第2話 死刑になる村
「君は、死刑だよ」
いきなりの言葉に目を丸くするマリに、村長は続けていった
「死にたくなければ、誰かを死刑にしなさい。そうすれば、君は死刑じゃなくなる」
なんで? という言葉を放つのも面倒くさくなったマリは他に死刑にできそうな人を探しに行く。
「まあ、大概のことで死刑にできるさ」
この村では死刑が軽い。そして誰もが裁判官だ。いや、裁判が行われてるわけではないので、裁判官は正しくない。
死刑を宣告されると、赤い札を付けられる。それを、ああだこうだと人に押し付けていく。毎日何百という死刑が宣告されながら、ここ100年の間に執行された死刑はたったの2度らしい。
「君、珍しい服を着ているね。死刑だよ」
「もう、死刑になってるよ」
赤い札を見せると、死刑を宣告してきた人がため息をつく
「参ったな。もう死刑宣告されて3日経つんだ。死刑になってしまう」
「3日経つとどうなるの?」
「この札が青色に変わる。そうしたら、刑は執行されるんだ。青色になった札はもう、誰にも押し付けられない」
「怖いね。この村から逃げたらいいじゃない」
そう言うと、もう3日になる男がまたため息をつく
「逃げたら、死刑なんだ」
なんにも始まらないし終わらない。
徐々に人が減っているらしいこの村に、未来はないと思った。
マリは赤い札をポイっと捨てて、村を出た。
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