第27話 高校とバカと神童と


「ふぃーー、長時間動かない時はトイレ行っとかないとね、後から行きたくなったら困るからね」


 トイレも済み戻ろうとした時、体育館に行くための道の隅にあるベンチにある生徒はいた。


 周りが怖がって動けないのかチラチラ見ているので気になって僕も見てしまった。


「チッ、隠れて寝れねぇじゃねぇか……なんだぁー?俺の方をチラチラ見やがってよ、特にそこのアホズラ!」


 僕はそれが誰のことか分からなくて周りを見てみた、周りにいる生徒全員が僕の方を見ていた、あっ!僕の後ろだなと思い向いたが誰もいなかった。


「………舐めてんのか?首を後ろに回しやがって、アホズラなんてお前しかいないだろ、で?さっきから何見てやがった?」

「アホズラは僕って決まってるんだね……トイレから出たらベンチに気持ち良さそうに寝てるけど体育館に行かなくて良いのかなと思ってね、それに君は何でそんなに喧嘩腰なの?」


 アホヅラとは、当然の事に慎二の事だったらしい。


「アァ?……お前、見たことない顔だと思ったら別口で入学して来た奴か、だから俺のことを知らないのか、それにあんなつまらん話なんて聞いても意味ないからな」

「ん?じゃあさ何でそんなに皆に怖がられてるの?」

「ここでは言い難いが、顔だろうなそしてこの体格だな、何故か今までで何回か自分の強面のせいで喧嘩になった事もあるし何もしてねぇのに怖がれる、だから逆に人が近づかない様に振る舞ってんだよ」


(………偏見…だよね……どこでもあるもんなんだね、、)


 慎二はそう思っていた。


「偏見か、君と別に喋ってても怖くはないけどさ、やっぱりそういうのあるんだね、じゃあさ、僕と友達にならない?」

「は?お前何言ってるんだ?別に友達なんていらねぇよ、それにお前もどうせ俺の下からいなくなるだけだ」


 「そんな事無いよ」と言おうとしたら柄の悪い男達が近づいて来た。


 それによく周りを見てみたら慎二達以外に誰もいなくなっていた。


「木村〜前は良くもやってくれたな?今回はこないだみたいにいかねぇぜ?人数もこんなに集めて来たからな!」


 そんな事を言った男達は12人ほどいた。


 そんな男達に木村と呼ばれた男子生徒は舌打ちをしていた。


「チッ、人数揃えれば勝てるとも思ったのかよ、でもこの人数は流石にまずいな……おいそこのアホズラ!お前がいても邪魔だから早くどっか行け!」

「いや、困ってる人がいるのに一人で逃げるわけには行かないよ!それよりも彼らは何で君を狙ってるの?」


 逃げろと言われても完全に逃げ遅れた感があるけど、何でこの生徒が狙われてるか気にならな。


「勝手にしろお前が何かやられても助けないからな……あいつらは中学の時に俺の友人だったやつを虐めて不登校にした元クラスメートだ、俺はそんな奴らを半年前にボコボコにしたが今回は報復にでも来たんだろ、ケッ……一人で勝てないからって人数呼びやがって!」

「そんな事が、その友人は今大丈夫なの?」

「………半年前に自殺しちまったんだよ、そいつは良いやつ過ぎたんだよ俺と友達になったせいであいつらに目を付けられた、だから全部俺の責任だ……何泣いてんだよ?」


 そんな話されたら泣くよ、彼も色々あったんだね。


「ごめん、そんな事があったとは、それにそんなの君は何も関係ないじゃ無いか、悪い奴らは目の前にいる奴らだ、そんな人間許せないよ」

「ならどうする?俺と奴らと戦うか?そんな事したらまたお前も狙われるかもしれないぞ?」

「はは、人を避けようとしてる割には君、僕の事心配してるじゃん、大丈夫それは考えてるよ!」


 そうだ、この生徒は悪いやつじゃ無い、自分の容姿のせいで人とあまり接した事が無いせいか人との関わり方が分からないだけだ。


「わかった、じゃあ任せるからな!」

「任された!信じてくれてありがとう!」


 2人が話していると、律儀に聞いていた不良達は話しかけてきた。


「そっちは作戦会議終わったのか?律儀に待ってやったんだ、前の借り変えしてやるよ!」


 相手側がこちらに走って来た。


「そんなに人数連れてきて律儀もクソもねぇだろ!」


 木村のその言葉と共に、戦いは始まった。


(あのアホズラ本当に大丈夫か?任せるしか無いが人質にでも取られたら厄介だな)


 木村はそんな事を考えていたが、目の前の敵に集中した。


「木村〜やっとお前をやれるよ、あの時はよくもやってくれたな、お前のお仲間さんもいるみたいだがどうなるかな、ククッ、最初に逃せば良かったのに」

「ああ?関係ねぇよ、そもそもアイツは俺の友達でも無いからな、それよりも早くやろうぜ?こんなに人数揃えたのに怖えのか?」

「舐めやがって!……まあ良い、それよりもあっちはもう始まってるみたいだぜ?どうなってるか気になるよなぁ?」

「はっ!別に気になんねぇよ」


 そう思いつつも木村はアホズラの方に目を向けたら信じられない状況になってた。


「何よそ見してやがる!そんなに気になるか?」

「それもあったがあっち見てみろ」


 罠だと思ったが、男も木村が見てる先に目をやったらおかしい事になっていた。


「何だぁー、やっぱり学生じゃこんなもんか、やっぱりあの時の大人達が強かったんだよね」


 雄二達が見てる先にはまだ10分も経っていないのに6人の男達を倒して優雅にこっちに歩いてくる慎二がいた。


「木村君そっちはどうー?」


 そんな事を呑気に聞いてくる余裕さえ慎二はあるのだ。


「アホズラ、お前そんなに喧嘩強いのか?」

「ん?強いかは分からないけど、僕がさっき戦った奴らは弱かったよ?」


 決して慎二が戦った不良達は弱くは無い、ただ慎二は自分の持つ「真実の目」で「見る」ものを相手の行動で「見たら」相手が次何をするか、どう動くか「見えた」のだ、ちょっとした「未来予知」っぽいが頭痛も何もしない為「未来」を「見た」と言う判定にはなっていないということだ、その後は簡単だった。


「だってよ、でどうする?そっちの仲間は半分やられてるけど?」

「クソッタレ!だがこうなったら「やらせないよ?さっきからもう「見えてる」は?ぐはっ!?」 

「先手必勝ってね!」


 何か相手が隠していたらやだなと思い自分が戦う前に「スイッチオン」と言い、相手の考えてる事を「見て」いたのだ。


 わかった事が相手がピンチになったら懐に隠していたナイフで刺そうと考えていたのだ。


「何が起こったんだ?」

「ん?彼が変な動きしようとしたから気絶してもらったよ」

「気絶って、そんな芸当普通の人間が出来るのかよ」


 人間を気絶させる事なんてその道のプロぐらいしか出来ないと思う、でも慎二は相手のどの箇所を狙えば気絶するか「見えてる」のだ、だから出来て当たり前だ。


 リーダー格がやられた事に他の連中は話し合っていた。


「どうする!?リーダーがやられちまった、木村だけでもヤベェのにもう1人いる奴はもっとヤベェぞ、こうなったら逃げるか」

「君達逃げようと思ってるけどさ、逃げられないよ?もう詰んでるんだ。無駄な抵抗はよしなよ」

「アホズラどういう事だ?」

「簡単な事だよ、刃物を持って襲われたって警察に連絡しただけ、後数分でくると思うよ」


 慎二の話を聞いた不良達はもう無理だとその場でへたり込んでしまった。


「なあ、お前は一体何者だ?」


 そんな質問をされたらこう答えるしかない。


「「人助」が趣味のただの高校生さ」


 数分後パトカーがサイレンを鳴らして本当にこちらに来た。


「慎二君、またお手柄だったね!また表彰かな?」


 その警察官は以前知り合いになった一人で、慎二にふざけながら言ってきた。


「笑いながら変なこと言わないで下さいよ、もう僕はあれは懲り懲りです」

「ははっ、そうか、そうそう怪我とかはなかったかい?」

「僕は大丈夫です、木村君はどう?」

「俺も無いというか、今回何も出来なかったわ」

「そうか、なら良かった、私達は彼らを所まで連れてくね、後は任せてくれ!」


 そう言うと急ぎ足で警察官達は手錠をされた不良達をパトカーに乗せて連れてってしまった。


「よし、何も無く終わって良かったね!」

「かなり色々あったと思うけど、今回はありがとう、何から何まで助かった」

「ありゃ?あんなに最初ツンツンしてたのにいきなり優しくなったね、でもどういたしまして!木村君もそう言う喋り方にしたら皆と普通に生活出来ると思うのに」


 うんうん、日頃こんな喋り方だったら友達なんて沢山出来ると思うよ、しかもよく見ると木村君イケメンだし。


「茶化すな、良いよその…あれだ……友達はお前みたいなやつが1人いるって知れたから」

「おお!僕の事を友達と認めてくれるのか!これは嬉しい!じゃあじゃあさ!名字呼びもアレだから名前呼びにしない?」

「その前に俺ら自分達の名前知らないだろ……まあ良い、俺の名前は木村雄二、よろしくな」

「そうだった、僕の名前は前田慎二、よろしくね雄二!」


 そう良い2人して握手をした。


 この先親友と呼べる間柄になる2人の出会いだった。

 ただ2人とも重要な事を忘れていた。





「あっ、体育館で理事長の話しあるのと生徒会長の話あるの忘れてたよ」

「そうだったな、完全に出る気無かったからそんな物初めから忘れてたわ、今から行っても逆に目立つし教室戻ろうぜ」

「ううーん……怒られる、なるようになるか、雄二はクラスどこ?」

「俺は「F」クラスだ、そう言う慎二こそ何処だよ、アホズラしてるから俺と一緒の「F」か?」

「また、アホズラって、まあ「F」だけど……ああ君が今日の朝いなかった生徒か!」


 やっと「F」クラスの生徒全員と会えたよ、この後が怒られるかもしれないから怖いけど、剛田先生は話を聞いてくれるかな? 


 そう考えながら教室に戻るのだった。

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