第2話 嘘か本当か 過去の約束と記憶


「そう、そんな慎二君、君が余りにも可愛そうなのでやり直しの機会を用意したよ!」


(やり直し?)


「そう、やり直し。流石に今の年齢だったり大人のしがらみがあると動きづらいと思うんだ、だから君には過去に戻り、やり直すチャンスが与えられる事になったんだ……ただ、やり直しをすると言っても条件があるんだ」


 その条件とは………


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       やり直しの条件


 1、過去に戻る事

 2、負幸体質はそのまま

 3、徳を積む事(人助け、人を幸せにする行為)

 4、期間は3年の条件付き

 5、慎二が必要だと思う特別な力 


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「……と、今伝えた様な内容になるね」


(………正直全部気になるけど、1番は過去に戻っても「負幸体質」が治らない事かな?次が3年の条件付きだけど、何が条件なの?)


「まずは「負幸体質」だけど……こちらの方でも「負幸体質」を直せないかと色々と考えたんだけど……無理だったんだ。こんな体質邪魔にしかならないもんね、今よりも苦痛な未来になるかもしれないし………けど、だけど過去に戻って「徳」を積めばいずれ「負幸体質」が無くなる事が分かったんだ。「徳」と「負」が打ち消し合って消える手筈になっているからそこは安心して良いよ。どのくらい「徳」を貯めれば良いかとかはこちらでも分からないけど挫けず頑張ってほしい!……次は条件についてだね、これは3年と設けられてるけど実際3年中に「徳」をある程度積まないと君が死んでしまうんだ。こっちもある程度、なんていう曖昧な答えでごめんね」


(ある程度、理解したよ「負幸体質」も治るみたいだし、死ぬといっても多分後悔は無いと思うんだ。だって、今みたいな生活をしていたら結局最後は何も成せないまま死ぬだけだから早いか遅いかの違いかな?それに今世では誰一人として「人助け」すら出来なかったから過去に戻ってやり直したいと、何度も思ってた)


「それは、前田義慈さん。君のお爺さんからの最後の約束かな?」


(……知ってるよね神様なんだから。あの人だけが僕が「負幸体質」でも理解してくれた唯一の人なんだよ、今回は夢半ばどころか何も出来なかった、けど次があるならと何回も考えたさ、その機会が来たんだから何が何でも精一杯足掻いてみせるさ!)


「その気持ち受け取ったよ、これからどんな事があろうが気持ちは揺るがないみたいだね。なら僕からの特別なヒントを与えちゃおう!「負幸体質」は「徳」を積めば最終的に消えると言ったけどね、「徳」を積めば積む程少しずつ君のその「負幸体質」は解消するんだ、これは覚えていてね!」


(ありがたい。「徳」を積むまでの道のりが大変かも知れないけど頑張れそうかな?あと聞きたかった事が過去に戻る時間帯はいつになるの?赤ちゃんとかは精神的にきついかも、想像してみてよ?外見は赤ちゃんでも中身は20代後半なんだよ?)


「そこは安心してくれ、まず、過去に戻る時間帯だけど高校生1年生の4月だよ。君が過去に行きたいと言っていた桜田高校に通える様になってる筈だ、あと特別な力だけど過去に転移する間際に渡すよ、力の内容も自ずとわかるはずだから!」


(分かった、何から何までありがとう!特別な力はお楽しみってやつだね!もしかして魔法とか使えちゃったりして……?)


「うーーん……ごめん。魔法とかはちょっと無理かも、でも必ず君を助けてくれる能力の筈だから楽しみにしていてよ!」


(分かった、楽しみにしてるよ!)


 慎二は本当に楽しみなのか「過去」に戻るというのに、何も不安は無さそうだ。

 

「これから君を過去の世界に飛ばすよ?最後に聞くけど本当に過去に戻って良いのかい?僕から言い出した事だけど………今まであった辛い事をまた味わう羽目になるかもしれない。それでも君は過去に戻ってやり直すかい?」


(うん、辛い事も悲しい事も苦しい事も嫌だけど。やり直してみたい!また、失敗するかもしれない、挫折するかもしれない、生きるのが嫌になるかもしれない。それでもこのチャンスを逃したく無い!)


「そっか、君は強いね……たまに君のことを見ていた、多少性格は歪んでしまったのかもしれないけどまだ心は腐っていない。僕はそんな君を尊敬するよ!さあ、過去に戻って新しい一歩を踏み出しておいで……これからの君の人生に、幸あれ」


(ありがとう、神様!)


 慎二は神様に返事を返すと、慎二の周りは光に包まれて……気付いたら慎二はもうその場にいなくなっていた。そこには安心した様な顔をする神の端くれだけが残された。





 慎二が過去に戻った事を確認した神の端くれは苦笑いすると、一人呟いた。


「やっぱり面白い人間だったな。本当に次の世界では幸運であって欲しい物だよ、それにやっと……やっと、話せたな」


 そんな事を呟くと神の端くれは少し笑うとその場からいなくなった。最初からその場にいなかったかの様に。


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