第五話 弟子入りしました


 皆さまこんにちは。

 僕です。

 魔法を曲がりなりにも使えるようになってから、さらに三年が経過しました。

 久々のご挨拶になりますが、いかがお過ごしでしょうか。


 さて、本日は驚きの事実をお伝えしようと思います。


 なんと僕が武技魔法と思っていたものは、魔法ではなく全く別物であることが判明しました。


 ●△◽️


 流行り病や、食糧難などがあり、何人もの孤児院の子供が亡くなった。日本では考えられない出来事だが、これが僕の生きる現実である。強くなるだけではなく経済力も手に入れる必要があると痛感してしまった。それらを乗り越えなんとか三歳になることができた。日本の七五三ではないが、ひとつの節目である。


 最終目標は、大往生すること。

 目下の目標は、強くなること。

 そして、中長期の目標が生きるための経済力──金を稼ぐこと。

 早く安全に生きるために、万全な生活基盤を手に入れたいものだ。

 そう思いながら、本日も魔法の訓練──瞑想を欠かさない僕でした。


 そんなある日、院長先生に呼び出された。

 院長室に行くと、そこには超然とした佇まいの老人がいた。

 なんと自分を助けてくれた老師だという。

 名を、ロウシェンと名乗った。

 慌てて頭を下げる。


「その節は大変お世話になりました。この御恩は一生忘れません」


 ロウシェン老師はかがみ込んでこちらを見る。首を傾げられた。


「聖力が根付いている?」


 ん?

 聖力?

 どこかで聞いたことがある──というか、アレだ! あのクサレ神が僕に与えなかった、、、、、、チートだ!

 その聖力が根付いている? どういうことだ?


 話を聞くと赤子の頃に死にかけていた僕を生かすため聖力を分け与えたらしい。その聖力は生き残るために消費されてしまうはずが、僕の身体に根付いてしまったらしい。というか僕が武技魔法だと思っていたのは、聖力による一時的な強化であったらしい。


 そうだよね、そんな簡単に独学で魔法が使えたりしないよね。

 というか、聖力を持っているこの老師は何者だ? さらに、それを僕に分け与えることができるなんて、まさかこの人が本当の神か?


 いやいや、落ち着け。オーケー僕は冷静だ。この人は神ではなく人族であることは間違いないだろう。そうなると疑問は残る。この世界の人族に、加護──聖力を受け入れる素養はないはずなのに。まさか──


「お前は始祖の系譜か?」


 先に言われてしまった。ロウシェン老師が転移者の血を引いてるのかを聞こうと思っていたのに。だがこう聞いてくるということはこの老師はやはり転移者──始祖の系譜なのだろう。そう考えつつ首を横に振る。


「違います。少なくとも両親は聖力を持っていませんでした」


 首を捻られる。


「父と母を覚えているのか?」


「はい。捨てられた経緯まで全部覚えております」


「その記憶力、聖力を受け入れる素地。ふむ、先祖返りかも知れんな……」


 多分違います。あのクサレ神が聖力を受け入れる素養がある者を召喚したたので、僕にもその素養があったのだと思います。ただ、転移ではなく転生だったので、魂だけでも受け入れられる余地があったのだと初めて知りましたが。

 心の中だけで呟く。


 それにしても、神に与えられなかったチートを、この老師から手に入れるなんて。この聖力がなかったら流行り病か、食糧難のときにぽっくり逝っていた可能性が高い。この人のおかげで今まで生き残ることができていたのだ。


 ──あぁ、あなたが僕の神でしたか!


 あまりの感謝に錯乱していた。

 はっ、として首を振る。

 錯乱している場合ではない。これはチャンスなのではないか? この老師に弟子入りすることができれば生き抜く強さを手に入れられるはず!


「あの!」


 土下座した。


「僕を弟子にしてください!」


 院長が突然の幼児の行動に目を丸くした。

 ロウシェン老師は泰然として僕の後頭部を見下ろしている。


「ふむ。それはなぜ?」


「この世界を生き抜くためです! 僕の夢は大往生することなのです! そのためには力が入ります。何者にも害されることのない力が!」


「ふむ」


 しばしの沈黙。


「顔を上げよ」


「はい!」


 土下座の態勢から顔のみを上げる。


「わしは各地を放浪しておる。ここに訪れた時のみの指導で良ければ、弟子にとろう」


「ありがとうございます!」


 叩頭した。


「付け加えるが、わしの修行は厳しいぞ」


「覚悟のうえです!」


「ならばよし」


 こうして僕は強さを手に入れるために師匠に弟子入りした。

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