第4話 奥底に仕舞っておく
「今日は何が食べたい?」
ダイニングテーブルで小学生に人気のある怪談話の本を
熱心に読んでいた聖光にちょっとお茶目に聞いてみた。
彼が視線を上げたとき、私は”ハッ”とした。
もう蒸し暑くなってきていたが
節約のためにエアコンはギリギリまで使わないと
彼にも教えていたので、その時の私は軽装でゆったりしていて
風通しが良いだろうと考えて
ユニオンジャックのイラスト入りの彼の大きなTシャツを着ていた。
甘えて立ちながら両肘をテーブルに着いたので
大きく開いたTシャツのネックラインから私の胸元が
彼の視線の目の前に露わになってしまった。
彼の視線が明らかにそこに集中していることがわかった。
中学生あたりから周りの人よりかなり大きくなっていたし
男子園児からよく”ボインボイン”と
逆コンプレックスにもなっていた。
「男はみんな巨乳好きなんだーーーー」と
カラオケでイマちんが泣きながら絶叫してるのを見たけど
イマちんほど恋愛経験がない私には、ホントにそうだったら
良かったのになあと、聖光を見ていてそう思っていた。
なのに私はこの状況をなんとか変えようと動きたかったが
彼の視線がそうさせてくれなかった。
彼も私も何も喋ることが出来ず永い沈黙が続いていた。
部屋の暑さのためかそれとも緊張のためか、汗で濡れた私の大きな胸は
しっとりと柔らかさを帯びているのがわかった。
心臓が激しく暴れて今にも飛び出しそうなぐらい波打ち
その大きな揺れが胸に伝わっているようで
恥ずかしさでさらに緊張した。
いつのまにか彼の視線は真っすぐ私の瞳を捉えていた。
すると意を決したように彼は、ゆっくりと私の顔に
少し青みがかった綺麗な瞳を近付けて
拒むことなど出来ない優しい口調で「メグミ・・・・」と
オーダーしながら激しく私の口唇を食べた。
翌朝、私のボーナスが出たら大きいベッドを買おうと二人で決めた。
保育園でイマちんに緊急の報告業務をすると
彼女は教員室の椅子でぐるぐると回転しながら
「あーーーーあ あーーーーあ」と
何やら大声で叫んでいたので、他の先生に迷惑をかけていた。
でもその後彼女から「良かったね!」とおでこにデコピンされた。
何気ないいつもの風景がすべてきらきらに光っていた。
3年前偶然
疑問だらけで先も見えなかった。
このままでいいのか。
何度も自問自答して
そして気が付いた。
彼がどこのだれで誰を探していようと
もう何の疑問も持たないようにしよう。
夢のような日々を私は拾ったのだ。
拾った物は大切に大切にして
失くさないように奥底に仕舞っておこうとした。
でも
優しさの陰で何かが・・・・
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