第15話 嘘か本当か 過去とこれから13
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そこから慎二の動きは早かった。いきなりの事で硬直している「中井孝雄」達に向かって持っている木刀と勢いを任せた一撃で一人、また一人と薙ぎ払っていく。
慎二は別に弱くはない。普通の学生にしては中々強い方だ。その理由が今までの生活にあった……何も出来なかった昔を糧に祖父に自分や大切な人を守れるようにと戦い方を教わっていたのだ。それは過去に戻ってきてからも続けていた。
「どりゃっ!はっ!危ね!?痛っ!」
何人か倒し漸く結衣の場所まで行けた。が、いくら強いと言っても数の暴力には流石の慎二も勝てない。
「お兄さん!大丈夫ですか!?」
「ああ、なんとかね!でも厄介だね。この人数は」
無事結衣の場所に行けた慎二だが、何箇所か攻撃を受けていた。
「でも、大丈夫!僕が何としても君を守るからさ!信じてよ!意外と僕も強いんだぜ?」
そんな事をいう慎二だが、まだ敵は10数人はいる。不利な状況には違いはない。そんな事を察した結衣は、思っている事を言葉にしてしまった。
「お兄さん、助けに来てくれたのはとても嬉しかった!でも…でも……この人数は絶対勝てないよ!本当はわかってるんでしょ?一人じゃ無理だって」
結衣が言葉にすると「中井孝雄」もその言葉に同意する様に慎二には話しかけた。
「そうそう、その子の言う通りさ!カッコつけたい年頃かもしれないけどさぁ?君、周りの状況見てよ?君が倒した奴らもう起き上がってるよ?これからどう逆転するつもり?どう見ても、無理でしょ?」
そうなのだ。いくら慎二が強くても結衣の元に来る為に敵を薙ぎ払っただけだ。周りを見ても誰一人倒れている人などいなかった。
その状況を見た結衣も慎二の事を思ってか「逃げて」と言ってくる。
「お兄さん!今からでも私を置いて逃げて!私が私が犠牲になれば……」
「どっちも逃す訳ないじゃん?そこの正義感男は結衣ちゃん、君の前でボコボコにしてあげるよ!その後は結衣ちゃんと楽しんでいる所を間近で見せてあげるよ!まあ、俺達のリンチに耐えられたらだけどな!」
そう言い、男達は馬鹿笑いをしだした。
「はははっ!ははは!!」
その時、慎二も一緒に笑っていた。
「………何を笑っているんだ?どうしようも無い状況に気でも狂ったか?」
「お兄さん?」
そんな慎二を薄気味悪い奴でも見るように「中井孝雄」は見ていた。結衣もそうだ。いきなり笑い出したから不思議に思った。
「いや、悪いこの状況じゃ笑いたくもなるさ。だってあんたらもう終わりだからな?僕は勝てなかった。でもな?僕は勝つ必要がないんだよ?あんたらはこの意味がわかるか?本当は勝ってカッコイイ姿を見せたかったけどさ〜これが僕の……「役目」なんだからさ」
その言葉を聞いた瞬間、男達は漸くおかしい事に気付いた。自分達以外に誰も居ないはずなのに周りから足音が聞こえるのだ。
「ま、まさかお前ぇー!ただの「囮役」だって言うのか!?」
その言葉を聞いて慎二は「ニンマリ」と笑った。
「合ったりー!良く分りましたー……偉い偉い!……でもな?もう終わりだよあんたら………僕はお前達の行動、考え、全てを否定する!」
その言葉を聞き逃げようとした男達だったが、それはもう叶えられないものだった。
だってもう近くに、慎二の応援部隊が来ていたのだから。
『おいおい、慎二?面白ぇ事一人で始めてるじゃねえの?俺も混ぜろよ?』
『……警察官の皆さん。今から起きる事は何も無かった……でイイんですよね?』
『当たり前じゃないですか!人間同士の争いだったら……流石にダメですが、そちらにいる方々は「人間」では無いですからね、思う存分やりましょう!』
そんな警察官の言葉に集まった人々は笑っていた。
『ぶはっ!これは傑作だ!警察がそんな事言って良いのかよ!まぁ、お許しが出たんだ。テメェらそんな小セェ少女泣かせた上に慎二を痛めつけてくれたんだ、どうなるかわかってるよな?』
肉屋の店主が持っていたフライパンを「中井孝雄」達に向けた。
そこからは圧巻の一言だった。20人はいた男達は慎二を助けに来てくれた商店街の皆や警察官総勢50人にボコボコにされていた。
その光景は相手側としたら悪夢だった。
ある物は鍛えあげた肉屋の店主の腕で殴られ、持っていたフライパンです殴られ。魚屋の店主のローキックを受け。日頃鬱憤が溜まっていた警察官達に袋叩きにあい。
中には「YES、ロリータNOタッチだろー!!」と暴れているものもいた。
その光景を間近で見ていた慎二は笑うしか無かった。
「はは…こりゃ凄いや……僕これ、いる?」
そう思う他無かった。
中でも凄かったのが女性陣だ。何人かで一人を囲みボコボコにした後、股間を必要に持ってきたお玉やフライパン、布団たたき等で殴ってるのである。その光景を慎二が見た時ある箇所がシュンッと萎んだのは内緒だ。
自分の息子に「落ち着け、あれは自分はやられないから」と心の中で伝えていると、さっきまで放心状態だった結衣が話しかけてきた
「お、お兄さん……この方達は誰なんですか?」
「ん?あぁ。君を助けに来てくれた僕の大事な仲間さ!誰も一人で来たなんて言って無いでしょ?」
「た、確かに!……でも、この方々全員が私を助けに来てくれたんですか?私の為なんかに……」
「君の為に来てくれたんだよ。勿論僕もそうだけど、あまりカッコイイ所見せれなかったなー。あ、後私の為なんかなんて言っちゃダメだよ?そう言う時はこう言うんだよ……ありがとうとね!」
慎二のその言葉を聞いた瞬間、結衣は泣いてしまった。
結衣は嬉しかったのだ。今までに助けてくれた人は居た、いたが誰もが自分達の元を去っていき、誰も結局助けてくれなかった。
そんな姿を見て慎二は自分が泣かせてしまったと思い、オロオロとしてしまった。この男は今まであまり女性の対応をしてないせいか全く女性の気持ちが分からなかった。
「ご、ごめんね!別に君に怒った訳じゃ無いんだ!あの、その、そう!君を助けに来てくれる人はこんなにもいるんだって知ってもらいたかったんだよ!」
「………グスッ、知っています。これは嬉しくて泣いてしまったんですよ。その、助けてくれてありがとうございました!」
今まで結衣も言えなかった言葉はスッと口から出た。
「ありがとう」と。
そんな言葉を聞いた慎二は。
「どういたしまして!」
と、言ったのだった。
そんな様子を「中井孝雄」達をボコボコにしていた商店街の人達はニヤニヤと見ていた。
「おいおい、俺達が頑張っている所でイチャつきやがって……でも2人共無事で良かったわ!」
「ふふふ、慎二君。3次元のロリも良いけど2次元のロリも良いぞ?」
大人達は「中井孝雄」達を警察官に後は任せて自分達の所に来ていた。そんな大人達は自分達の事を見て、ニマニマと笑って言ってきた。
「いや、イチャイチャしてないからね!?それに僕ロリコンじゃ無いし!?」
そんな事を言っても聞いてくれない大人達、結衣にいたっては、何故かロリコンじゃ無いと言った後残念がっていた。その事が何故なのか分からなかった。
そんな結衣を女性達は耳に手を当て何かを話していた。慎二には何も聞こえなかったが、「女性にも色々あるんだな」と思うぐらいだった。
何か、結衣ちゃんがこっちを見ていたような気もしたが、気のせいだろう。
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