第九話 僕の戦いはこれからだ
やってきましたハンターギルド。
意気揚々と入口をくぐったところで声をかけられた。
「おい、ここは依頼窓口じゃないぞ、表にまわれ」
ガラの悪い大男にそう諭された。
言うなればハンターはギルドの取引先──業務委託先(個人事業主)である。それ用の入口や窓口がある。またお客様用の窓口もあるので、そちらと勘違いされたのである。
「いえ、ハンターになるために来たのでこちらで間違いありません」
「は?」
大男は訝しげに眉を顰めた。ただでさえ怖い顔がより一層凶悪に見える。
「おまえ、いくつだ?」
年齢を疑われた。
なにせ見た目は、九歳の小娘だ。仕方がない、想定の範囲内である。
「ご心配なく、こう見えても成人しております」
「嘘こけ」
即刻、否定された。
「どう見てもまだ親元にいる歳じゃねえか」
ぽんぽんと頭を叩かれる。体の大きさを揶揄されているのだ。
ムっとしてその手を払う。
「あいにくと僕は孤児ですし、間違いなく十三歳なのでお構いなく」
眼差しを鋭くして相手を睨みつける。
「いや、そうは言うがな……」
大男はどうしたものかというように大きく息をつく。
これは通らせてもらうのに時間がかかるかもと、こちらも嘆息をした時だった。顔見知りのハンターが通りがかったのだ。
「なんだ、レイフィーじゃねえか。どうしたんだ、こんなところで?」
「シークさん! ちょうどいいところに!」
昔、孤児院を助けてくれたことのあるハンターだ。彼であれば僕のことを知っているので弁護してくれるはず。
「成人したので、ハンターになろうと思いまして。だだ──」
こちらの方が通してくれないと訴える。自分が成人していることを信じてくれないと愚痴った。
「そりゃあ、まあ仕方ねえだろ。おまえ昔会ったときから全然背ぇ伸びてねえし。まだチン○ンに毛も生えてないんじゃねえか?」
「セクハラで訴えますよ」
うっせえな、生えてねえよ。
訴えられたくなければ、さっさとその分からず屋の大男に問題がないことを言ってやれ。
シークは肩をすくめると、大男に言った。
「ダイさん、こいつは間違いなく成人してるし、腕も確かだよ。いいハンターになると思うぜ」
「シークが言うのであれば、まあそうなんだろうが……」
大男──ダイは腹の底から唸るように声を出した。
「嬢ちゃん」
その眼光は鋭く、なんだ? やるのか? と身構えた。
「悪いことは言わねえ、ハンターはやめておけ」
何事かと思えば、こんこんと諭された。
曰く──
ハンターは離職率が高く、それ以上に死亡率が高い。超ブラックである。若い身空でなるものではない。ガラの悪い顔に反してダイは親切だった。
くそう。
こんな見ず知らずの孤児に優しくすんなや、ちょっと心が揺らぎそうになったじゃないか。
それでも意思の固さを示して、やっとこさ理解を得られた。
「ちなみ僕は男ですので、二度と女と間違えないでください。一度目は咎めませんが、二度目は許しませんからね」
それだけは釘を刺しておいた。
「そうか、そいつぁは悪かったな坊主。なんか困ったことがあったら俺んとこに来い。相談に乗ってやるからな」
そう言い残してシークと連れ立って歩いて行った。
最後まで優しいなこいつ。
生きることに厳しいこの世界で、孤児にここまで優しいのは珍しい。ちょっと感動した。
そしてやってきましたハンター試験受付窓口。
受付嬢は美人であった。
「あの、ハンターになりたいのですが、よろしいでしょうか」
「あのね、お嬢さん。ハンターは成人してないとなれないのよ」
案の定、年齢を信じてもらえず。先程の騒ぎの巻き直しである。くそう、シークについてきてもらえば良かった。頑固さでいえば美人受付嬢は、ダイ以上であった。話がまったく前に進まない。
「こ、これでなんとかお願いします!」
「……こ、これはっ?」
半泣きになりながら、師匠の紹介状を出してやっと受け入れられた。
ちなみに、師匠の紹介状を読んだ受付嬢は真っ青になり、ギルドマスターがでてくる騒ぎになった。
師匠、あんた何者ですか?
まあ、なにわともあれ、ハンター試験を受験できるようである。
「では、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いいたします」
「はい」
受け取った用紙にペンを走らせる。
氏名、年齢、資格有無、特技、習得魔法、出身地、家族構成、志望動機。
受講料は銀貨10枚であった。
貧民の家族構成四人であればこのお金で一月は生きていける大金だ。師匠のツテで働かせてもらいなんとか成人するまでに貯めることができた。
試験日は、一週間後。
試験内容は下記である。
①筆記試験
②実技試験
③実戦試験
④面接試験
それにクリアすればハンター資格が得られる。
僕の戦いはこれから始まる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます