる店員を見た途端迂回して本を元の位置に戻して店内を出た。
店の外から慎二を3人は訝しく見ていた、ヤケに早く出て来たと思ったら、何も持たず店内から出て来たからだ。
「慎二何で何も買ってきて無いんだ?お前……直前になって怖気付いたのか?」
「慎二君、何かあったの?」
「うん、まああったっちゃあったね……ハトケン、ちょっと聞きたいんだけどさ店員のシフトって確認した?なんか僕が買おうとしたら女性に変わってたんだけど、それも見たことある人に」
「はっ!まさか僕とした事が……調べるの忘れた」
だと思ったよ、ハトケンの情報もかなりガバガバだな。
「で、慎二が見たことあるって奴は誰がいたんだ?」
雄二の言葉に他の2人も気になるそうで見てきた。
「それが、生徒会の先輩の牧ノ原先輩がレジをしていて……確認した後直ぐに逃げて来たよ、多分見つかってないけどこれは流石に…買うの無理かも……見つかったら何を言われるか」
何で僕の時だけこうも「ついてない」のさ!この頃かなり「徳」貯めたと思ったんだけど、ここに来て「負幸体質」に阻まれるとは……体質が原因かはわからないけど……
「いや慎二君、まだ諦めるのは早いと思うよ?レジは2箇所あるんだ、僕達の誰かが注目を集める、その内に慎二君が「聖書」を牧ノ原先輩とは別のレジで購入するってのはどうかな?」
その内容なら「聖書」を買えるかも知れないけど、別にそこまで欲しくは無いし……
「いや、別に僕は良いんじゃない?僕以外の皆買えたんだし、危険を負ってまでやる事じゃ無いと思う」
そんな事を言ったらいきなり雄二が慎二のネクタイを引っ張ってきた。
「テメェ慎二、まさか怖気付いてんのか?そんな根性無しだとは思わなかったぞ?お前なんてスマホで「聖書」でも漁ってろ!この玉無し野郎が!」
えぇー!?「聖書」買わないだけでここまで言われるの?流石の僕でもその言葉はカチンと来るよ。
「分かったよ、そんなに言うならやってやるさ!僕が玉無し野郎じゃ無い事を証明してやる!」
ニヤリとした雄二はそれでこそ男だと言わんばかりに親指を上に向けてこちらに見せて来た。
いざ店内へと思っていたら、ハトケンが声を張り上げて伝えて来た。
「ーー!まずいよ皆!また新たな刺客が来たぞ!」
次は誰が来たのさ!?と思い木戸書店の扉を見たら悠木さんと吉野さんが店内に入っていくのが見えた。
「いや、これは流石に無理でしょ!?やっぱり辞めようよ!玉無し野郎で良いからさ!」
そんな慎二の声を誰も聞いてくれなかった。
「いや、決行する!慎二お前は俺達を「信じろ」!大丈夫だお前が見つからない様完全にフォローする、任せとけ俺にはある「秘策」がある」
真剣な顔で言う雄二に慎二は黙って従った、だって友達に「信じろ」とまで言われたのだ、これを信じない奴の何が友達なのかと。
「まずは俺達が店内に入り悠木と吉野に声をかけて慎二に視線が行かない様誘導する、それが成功すれば先輩もこちらに必ず釣られて見てくる筈だ、良い頃合いに右手でハンドサインをするから一気に「聖書」を買って来い!良いか?何があってもこちらを見ずに止まらず走れよ?」
「わ、わかったよ、信じる事にしたからね任せたよ?」
「ああ、任せろ!必ず成功させて皆で「聖書」を見ようぜ!」
雄二の掛け声と共に他の3人も『おおー!!』と声を揃えて答えた。
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