第9話 嘘か本当か 過去とこれから⑦


「あの子が……笹原結衣ちゃんなのかな?少女に話しかけるとか不審者だと思わらたらヤダなぁ、緊張するけど名前だけでも聞いてみるか」


 そう思い近くによると声をかけてみた。


「こんにちは。今、大丈夫かな?」

「………え?わたしですか?」

「ああ君だよ。僕の名前は前田慎二、屋上の景色がとても綺麗って知り合いが言うから見に来たら君が1人でいるのが気になっちゃってね、声をかけたんだ」

「そうなんですか……でも、その気持ちわかります!ここの景色綺麗ですよね!」


 これはいい感じかな?最初は警戒されてたけど景色の話をしたら少し警戒を解いてくれたみたいだ。


「そうなんだよ、でね、君の両親とか近くにいないの?迷子になっているとかだったら一緒に探すけど」

「迷子ではないですよ。ただ……お母さんが………」

「何か言えない理由があるの?別に無理して言わなくて良いんだよ?」


 慎二にそう優しく言われたからか、警戒心を少し解いてくれた様で、自分の話を少し話してくれた。


「いえ、お兄さん悪い人じゃなさそうなので言います。お母さんはここの病院に入院?していて2日前から会えてないの、病院の先生とかは直ぐに会えるって言ってたけど全然会えなくて……」


 これは、ビンゴかな?2日前に隣の部屋で何かあったって言ってたもんな。


「そうだったのか。話してくれてありがとう!だけどね簡単に人は信用しちゃいけないよ?僕が悪い人間だったら取り返しがつかない事になるかもしれないからね?」

「わかりました。でもそんな事を教えてくれるお兄さんはやっぱり悪い人じゃ無さそうです!」


 信用してくれるのはありがたいが……見てるとなんか危なっかしいな、名前はまだ教えてくれないから少し探ってみようかな?


「そうだ、僕は探してる人がいてさ。笹原結菜って人知ってる?知り合いにその人の娘さんを気にかけてあげて欲しいと言われてね」

「ーー!笹原結菜は私のお母さんです。私は娘の結衣です」


 やっぱりね、なんとなくは分かってたけど間違ってたら嫌だからね。「真実の目」で確認すれば良いと思うかもしれないがあれに頼りっぱなしもなんかね……今更な感じはするけど。


「君が結衣ちゃんか。さっきも言ったけど僕は前田慎二、何か困っている事とか無い?お母さんを連れてきてとかはちょっと無理だけど……」

「困っている事‥‥‥は特に無いです。ごめんなさい。あの……先に言えば良かったのですが、私に関わらない方が、いいですよ?」

「ん?なんでかな?」


 結衣の言葉の意味が分からなくて慎二は聞き返してしまった。


「その、私に声をかけて良くしてくれる方は今までも沢山いたのです。でもその人達に全員何かしらの不幸が起こるのです。そんな私をこう言う方もいます……「不幸体質」と」

「ーー!?それは…」


「不幸体質」だと?それに不幸が起こる?おいおいおい、冗談だろ?僕以外に似たような体質の人間がいるってのか?……いや、まだそうだと決まった訳じゃない。僕には「真実の目」があるじゃ無いか。


 そう思うと、早速力を使う事にした。


「スイッチオン」


 この子の今の現状を「見る」為、小声で答えた。「スイッチオン」と…いや厨二病とか今は言うの辞めてくれよ?「真実の目」の能力は常時オフにしとかないとその人の顔を見て何かふと頭の中で考えただけで浮かんで来るんだ。


 嫌だろ?「見たく」無いのに「見てしまう」のなんて、それに相手からしたらプライベートを勝手に見られてるんだから「真実の目」を使う際は必ず「スイッチオン」と言うようになったんだ。自分で声を出せばわかるだろ?「オフ」にする時は考えるだけで良いけど。


 慎二が笹原結衣の今の現状を「見る」為「スイッチオン」と言った瞬間、色々な情報が出て来た。ただ、それは良いものでは無かった。


「何だよ、これは………」


 つい声に出してしまった。解決の仕方も「見てみた」がこちらも最悪の一言だった。


「どうかしましたか?」

「いや…何でも……無いん、だ」

「そうですか?でもさっき言ったように私と関わると皆不幸になってしまうの。だからもうほっといて下さい。あなたみたいな優しい方がまた目の前で不幸になるのなんて見たく無いです」


 そう良い彼女は屋上から出て行ってしまった。


 考えが纏まらない慎二には止める事を出来なかった。だってさっき「見た」笹原結衣の現状があまりにも報われない状態なのだから。


{父親は2年前に交通事故で死亡 母親は癌に侵されている(もう長くは無い) 借金が2000万ある 引き取ってくれる親戚は叔父だけ}


 解決の仕方はこうだった。


{エラー 手遅れか「     」 借金を返す 叔父に引き取られるそれか「      」}


 と、所々文字化けの様になっていて、分からなかったし、学生の慎二に出来る事など無かった。所々ある空白だけは気にはなったが、どっちみち無理だと芳樹が待っている部屋まで帰る事にした。

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