第3話 ハーレム?

 桜夜の家のリビングでは、桜夜とあずさが隣り合って座り、対面に三姉妹が座るという形でにらみ合いが続いていた。全員の目の前にはリオが入れた上質なダージリンティーと、サイカが焼いたチーズケーキが並べられていたが、誰も手をつけていなかった。そしてリオが笑みを浮かべて口を開いた。


「まずはあずさ様、わたくしたちは桜夜様とあずさ様が結婚なさることに反対はいたしません」


「リオねえ!」


 ホムラが反論しようとしたが、それをリオは片手で制した。


「あずさ様がかつて桜夜様と恋人であったことはわたくしも存じております。何より桜夜様は四方院の人間です。宗主様の宣下に逆らうことはできません。わかりますね? ホムラちゃん」


「うぐ……でも」


「ですがあずさ様、四方院家に力を持つ者はなるべく多くその血筋を後世に遺す義務があります。ご存じですか?」


「うっ、知っているけど。あたしと桜夜君を許嫁にしたのだって、四方院家に桜夜君の血を取り込むためだもの……」


 あずさは少し悲しそうだった。


「ですからあずさ様が戸籍上結婚することは認めます。しかし同時にわたくしたち三姉妹が桜夜様の妻としてふるまうのもお許しいただきたいのです。これは宗主様の認めたことです」


(いつの間にそんな根回しをしたんだか)


 桜夜は何も情報を与えていないにも関わらず、ここまで根回しをして断りにくい取引にもっていくリオの腕前にひやりとする思いだった。相談役補佐官として極めて優秀なのは事実なのだが……。


(次期相談役候補に入れてもいいな)


 自分のプライベートの問題が議論されているのに次世代の四方院家について考えるのは最早相談役としての職業病だった。


「いかがでしょう皆様。この中で立場が一番重いのは桜夜様です。その桜夜様の立場を悪くせず全員幸せになるのにはこれが最善手だと思いますが。我々がどれだけ騒いでも桜夜様の立場を悪くすることはあっても宣下が取り消されることはありません」


「いろいろと気を使わせてすまないな。リオ」


「いえ。補佐官兼妻ですから」


 苦笑する桜夜に対してリオは微笑む。


「ぐぬぬぬ。でもまだ認めたわけじゃないから! 桜夜にふさわしくない女はあたしが排除するんだから!」


「それはこちらも同じです、あずさ様。桜夜様をさみしがらせるようなら私たち姉妹はいつでもあなた様から正妻の座を奪いに行きます」


 睨むあずさと微笑むリオ。その状態のまま場に沈黙が下りた。


「僕の身から出た錆で皆には迷惑をかけるが、次期宗主様の命令だ。あずさは今日からこの家に住む。そして僕ら5人相互理解を深めていこう。それでお願いできるかな」


 桜夜の言葉に全員が不承不承ながらもうなずく。


「では、まずはケーキと紅茶をいただこう」


 桜夜がそう言って微笑み、全員がケーキを口にすると、場が少しだけ和んだ。


to be continued


 


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