第八話 大人になりました


 皆さま。

 お久しぶりのご挨拶になります。

 僕でございます。

 最後にご挨拶してからどれくらいの期間があいたのか、僕は成人──十三歳になりました。

 この世界は子供が産めるようになる年齢──精通、初潮のタイミングで成人の認識です。その平均が十三歳であるので、その年齢で成人とされます。

 日本ではまだ未成年──中学生くらいの年齢ですが、ここまで生き残れたことに感無量でございます。


 成人したといっても、僕の目標は変わりません。

 最終目標、大往生。

 中期目標、そのために生活基盤を手に入れる。要するに金ですね。

 お金は大事です。お金で幸せは手に入らないかもしれませんが、手に入れた幸せを守る、維持するためには必要不可欠ですからね。あの食糧難や流行病は僕にそれを教えてくれました。これからは金にがめつく生きていきます。


 目下の目標であった強くなることについては、最低ラインは達成しました。

 そのために地獄の修行を乗り越えてきたのですから。


 ホントあの鬼畜師匠ってば、毎度僕を拷問をしているのか、はたまた殺しにかかっているのかという具合でした。


 まあ、おかげで常時武技魔法の呼吸ができるようになりました。

 俗に言う── 常在戦場の呼吸というやつらしいです。

 呼吸をここまで習得すると、戦闘に適した身体を維持するため老化が極端に遅くなります。ちなみに師匠は、貴族の魔力と武技魔法の常在戦場の呼吸で老化がほぼ止まっており、すでに四百年ほど生きているそうです。長生きですね。


 さて、ここまでの説明でどれくらいの方が僕に起こった弊害を理解してくれたでしょうか。


 僕の外見年齢ですが、常在戦場の呼吸を習得した九歳で止まっています。

 いや正確にお伝えするともの凄くゆっくり老化成長しているのですが、見た目がほとんど変わりません。

 成人してるのに。そう、成人してるのに未だに小娘、、と呼ばれます。


 そういえば、僕の容姿には今まで触れてきませんでしたね。はっきりと容姿だけなら勝組です。

 いまだ幼い見た目ながら美貌といっても差し支えないでしょう。

 金髪碧眼の妖精の如き容姿。

 生まれてこのかた、初対面で女の子に間違われなかったことはありません。僕、男の子なのに……


 ですが、容姿が勝組でも、いまのところ不利益しか被っていません。

 奴隷商人に拐われかけたこと数十回、変態にレイプされそうになること数えきれず。


 この美貌と女顔、はっきりとコンプレックスです。

 あ、ちなみに、襲ってきたやからには、ばっちり報復しておきました。


 成人を機に、師匠から基礎はすべて教えた。あとは自ら鍛えよと言葉を残して放浪の旅に出ました。一応の免状を授かったわけです。奥義とかほとんど教わってないんですけどね。


 あ、あと第四魔法──技巧魔法の基礎を覚えました。僕が使っている武器は、実のところ自作の魔道具だったりします。右手首に巻いてある腕輪がそれです。機能については、いずれ機会があれば紹介いたします。


 また、第二魔法──回復魔法については、残念ながらまったく素養がありませんでした。なにせあのクサレ神に対する信仰心が必要不可欠でしたからね。僕にあるのはあの神に対する恨みつらみなので、使えるようになるわけがないです。すごく有用な魔法で覚えることができれば生存率が上がったのですが、さすがに自分の心を騙し切ることはできませんでした。

 まあ、技巧魔法の発展技術である魔法水薬ポーション作成を習得したので、ひとまずそれで良しとしています。


 そんなこんなで、十三歳──成人となったからには孤児院を出て働かなくてはいけません。

 この世界にも色々な職があり、一応は職業選択の自由があります。まあ、貧民の僕がなれる職はたかが知れてますが。


 僕はハンターになろうと思っています。


 この世界は、電気やガスの代わりに、魔石をエネルギー資源として経済がまわっています。

 前世での家電に当たるのが、魔道具です。技巧魔法によって造り出される魔道具の半分は、生活を便利するために利用されています。熱操作による空調や、治水、医療、上下水道、衛生事業、農業などなど、応用分野は多岐にわたります。つまり、この世界の社会は魔道具と、それを動かす魔石によって支えられているのです。

 ちなみに残り半分は、軍事関連である。魔族との戦い、魔物の駆逐、この世界は闘争に満ちているのだなと感じる今日この頃。


 魔石については、昔は偉大なる第四始祖により魔石を生み出すシステム──魔造炉があったらしいですが、大罪人の手によって破壊されて、さらには魔物を狩って魔石を手に入れるようにシステム改変させられてしまいました。


 それから人族は魔石を手に入れるために魔物を狩らなければいけなくなりました。新しい職業の誕生、それが狩人ハンターです。


 僕はそのハンター試験へ応募しに行きます。

 それではまた次の機会に。

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