第16話 1章 エピローグ
◆
そんなこんながあった後、結衣に結菜の手術が成功し、後何日か入院したら無事普通の生活が出来ると伝えられた。
その後直ぐに慎二達は結衣を連れて急いで病院に行き結菜がいる部屋に連れてった。
慎二達は病室の外で待ち、結衣だけが結菜の元に行った。
ゆっくりと病室を開けた先には今までは見れなかった母、結菜の笑顔が見れた。まだ顔色は少し悪いが、元気そうなその表情だけで母の病気は治ったとわかった。
「お母さん、お母…さん……もう良くなったの?どこにもいかない?」
「うん、もうお母さん元気になったの。どこもいかないよ?……ずっとこれから一緒にいられるの」
母、結菜に言われた結衣は徐々に、徐々にベットに腰掛けている結菜の元に歩いて行った。
「本当?お家だけじゃ無くて、お外で遊んだり、デパートに行ったり、出来る?」
「当たり前じゃない!今までごめんね……病気になったからと言って結衣ちゃんに全然構ってあげられなかった!私はお母さん……失格よ」
結菜が「お母さん失格」と言った瞬間、ついに耐えられなかったのか、結衣は泣きながら結菜の胸に飛び込んだ。
「失格じゃ無い!だって、ちゃんと病気治すって約束守ってくれたもん!だから…だから……もうどこにもいかないでね?」
「うん、うん……もうどこにもいかない!これからは一緒だよ結衣ちゃん!!幸せになろうね?」
そう言うと2人共泣き出した。
今までの苦しみや悲しさや辛さを洗い流すように、その顔は泣いてるのにどちらとも笑顔だった。
泣く理由は悲しい時だけでは無いのだから、嬉しい時だって涙は流れるのだから。
その涙は永遠に、永遠に流れ続いていたように思えた。
『ぐぉーーー!!よがったなぁー2人共!』
『母と娘の感動の再会……泣けるなぁ』
『笹原さん達助かって……よがったわ!』
病室の外は涙を流す人々で溢れていた。その中には当然のように慎二もいて誰よりも泣いていた。
「本当に…本当に、良かった……」
(本当に良かった。「過去」は変えられない。でも「未来」なら頑張り次第で変えられるのだから)
◆
慎二は泣いている皆に病室から離れる断りを入れると屋上に来ていた。初めに見たように透き通る青空だった。今の笹原親子の心の中の様に。
「………「未来」を変えられると言っても限度があるもんね。この力は別に…万能では無いのだから……と今回の件で思い知ったよ」
そう、この世に正解なんて無いように万能な力なんて無いのだ。もしそんな物を持っているとしたら「神」という存在だろう。
今回の出来事だってそうだ。偶々上手く行っただけであって、もしかしたら最悪なケースになっていた場合だってあったのだ。
それにこの「真実の目」を手に入れて余計に嘘や本当が怖くなった。だって結衣に優しかった叔父は心の中では自分の為だけに人を陥れようと「嘘」を吐き、逆に結菜が結衣についた「嘘」は結衣を悲しませない為の「嘘」だったのだ。
「まあ、今回の出来事で色々あるんだって知れたのは1番の収穫かな?僕の体質の「負幸体質」も結構「徳」も貯めたと思うから普通の人ぐらいにはなってると、思うし……多分」
これで漸く慎二も普通の人と同じラインに来た。でもまだこの体質が治ったわけでは無いのだ。慎二にとってはここがスタートラインですらある。
普通の人より何倍も努力してこの位置だ。
「学校も後少しで始まるけど馴染めるかが微妙だー……頼むから面倒臭い事は起きないでくれよ?この頃口癖も治ってきたのに……はぁ………」
これから3年後までに自分の生死が決められる、高校生活も後1日で始まるし、まだまだやらなくてはいけないことが山積みだ。そんな慎二には【スタート】より【リスタート】という言葉の方が合うだろう。だからここで止まるわけにはいけない。新しい人生は始まったばかりなのだから。
嘘か本当かその目に映るものは一体何なのか。
「未来」を見た回数:2回 残り28回
「過去」を見た回数:0回 残り30回
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます