第12話 嘘か本当か 過去とこれから⑩




 その人は自分が入院している病院まで来てくれた。この人こそ1年前に祖父の病気を診てくれた津田正人さんだ。


「久しぶりだね、慎二君。また大きくなったかい?今日は連絡を貰ってフリーだったから直ぐに来させて頂いたよ」

「来て下さりありがとうございます!津田さん。今回は病院の医師としてある人の病気を治してほしいのです」

「………僕にかい?治せるか治せないかは見てみないとわからないけど、それはどんな病気だい?」

「癌の腫瘍の摘出です」


 その言葉を聞いた瞬間、津田さんは目を開き顔を青くした。それはそうだ、以前「祖父義慈の癌を治せなかった」のだから。


「………僕には無理だ。君には分かるだろう?話を聞くだけでもこの有り様だ、手が震えて動こうとしない。君のお爺様の命を奪ったのは、僕なんだよ?」

「でも、でも僕は津田さんが祖父の命を奪ったなんて思っていない。成功する確率だって30%しかないと言っていた。そんな状況で治してくれようとしてくれたのがあなただ。だからお願いしたいのです!それに必ず成功する、今度の確率は100%です!」


 その慎二の言葉に津田は驚いた顔をしていた。それも無理はないだろう、病気が治る確率が100%などあり得ないのだから。


「ーーー?!……なんでそんな事がわかるんだい?腫瘍を探すのもどこにあるかわからない状態、もし違う所を摘出してしまったら終わりだ……それでも君は必ず成功すると言うのかい?」

「はい、成功します!子供の妄言だと思うかもしれないです。でも出来る。僕には「癌の腫瘍がどこにありどこを摘出すれば良いか」わかるから」

「………信じて見て、良いんだね?他の人だったら何を出鱈目な事をなんて思うかもしれない。でも君が……義慈さんのお孫さんが言うんだ。賭けてみるよ」

「ありがとうございます……僕は津田さん、あなたの腕を信じてます」


 その後は誰を見たら良いか、何処の腫瘍を摘出すれば良いのか話し合った。


「………君は本当に僕達と一緒の人間なのか?こんな事がわかるなんて」

「人間ですよ?それにもし僕が「過去も未来」も見えるって言ったら信じますか?」

「…………」


 慎二にそう聞かれた津田は暫し無言になってしまった。


 でもそんな反応は最初から分かっていたのか。


「冗談ですよ。でもこのやり方で助けられる。後は頼みます!」

「………過去と未来が見れるか……そんな力があったら凄いだろうね。でも君なら持っていても不思議じゃないと思ってしまうんだ。君は人に惹かれるものを持っている、この子のお願いなら信じてみようと思う気持ちにさせてくれる」


 そう言われ、津田さんとは別れた。


「人に惹かれるか。そんな事言われた事無かったな。でも嬉しいな。そんな人間になれたら、良いな」


 そう思いつつ、最後のピースを持っている人の所に足を進めた。


 そこは慎二が過去に戻ってから初めに訪れた公園だった。ここに最後のピースを持っている人間がいるのだ。


 少し公園を見て回っていたらその人は直ぐ見つかった。以前会った時のようにベンチに腰掛けていた。ただ、以前と違うのは今はやる気に満ち溢れている様に見えた。


 その男性に慎二は、声をかけた。


「お久しぶりです鈴木さん。あれからご家族とはどうですか?それに中々この公園に来れなくてごめんなさい!連絡先もあの時は交換して無かったので出来なくて、でもなんか今日はこの公園にいる様な感じがして来てみたら会えましたね」

「やあ、前田君。そうだね、あれから5日ほど経ったかな?家族とは君の言う通り仲直りが出来たよ!本当にありがとう!それにねこの公園には君を探すために足を運んでいたけど、今では日課になって少し健康になった様な気もするよ。後なんだけど以前助けて貰った時の恩返しをしたいんだけど、何かあるかな?」


 来た!この言葉が聞きたかった。


「そうですか、ご家族と仲が戻り良かったです!……それに恩返しですか、無くても僕は良いですが、一応確認ですがその恩返しは何でも良いんですか?」

「ああ、何でも聞いてくれ!これでも僕はいくつかの会社を持っている社長でね。物でもお金でも何でも言ってくれ!君に助けて頂いた事は計り知れない。いくらお金があったり地位を持っていても心や感情は買えないからね。ただし……娘はまだやらないよ?」


 そう「未来」通りだと鈴木さんはなんと何個も会社を持っているやり手の社長であり、妻と娘を溺愛してるのだ。


「はは、娘さんを下さい!なんて言いませんよ。僕には助けたい人達がいましてその方達はかなりの借金を持っているのです。なのでお金を借りれたらと思い」


 と、鈴木さんに今までの詳細を話した。


「そんな事があったのか、また君は僕みたいな人を人助をしているんだね。それはとても良い事だ。よし!僕からの最大限のサポートをしようじゃないか!お金は全額立て替えとかでは無く僕から出そう。それに良い弁護士を紹介するよ、もしかしたらその借金は不正とかされていて高額になっている可能性もあるからね」


 とんでも無い流れになってしまった。「未来を見た時」はお金を貸してくれるだけだったが、全額出してくれる事に加えて弁護士も紹介してくれると言うのだ。


「流石にそこまでしてもらう訳には行かないですよ!」

「いや、僕がしたいんだ。そんな悪い人間は徹底的に処断しなくてはいけない。それにだ、君が助けたいと言った笹原さん達と自分の家族を重ねてしまったんだ。もし、あのまま不仲のままそんな奴らに良い様にされたらと思うと」


 その事を考えてしまったのか鈴木は唇を噛んでいた。


 そうか、鈴木さんも思う所があったのか、善意は受け取っても罰当たらないよね?


 そう思い鈴木さんからの申し出に了承を出した。


「わかりました。色々ご迷惑をお掛けするかもしれないですが、宜しくお願いします!」

「任せてくれ!最高のサポートをしよう」


 そう良い、後日笹原家を助ける時合流する事になった。別れる際にいつでも連絡が出来る様に連絡先を交換した。


 別れた直後「中井孝雄」の情報を調べていた方々からも連絡があった。その内容は酷いものばかりだで、犯罪は勿論、麻薬など裏の組織と繋がっていることもわかった。だがこれで笹原家を救う作戦は決まった。

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