第6話 嘘か本当か 過去とこれから④
◆
お昼に訪れた公園は平日ながらそこそこの人がいた。子供連れの母親や散歩をしているご老人などがいる。
「もうお昼だからか人が思っていた以上にいるな、誰でも能力を使って見てみても良いのだが、出来るだけ困ってそうな人が良いな、「人助け」も出来るなら丁度良いからな」
そう思い周辺を散策してみた。人はいるがそう簡単に困っている人は見つからずとても困難だと思いかけた時「目の能力」で探せるのでは?と思いこの公園内で「困っている人」と考え目を開けた瞬間、目の前にポツポツと青い光が何個も見えた。
「凄いな、こんな使い方も出来るのか……他と一緒で青い光が困っていない人達みたいだな」
なら、赤い光を探すかと歩きかけた時、隣で赤い光が見えたのでそちらを見てみた。そこにはベンチに座る40代程の男性がいた。白いシャツを着て項垂れているその人の頭の上に赤い光を灯していた。
「早速見つかったのは良いがどんな困ったことか確認してみるか」
慎二はそう思い、「その男性の悩みを知りたい」と思ったら慎二の目の前に文字として浮かんだ。
{最近妻と娘が無視をする 自分がいない存在に扱われている}
「こんな感じで見えるんだな、でもこれは嫌われお父さんということかな?改善の仕方とか出たりして……流石に無理か?」
慎二がそう思った瞬間、そんな事を考えながら男性を見ていたら……改善の仕方らしき物も浮かんできた。
{妻と娘は別に嫌ってなどいない。最近仕事ばかりで相手をしてくれない為無視をしているだけ、今までの事を謝れば3人で以前の様に暮らせる}
「……出たよ、この能力何でもアリだな、分かったなら何か困っている事があるか僕の方から聞いてみるか」
慎二はそう思うと早速その男性に声を掛けてみることにした。
「あのー、今大丈夫ですか?項垂れていた様なので体調が悪いのか何か困っている事があるのかと思い声をかけさせて頂きました」
最初は訝しげに見てきた男性も自分の事を心配して声をかけてくれただけと思い、少し警戒心を解いてくれたのか口を開けてくれた。
「体調は問題ないが、困ったことがあってね、ただ、これは僕の事情だから流石に見ず知らずの君に話す訳にはいかないんだ」
だよね、普通いきなり声かけられても言わないよね。僕だって話さないもん。
だけどこんな事で諦める僕では無いんだよな。
「いきなりごめんなさい!でも、もしかしたら誰かに話したら少しは楽になれるかもしれないですよ?……あっ、申し遅れましたが、僕の名前は前田慎二と言います。困っている人や悩んでいる人がいると見捨てられなくて………」
「………そうか、そうだよね。じゃあ僕の話を少し聞いてくれるかな?それと僕の名前は鈴木楽と言うんだ。それでね……」
と、鈴木さんは今までの事を丁寧に話してくれた。内容は自分がさっき「見た」内容とまったく一緒だった。なら解決策は簡単だ。
「………という事があってね、以前の様に妻と娘と接したいんだ」
「そんな事が!お話して下さりありがとうございます!もしかしたら鈴木さんの悩みは解決出来るかもしれないですよ?以前、鈴木さんと似た内容で悩んでいた方がいまして……」
「真実の目で見た事」を以前似た様な方がいたと言ったがそれは「嘘だ」。でも信じてさえくれればこちらの勝ちだ。だって「本当」の事を慎二は言っているだけなのだから。
その後は解決策を鈴木さんに話した。
「………という事がありその方は悩みが解決して今は楽しく家族と過ごしています。信じられないかもしれないですが、一度試してみてはどうでしょうか?」
「そんな事が……うん、こんなにも真剣に僕の話を聞いてくれた君を信じてみるよ。帰ったらやってみるね!」
「本当ですか!家族の仲が直ると良いですね!」
そう良い、鈴木と別れ家に帰った。
◆
・鈴木サイド
「ただいま」
「「‥‥‥‥」」
(……ああ……また「お帰り」の挨拶が返ってこなかった。いつからだろう妻の冴子と娘の愛奈が僕を無視する様になってしまったのは……でも今日は違う、しっかりと向き合うとあの少年と約束したじゃ無いか!)
手洗いを済ませて勢いよくリビングの扉を開けた。
「冴子、愛奈!今まで構ってあげられなくて済まなかった!決してお前達を蔑ろにするつもりは無かったんだ!会社が忙しいとか他のせいにしない、どうか、どうか前みたいに戻りたいんだ!」
恥も外見も捨て土下座をした。
「あなた……」「お父さん……」
そんな鈴木の姿を見ていた2人は最初は驚きながらも、徐々に目に涙を溜めると。
「「私達の方こそごめんなさい!!」」
2人同時に謝ってきた。
2人も元の状態に戻りたかったのだ。ただ、意固地になってしまい、言い出せなかった所、父が今までの事を謝ってきて、自分達もそんな事で不仲になるのは違うと思ったのか謝る事が出来た。
「……許してくれるのか?前みたいに仲良く、過ごせるのか?」
「当たり前じゃない、私の方こそ本当にごめんなさい!あなたが仕事で忙しいのなんて分かっていたのに意地になっていたの、ごめんなさい!」
「そうだよ、あたしも本当はお父さんともっと話したかったの!でも仕事も忙しそうで中々声をかけられなくて……仕事ばかりをするお父さんを見ていたら何だか怖くて言い出せなかったの」
そう、ちゃんと謝れば家族はいくらでも仲直り出来るのだ。大切な絆で結ばれているから。
この後は3人で仲良く話し合った。今まで話せなかった時間を取り戻す様に。
「でも、ビックリしたわ?突然あなたが謝り出したと思ったら土下座までするから」
「そうだよ、何かあったの?」
「ああ、とても良い事があったんだよ!ある少年に出会ってね!君達に真剣に思っている事を伝えれば必ず仲直り出来るってね!」
鈴木はそう楽しそうに二人に慎二の事を話した。
あの少年の言う通りだった。返し切れない程の恩を頂いたな……いずれあの子が1人では解決出来ない事があれば必ず手を貸そう、それが僕があの子に返せる精一杯の恩返しだから。
鈴木はそう、心の中で決心するのだった。
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