第11話 嘘か本当か 過去とこれから⑨


 

 順調に物事は今の所進んでいる、でも後2つピースが足りない。「未来」を見ているから次に何をやれば良いかわかるが時間が足りない。


 集まって貰った皆には笹原家を崩壊させた犯人「中井孝雄」のここ10年の情報を調べて貰っている。


「焦っちゃ駄目だ。まだ解決していないのは僕が直接話に行かなくちゃね、そもそも後2つのピースが揃うには僕が動かないといけないからね」


 足りないピースは「笹原家の借金の返済」をどうするか、「笹原結菜の病を治す人」だ。笹原結衣はまだ時間に少し余裕がある、だが早くても今日か明日に決着をつけないと最悪な結末を迎えてしまう。


「本当凄いよね、運命ってあるんだって感じるよ、今まで会ってきた人で誰一人欠けていたら今回の件は解決しない事になっているんだからさ」


 そう思い、ある人に連絡した後、過去に戻った時1番初めに行った公園に行こうとしたその時……それは起きた。


「慎二君!ここにいたか!君に言われた通り病院内の知り合いと一緒に笹原さんの動向を見ていたら、本当に今日「癌の治療」が行われる事になってたよ!」

「ーーーっ!本当ですか!連絡ありがとうございます!芳樹さん、腰が悪いのに無理をさせてしまい申し訳ありません!」

「全然平気さ!君の助けになると言ったでしょ?それに治療をする時刻は今から3時間後だと医者達が言ってたよ。笹原さんに会いに行くなら今が良いと思う」

「何から何までありがとうございます!ちょっと行ってきます!」


 そう良い、慎二は隣の部屋にいるはずの笹原結菜に会いに行った。芳樹には事前に助けになると言われていた為、今から自分がやる事を話したらただ信じてくれた。


 「君は嘘を」つく様な子じゃないと。


 慎二は扉の前に来た。


 結衣ちゃんとは会ったことあるけど結菜さんとは顔すら見た事ないな……けど引き返せないよね。


 ドアをゆっくり開けた先、まず目に入ってきたのは涙を流しベッドに顔を埋める結衣の姿、そんな結衣を励ます様に背中をさすっている優しそうな女性がいた。


 あの人が結菜さんか、病気に侵されていたと思えないほどに綺麗だな……いやいやこんな事考えている場合じゃない。伝える事だけ伝えないと。


 慎二が一人そんな事を思っていると、ドアの近くにいる慎二に気付いたのか結菜が話しかけてきた。


「あら?あなたは、どなたかしら?」

「ご、ごめんなさい!いきなりノックもせず部屋に入ってきてしまい。僕は前田慎二と言います。笹原さんに伝えたい事があり、今日は来ました」

「伝えたい事?私に?私とあなたは初対面だと思うのだけど……何処かで会ったことあるかしら?」

「………初対面だと思います。信じて、信用してなんて言いません。ただ伝えたい事があり来ました」


 そう良い、笹原結菜にこれから起こる事を伝えようとした時、さっきまで泣いていてこっちを見ていなかった笹原結衣がこっちを睨んで見てきた。


「なんで来たの!?もうほっといてって言ったじゃん!それに……お母さんと私の時間を奪わないでよ!私には私には、もうお母さんしかいないの。後は誰も、いないの……」

「結衣ちゃん……ごめんなさいね?前田さんと言ったかしら?何か言いたいことがあるみたいだけど……今日はちょっと、ね?また後日にしてもらえると、嬉しいのだけど……」


 こんな反応をされる事ぐらいわかっている。自分は部外者だ。でも後日じゃ駄目なんだ、手遅れになってしまう。


 だから、慎二はなりふり構わず……


「そこをなんとか……なんとかお願いします!こんな事を言うのもおかしいと思いますが、あなた達を僕は助けたい!何も悪い事をしていないのに不幸になる人間なんていてはいけないんだ!だから、だから!どうか僕の話を聞いてください!」


 慎二はその言葉を発した直後、その場で土下座をした。自分の頭を下げるぐらいで自分の話を聞いてくれるなら、何度だって下げようと。


 驚いていた2人は少しだけでも聞いてあげたほうが良いと思い初めてた。


「わかりました。あなたのお話を聞かせて頂きます。結衣ちゃんも良いよね?」

「……うん、一度お話しした事あるけど、悪い人じゃないって、知ってるし」

「ありがとうございます!……まず初めに言います。今から起きることは「嘘なんかじゃない本当」の事なんです。あなた達にこの後不幸な事が起きるかもしれない、でも必ず助かる」


 そう良い、この後起きる事を2人に伝えた。ありえない話だと思う。だけど慎二の真剣な目を見て信じてみようと思った。


「わかりました、でももし私が危なくなったら娘だけでも助けて下さい。私はどうなったって構いませんので、この子さえ助かれば」

「お母さん!そんなのやだよ!!ずっと一緒に居てくれるって言ったじゃん!」

「もしもの話よ。前田さんのお話を聞くと私達は助かるみたいなの。それに賭けたいと思ったの」


 そんな母と娘の会話を聞いていた慎二だったが、再度頭を下げた。


「信じて頂いてありがとうございます!僕は嘘をつかない、あなた達を守ってみせる!」


 伝えたい事を伝え慎二はある人の元に向かった。

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