第10話:眠たくなるまでメッセージを送り合う

「先輩、また明日」

「はい。また明日……」


 絹澤先輩と一緒に下校して。

 分かれ道にやってきた。

 僕と先輩は別々の方向に家がある。

 今日はここでお別れだ。

 名残惜しい気持ちを口にする僕である。


「寂しいですね」

「そうですか」

「先輩は寂しいですか?」

「……さぁ」

「寂しいって言ってください」

「……少しは」


 いつものようにツンケンした態度の絹澤先輩。でも身体をもじもじとさせ、まだ離れたくない様子だ。……本当に可愛い人だな。


「僕は寂しいです」

「……そうですか」

「先輩の口からも聞いていいですか」

「……ぅ」

「顔赤いです。本当に可愛い」

「馬鹿……」


 みるみるうちに顔がゆでダコのように赤く染まっていく絹澤先輩。

 きっと体温も上昇しているのだろう。少しばかり汗ばんだ身体が妖艶さを放っていた。


「夜、メッセージ送ってもいいですか?」

「構いませんよ」

「先輩」

「はい」

「大好きです」

「……っ、はいはい。分かりましたから」

「まじで好き。もう離しません」

「たまには離して欲しものですね」

「先輩が本気で拒絶すれば解放して差し上げますよ。でも先輩は嫌がらないものですから……」

「ここで大声のひとつでも上げましょうか」

「そんな勇気があるんですか? 断言しますけど、先輩は今ここで僕がケダモノになっても抵抗しないと確信しています」

「……変態」

「先輩もね」


 そんな会話をしつつ。

 僕達は別々の帰路を歩くのだった。


※※※


 その夜。

 僕は絹澤先輩にメッセージを送った。


市島晴人『先輩、起きてますか?』PM11:20


 するとすぐに返信が帰ってくる。


絹澤海華『起きてますよ』PM11:21


市島晴人『すみません、寝るところでしたか?』PM11:21


 時間も時間だから寝る前だったかもしれない。少し迷惑だったかなと今さらながら思う僕だったが。


絹澤海華『ベッドには入っていますが、まだ寝ませんよ』PM11:22


市島晴人『眠たくないのですか?』PM11:22


絹澤海華『目が冴えてしまって』PM:11:22


市島晴人『では、眠れるまでお話しませんか?』PM11:23


絹澤海華『いいですよ』PM11:23


 僕達はメッセージアプリを通じて会話をする。


市島晴人『先輩は好きな動物いますか?』

PM11:31


絹澤海華『ネコさん、ですかね』PM11:32


市島晴人『ネコさん可愛いですよね』

PM11:32


絹澤海華『はい』PM11:33


絹澤海華『(可愛い猫の画像)』PM:11:33


絹澤海華『ネコ』PM:11:33


 送られてきたのは可愛らしいマンチカンの画像。つぶらな瞳に短い脚が可愛らしい。

 僕はニコニコしながらこう返信した。


市島晴人『可愛い……』PM11:34


絹澤海華『(可愛い猫の画像その2)』

PM11:36


絹澤海華『(可愛い猫の画像その3)』

PM11:36


絹澤海華『これも』PM11:36


 今度はふてぶてしい顔のトラネコとふわっふわのペルシャ猫の画像が送られてきた。

 猫フォルダでもあるのだろうか。これは相当な猫好きさんと見た。


市島晴人『ネコさん好きなんですね』PM11:37


絹澤海華『はい』PM:11:37


市島晴人『今度一緒に見に行きましょう。

ネコさん』PM11:37


絹澤海華『行きたい猫カフェがあります』

PM11:38


市島晴人『では、今度の土曜日にでも』

PM11:38


絹澤海華『はい』PM11:38


市島晴人『先輩』PM11:39


絹澤海華『はい』PM11:39


市島晴人『大好きです』PM11:40


絹澤海華『はい』PM11:51


 僕達は土曜日にデートする約束をした。

 猫カフェか。行ってみたかったんだよな。

 楽しみに思いながら、僕達はお互いが眠たくなるまでメッセージのやり取りを交わすのだった。






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