第七話 地獄が再びやってきた
やってきました。
地獄の修行ツアー。
皆さま、僕ですよー。
武技魔法の呼吸法を身につける地獄から生還して一年後、とうとう師匠が帰ってきました。恐怖のあまり──おしっこちびりました。だって呼吸法の継続、一年で二時間しかできるようにならなかったんですもの。どんな罰を受けるかと考えるとお股も緩くなりますよね?
さあ、今回僕は生き残ることができるでしょうか?
あ、ちなみに四歳になりました。
●△◽️
できるかぁっ! こんなん!
そう叫べたらどんなに楽だろう。
師匠はわざわざ僕専用に寝床を用意してくれました。
剣山のベッドです。
皆さまご存知でしょうか剣山って文字の如く、鋭い針が上を向いてびっしりと敷き詰めらめているもので、遠目に見ると剣の生えた山にしか見えないものです。
そんな物の上に寝ろと師匠は仰せです。
正気か?
ええ、まごうことなき正気でしょうね。かの師匠様は。
殺す気か?
いいえ、生かして鍛えるつもりでしょう。なにせ回復魔法持ちですからね。
死んだ目で武技魔法の呼吸を開始する。一年毎日自己鍛錬をしていただけあってスムーズに魔力を循環させて勁へと練り上げていく。この呼吸を続けている間は超人だ。剣山の上でも傷一つつかないだろう。
そう呼吸が続く間は──
「痛ってえええっ!」
二時間十分後──自己記録を十分更新したが──僕は剣山に貫かれて、のたうち回っていた。
アイアンメイデンで処刑される人はこんな痛みを味わうのだろうか。
師匠は無言で回復魔法をかけてくれた。再び顎で示される剣山。無言の圧力に屈し再び剣山に横になる僕。
そのサイクルを何度も繰り返して一週間。呼吸の持続時間は四時間を超えていた。驚いたことに寝ながら呼吸を続けることができ始めた。もちろん剣山の上でだ。
命の危険を感じると、人はここまで成長することができるものなのかと愕然とする思いだ。
師匠はそこまで見届けて、また放浪の旅に出た。
次の宿題は寝ている時も常に武技魔法の呼吸を続けること。
剣山ベッドは置いていかれた。
こんなん回復魔法がないと常用できないのだが──
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