第4話 嘘か本当か 過去とこれから②



 4月の初め、まだ肌寒い日が続く中、少しだけ開けられた窓からは穏やかな日の光が照らしている。そんな中、気持ちよさそうに寝ている男がいた。


 そう、過去に戻る事が出来た慎二だ。社会人になった時からしっかりと睡眠を取ることが出来ない日々が続いた為かその分を取り戻すようにとても気持ちよさそうに寝ていた。


 だが、慎二にはゆっくりと眠りたくても寝ている暇はないのだ。何故なら「徳」を積まなければ3年以内に自分自身が亡くなってしまう為だ。その為出来るだけ無駄な時間を使いたくない慎二は朝起きれるか心配だった為、7時に必ず起きれるように目覚まし時計を3個置いていた。


 この日も目覚まし時計が「ジリリリッ」と鳴る中、睡眠と格闘しながらも起き出した。


「……んんっー?あぁ……もう朝?久しぶりに良く眠れたな。正直こんなに寝たのいつぶりだろうか?社会人になってからは残業は当たり前、朝帰りは当然な生活していたから調子、狂うな」


 慎二は知らなかったかもしれないが、過去に戻るまで働いていた会社は完全なブラック企業だった。なので会社から解き放たれた今はそんな事を考えるより布団からどう脱出をするか考えるので精一杯だった。何歳になっても思う事がある、布団は魔性だと、出たくても出られない……わかる人は凄いわかると思うが布団のせいで学生の頃は何回も遅刻をし。


 まぁ、今となってはとても懐かしい記憶だ………今は慎二も学生だが。


「………起きたくないな、起きたくないがやる事がたくさんあるんだよなぁ、仕方ないか」


 渋々起きて寝巻きから動きやすい服に着替え、しっかりと洗顔、歯磨き、身嗜みを整えてから朝食を食べる前に昔からのルーチンになっているランニング5キロを走り終えた後、軽めの朝食を作り出した。


「やっぱり朝は卵かけご飯だよなぁー、人それぞれ好みがあるがこれは譲れんな……食後に飲むコーヒーもまた格別だな……と、その話は置いといて今日流石に神様から貰った能力を確認するか、正直どんなものを貰っても「こんな能力が欲しいー!」とか特に無いんだよなぁー、男のロマンって言ったら魔法だけど、無いって直接言われたし」


 貰える能力などどうでも良いような雰囲気を出している慎二だが、口の端をひくひくさせたり身体を先程から忙しなくソワソワさせている事から痩せ我慢をしているだけで心の中では楽しみにしているのが丸わかりだ。


「この手紙で良いんだよな?神からなんて書いてあるし読んでみるか」




---------------------------------------------------------------

       神からの手紙


 この手紙を読んでいるということは、無事過去に着けて一息落ち着けたからかな?僕からのサプライズはどうだった?過去に着いて目を開けたら君の昔の家が目の前にあってさぞかしビックリしただろう?君が喜んでくれると思い、しっかりと座標を調べてやってみたんだ!


 と……ごめん、ごめん!人とはあまり喋る?書く?機会がないから手紙だとわかっててもついつい書き過ぎてしまうんだ。あまり長引かせても退屈になってしまうと嫌だから早速本題に入らせて頂きたい所だが……まず初めに謝らせて欲しい。本当だったら君と初めて会ったあの空間で謝るべきだったが神にも色々あってね、この場を借りさせて頂くよ、君が今まで人々から嫌な気持ちを受けたのも全部僕たち神のせいなんだ、前も話したが本当にすまなかった。


 ここからは神ではなく前田慎二君、君のもう1人の祖父のような存在として言わせてくれ……何を言ってるんだと思うかもしれないけど、僕は君が小さい時から見ている。僕からしたら君は孫みたいなものなんだよ、あの時ふざけ合いながらでも君と話せた時とても嬉しかったんだ。本当だよ?それに本来なら君は誰にでも愛されて沢山の信頼出来る友人が出来て愛する人と出会い、素晴らしい一生を過ごす、はずだったんだ。


 君の元に来れるならもっと早くに来たかった。ただ、見ている事しか出来なかった自分が不甲斐なくてしょうがないよ。


 でも、君が僕の話を信じてくれて人生をやり直す為に過去に戻ってくれた時、やっと君が幸せになれるととても嬉しかった!


 ごめんね、前置きが長かったけど君に相応しい力を与えよう、その名を「真実の目」という。


 又の名を「神の目」や「全てを見通す目」と言うね……本当はただ人の考えてる嘘か本当かがわかる力を渡す筈だったんだ。それはそれでかなり使える能力だけど……これは今までの君に対しての贖罪、我々からの罪滅ぼしのつもりで僕の特権と君に負の塊を落としてしまった神の力で君にあげる力を最上級の物にさせてもらったよ!


 ここだけの話だけどね?やり過ぎて何十年か身動きが取れなくなっちゃたよ、他の神に見つかってね、はは……でもこれで良かったんだ。少しでも君の役に立てるならね!力を使えるようになるのはこの手紙を読んだ後から使えるようになるからね!


 ・ここからは力の効果と使い方を教えるよ


 まずは効果だけど、字の如く何でも見える力なんだ。多種多様に自分が思うままに出来るから使いながら色々試してみると良いよ!


 ・次に使い方だね


 大体の使い方は相手の体のどの箇所でも良いから2秒間見てその相手の見たい事を頭の中に浮かべるんだ。その人の「嘘」か「本当」の見分け方は嘘だったら赤色、本当だったら青色に頭の上が光って見えるからわかりやすいと思うよ!ああ、相手の情報も光も自分にしか見えないから安心して。


 ただ、注意をしてほしい使い方もある。それが過去と未来を見る事だ。使い方は「見る」人の名前か顔を知っていれば頭の中で浮かべるだけで「見える」はずだ、見ようと思えば見れるが……大きな力には代償がつきものなんだ。その代償は君自身の寿命で、使える回数は過去と未来共に30回が限度なんだ、それを超えると……命の灯火が消えてしまう……言い方を変えると死んでしまうんだ、これは僕にもどうしようも出来なくて……すまない。


 でも使う時は本当に注意してね?君が亡くなると僕も悲しくなる。それに今度いつかまた会えた時にさ、今どんな状況か教えてよ!


 僕ならどうなるか予想できるけど、今ここで言ったらつまらないからそれはお楽しみと言うことで。


 その未来になるまでの道乗りは険しく厳しい道だと思う、でも今の君なら出来ると信じてるよ。どうか幸せになっておくれ僕たちの愛する孫、どうか幸多き人生を!


             愛する孫慎二へ


---------------------------------------------------------------



 手紙を読んでいる間長いような短いような夢中に読んでしまった。この手紙を読んで一言、言う事があるとすれば…すれば……


「サプライズが出来て無いよ……とか、僕の方こそありがとうとか最後まで名前わからなかったとか色々言いたいけど。1番が祖父以外に僕の事を信じてくれる人がいた事がとても、とても……嬉しかった。当たり前だろ!あんたが自分の力を使ってまでくれた力だ!必ず自分も周りも幸せにしてみせるよ……だから、ありがとう…神様………」


 その後は泣くもんかと思っていたが、涙が止まらなかった。


 この涙を一生忘れないだろう、いつかまた会えるその日まで。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る