第11話:猫カフェデート前編
土曜日の午前中。
その日は太陽の光がサンサンと地上を照らしていて、駅前では汗を拭うサラリーマンや日傘をさす奥様の姿が目立った。
僕、市島晴人は恋人の絹澤海華先輩を駅の改札前で待っていた。
今日は先輩と猫カフェに行く予定だ。
場所は一応ネットで確認済みだが、詳しい場所は先輩が知っているらしい。
少しすると前方から絹澤先輩がやってきた。
「お待たせしました」
「大丈夫ですよ。僕も今来たところですから」
「そうですか」
絹澤先輩は白のブラウスに茶色のプリーツスカートというお堅い印象の服装だった。先輩らしい清楚で知的な雰囲気があって、とっても可愛らしかった。素直な感想を口にする僕である。
「先輩」
「はい」
「可愛いです」
「そうですか」
「僕の為にオシャレして下さってありがとうございます。嬉しいな」
「当然のマナーですよ」
「お堅い人だ。そういう所にも惹かれる」
「甘い言葉には騙されませんよ。ほら、早速行きましょう」
「その前にお昼食べませんか。少し早いですけど」
「お昼、ですか」
「駅前なら僕のオススメの喫茶店があります。どうでしょうか」
「構いませんよ。それでは案内して下さい」
「かしこまりました」
向かったのは徒歩5分にある古き良き行きつけの喫茶店。昔から通ってるお馴染みの場所だ。店長さんとも顔なじみだし。
入口の扉を開けると「カランコロン」と鈴の音が鳴る。アンティークな家具が取り揃えられた店内は落ち着いた印象があり、お客さんも派手派手な人達というよりはご年配の夫婦や奥様方が多い。
普通の高校生には物足りないかもしれないけど、年齢より大人びた性格の絹澤先輩なら気に入ってくれるはずだ。
「わぁ……」
「こういう所好きじゃないですか?」
「いえ、とても素敵です」
「良かった。先輩なら気に入って下さると思っていました」
上手くいったようだ。
取り敢えず席に座り、メニュー表を見る。
お馴染みのナポリタンやオムライス、それからお店こだわりの珈琲など品揃えこそ豊富ではないが、メニューのどれもが自信をもってオススメできる。幼い頃から食べてきた僕はそう確信していた。
絹澤先輩はオムライスを選び、僕はナポリタンを選んだ。他愛ない話をしていると、料理が運ばれてくる。
「すごい……」
「オムライスすごいですか?」
「はい。とっても美味しそうです」
「気に入って下さって本当に良かった」
絹澤先輩はキラキラした瞳でホカホカのオムライスを眺めている。知的でクールな先輩も素敵だけど、年相応の無邪気な先輩もまた素敵だ。どちらも僕の心をこれでもかも魅了してくる。本当に罪深い人だ。
落ち着いた雰囲気の店内で。
僕達は他愛ない話をしながら食事をする。
「先輩はネコさん飼ったことあるんですか?」
「いえ、お家では飼えなくて……」
「そうですか。それは悲しいですね」
「はい。でも猫フォルダがあるので問題ありません」
「ネコさんの画像フォルダ、ですか?」
「はい。インターネットから拾ってきます。SNSでもネコさんの画像をアップしているアカウントをよく見ていて」
「癒しですよね。僕もネコ好きです」
「早くネコさん触りたいです」
「楽しみですね」
「ええ……本当に」
ネコさんの話をしている先輩は本当に幸せそうで。見ているこちらも頬が緩むのだった。
次回、猫カフェ行きます。
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