第十一話 どうしてこうなった


 牢屋の中からこんにちは。

 僕です。

 今回が最後のご挨拶になるかもしれません。死ぬ直前まで足掻いてみせますが、生き残れる目はあるのでしょうか。

 まさか生きるためにハンターになろうとしたらこんな憂き目にあうなどと誰が考えたでしょうか。

 ハンター試験あなどりがたし。

 現在、この牢屋から逃げ出すことを考えていますが、たとえ成功しても人族圏での生活は難しいでしょう。魔族圏に逃げても魔族に殺されるでしょうし、人が全くいない場所で自給自足の生活をするしかないかもしれません。不幸中の幸いですが師匠にどこでも生きていけるように仕込まれております。この歳で孤独な生活を送ることになるとは、人生とはままならないものです。まあそれもこれも脱獄に成功して生き残ることができたらです。

 まあ逆恨みだとしても言いたいことは一つだけ──

 あのクサレ神め、こんなところまで祟るとはマジ許すまじ。



 ●△◽️



 面接官から国に引き渡された後、その機関の上層部では、このような話し合いが行われた。


「この歳でここまで武技魔法を極めているのは逸材。どうにか有効活用する術はないか」


「まだ十三歳だ。教育し直すことも可能ではないか」


「いや、あれは齢十三にして精神的に円熟している。矯正するのは難しいだろう」


「再教育は諦めるしかないか……」


「逆にただ野に離せは特大の脅威になりうる。今のうちに殺しておくのもひとつの手だが」


「だが、あの隠遁者、、、、、の紹介状を持ってきた。縁者だとしたら殺すのはより厄介になるやもしれん」


「であるならば、逆らえないように神呪怨回路を身体に刻み込んで使い潰せば──もとい、使役すれば良いのではないか?」


「まあ、ただ殺すよりかは、隠遁者に対して言い訳もたつか」



 ●△◽️



「出ろ」


 座禅の姿勢から、立ち上がる。

 手には手錠、両足には鎖に繋がれてしかも重し──鉄球まで付いている。

 まあ、武技魔法を行使すれば動くだけなら問題はない。戦闘は厳しいが。

 さりげなく鍵を持っていないから確認をする。


「逃げようなどと思わないことだ」


 全然さりげなくできていなかったらしい。目隠しをされて歩かされる。なんか師匠の修行を思い出す。聴勁を身につけるために目隠しをした状態であらゆる方向から攻撃を加えられたっけなぁ。最初は拳だったのに。次第にレベルアップしていき、刃物や衝波勁、最終的には浸透勁になってたっけ。殺す気かと思ったけど、死中に活を求めるっていうのかな? 人って死ぬ気になればなんとか生き残れるものだよね。おかげで視界が塞がれた状態でも通常生活を含め戦闘であっても支障をきたさない。今回も生き残れると良いのだが。


 連れて行かれた場所はお偉いさん方がいる部屋。


「喜びたまえ。人族に隷属することを条件に生存が許可された」


 要するに国家奴隷になれと。


「ちなみに、それを断った場合は?」


「もちろん死刑だが?」


 なるほど、奴隷として酷使されるか、潔く死ぬか──二つに一つということね。


 悲惨な人生の岐路に思わず嘆息が漏れる。

 常在戦場の呼吸を維持しながらため息をつくという離れ業も、今となっては朝飯前である。まあ捕まってから食事などとっていないが。

 さてここが生死の分かれ目である気を取り直して発言をする。


「第三の選択肢があるとは思いませんか?」


「ほう? なんだね?」


「ここに居る全員を葬り、人族圏から脱出することです」


 周囲からの殺気で空間が歪んだかと思った。

 それに口の端を吊り上げることで応える。


「……それが、可能だと思うのかね?」


「考えるまでもありません」


 余裕の笑みを返す。


「──不可能です」


 白旗を上げた。

 そんなん無理に決まってるだろう。ちょっとした反抗期で言ってみただけである。十三歳、現代日本に当て嵌めれば中二なのだ、仕方がない。


「人族国家に隷属いたします。どうか僕を殺さないでください」


 こうして僕は、首輪をつけられて、酷使されることになった。

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