第3話 神の裁き

 桜夜が外に出ると、土砂降りの雨が降っていた。空には暗雲がたれこみ、雷がいくつも落ちていった。とにかく宗主様のところにいかねば、と桜夜が走り出そうとすると、今度は世界が壊れんばかりの地震が起きた。桜夜は立っていることができず、思わずしゃがみこんでしまう。しかしいくら待っても地震が収まらないため、彼は意を決して揺れる世界の中宗主の執務室がある建物を目指して走った。


◆◆◆


宗主の執務室


 自身によって灯篭などが倒れ、散らかった部屋の中央に宗主である四方院玄武は座っていた。扉を開いた桜夜は玄武に声をかける。


「宗主!」


「桜夜か」


「いったい何が起こっているんですか?」


「うむ……」


 重たくうなずいた玄武は、1つの巻物を桜夜に向けて広げた。


「これは四方院家初代の『予言』が書いてある。読んでやろう。『秩序を司る者打ち倒される時、偽りの神怒り、天地を破壊し尽くさん』。桜夜、お前さんは秩序を司る者コスモスを討伐した。恐らく今起こっているのは、『神の裁き』じゃ」


「神の裁き……」


 部屋に重い空気が漂った。その空気を壊すように、2人とは別の声が発せられた。


「偽神デミウルゴスは蘇った。今こそ神殺しの時だ」


 空間をゆがませて姿を現したのはサタンだった。この世の物とは思えない純白の衣と威厳のある声、それは魔王というより大天使を彷彿とさせた。


「サタン……」


「契約を果たしてもらうぞ、桜夜。どの道このままでは地球はおしまいだ」


「……わかった。いこう、サタン」


 桜夜はそう決意し、玄武を見た。玄武も許可を出すように重々しくうなずいた。それを受けて桜夜は自分より長身のサタンに向き直り、その顔を見上げる。


「では……」


「待って!」


 その時宗主執務室の扉が乱暴に開かれ、サイカ、ホムラ、リオが駆け込んできた。


「わたしたちも連れてって!」


「そうだ! 桜夜のバカはオレが守るって決めてんだ!」


「わたくしたちは桜夜様の親衛隊です! どこまでもついていきますっ」


 三人娘を冷たい目で見たサタンは容赦のない言葉を告げる。


「下等で下賤な神と言っても創造神との闘いだ。お前たち魔女見習いごときが出る幕はない」


「じゃあ桜夜さんも行かせない!」


 三人娘は桜夜にしがみつき、徹底抗戦の構えを見せる。


「はあ、面倒な連中だ」


 サタンは面倒そうに指をパチリと鳴らす。すると桜夜と三人娘は急に意識を失い、床に倒れた。そして彼は玄武に何も言うことなくまた空間をゆがめ、姿を消した。1人になった玄武はつぶやく。


 ――頼むぞ桜夜。


to be continued

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