エピローグ 生み出してくれて、ありがとう

「やあ、逢いたかったよ。水希桜夜。僕の愛しい模造品」


「模造品?」


 静かな世界の中、桜夜との合体を解いた三姉妹の内、サイカが仮面の男に問う。


「ああ、水希桜夜は……」


 そこで男は仮面を外す。仮面の下の素顔は桜夜と双子のように瓜二つだった。


「この僕、世界で最初の神殺し、アルファをモデルにルシフェル……今はサタンと名乗っていたか。あいつが造ったものだ」


 桜夜は特に表情を変えなかったが、三人娘は驚きの表情を浮かべた。


「それは、サタンが桜夜様の生みの親ということですか?」


「生みの親というよりは造物主だな。そして失敗作だから人間界に捨てた」


「……失敗作?」


 ホムラの顔に苛立ちが浮かぶ。


「そうだ。水希桜夜は身体が極端に弱く、デミウルゴスとの戦いには使えない。だから捨てた、と本人は言うだろうな」


 殴りかかりそうになるホムラを手で制すると、桜夜はアルファに尋ねる。


「あなたは何者なんですか?」


「さっきも言ったろう? 世界最初の神殺しさ。ただ昔はまだ力が不安定でな。デミウルゴスを倒しきれず、二度とデミウルゴスの世界に入れないよう封印されてしまったわけだ。だが今回お前たちの活躍により、ようやく止めを刺せた。大義である」


 アルファは笑みを浮かべる。桜夜とそっくりな笑みを。否、桜夜がオリジナルであるアルファとよく似ているのだ。


「……サタンは生き返るのですか?」


「なんだい? 自分の手で殺したくなったかい? まああいつは魂だけの存在だ。そのうち蘇るだろう」


「そうですか……なら」


――そのときはお礼をしないといけませんね。


「お礼? それはお礼参りって意味かい?」


「違いますよ。この世界に生み出してくれてありがとう、と。生み出してくれたから僕は、先生に、あずさに、この子たちに出逢えた」


 桜夜は、三姉妹を順々に見る。


「そうか。あいつは人間が生まれてくるのは間違っていると考えているから、ひどく嫌そうな顔をするのが目に浮かぶな。楽しみだ」


 くつくつと笑うと、アルファは踵を返した。


「それじゃあな。桜夜。やがてくる未来にまた会おう」


 アルファがゆっくりと歩き出すと、空間がゆがみ、彼の前に丸いゲートが現れた。そのゲートの向こう側には、白い巫女のような装束をした少女がいた。アルファはゲートに入ると少女と微笑みあい、手を繋いで歩いて行った。桜夜は1人つぶやいた。


「やがてくる未来、か」


to be continued

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