第2話 作品が埋もれている!


「昨日、ツカッラーで相互での作品フォローは良くないって話が流れてきたんだけど」


 詠代よむよは口を尖らせながら言った。


 その呟きは僕も見た。

 つまり、詠代は僕の昨日勧めたことが良くないことじゃないのって言いたいんだよね?


 それにしても、周りの目線が気になる。

 僕はキョロキョロしながら話を聞いていた。


「聞いてるの!?」

「…… もちろん、聞いているよ」

「じゃあ、どうして周りを見てるのよ?」


 だって、詠代は美人でクラスの人気者。対して、僕はクラスの日陰者。

 ほら、あいつだれ? って声が聞こえる。

 今まで詠代と登校することはなかったし、頻繁に話すこともなかった。詠代が『カクとヨム』を始めてからだ。


 でも、今は詠代の疑問に答えてあげなくちゃ。


「僕らの使っている『カクとヨム』のサイトに投稿されている小説って、どのくらいあるか知っている?」

「知らないわ。調べたこともないし」

「そうだよね。普通は調べない。でも、調べている人も中にはいるんだ。その調べた人によると、約二十一万の作品が投稿されているらしいよ」

「二十一万!? そんなに投稿されているの?」

「『カクとヨム』よりも上がいる。最大サイトの『小説家だぜ』は投稿作品数は約六十八万だよ」

「六十八万!?」


 仰け反って驚いている。

 良いリアクションだ。


「ジャンル分けで言うと、『カクとヨム』では異世界ファンタジーが多い。それはどこのサイトでも同じ傾向だよ」

「やっぱり異世界作品は人気よね。私も描世も異世界作品だしね」

「ちなみに僕はツカッラーで自分の作品を宣伝してるよ。それに、昨日も話したけど、読まれるために読んでいる。この行動は全部、僕の作品が埋もれないためなんだよ」

「埋もれる?」

「『カクとヨム』のファンタジー数は約四万。極端に言って、僕の作品がその中から選ばれる可能性は約四万分の一。だから、僕は埋もれないために頑張っているんだ」

「なるほど。そういうことなのね。私の作品は埋もれているから、読まれないのね」

「僕たちは読んでもらうためのアピールが必要なんだよ。読むだけの人はやっぱりランキング上位を見る傾向が強いと思うんだよね。その傾向に対抗しないといけない。だから、相互がどうとか、一切気にする必要がないよ。面白いから読むし、面白いから読まれるだけなんだから」

「そうよね。分かったわ。気にしない。ありがとう、描世かくぜ!」


 詠代はニッコリと笑った。

 やっぱり可愛いなと思う。

 僕は詠代の笑顔に見惚れた。


「何? 私の顔をじっと見て?」

「み、見てないよ!!」

「本当? キョドってるわよ?」

「いや、その…… また何か困ったら、僕が教えるよ」

「当然そのつもりよ。ほら、着いたわ。友だちがいるから先に行くわね」


 詠代は僕を振り返らずにキラキラ輝く集団に混じった。


 その集団を見て思う。

 僕もいつか君の横を堂々と歩きたいな。


















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カクゼとヨムヨの創作日常~ブクマや評価はどうしたら増えるの? 底辺から駆け上がりたい若者たち~ 川凪アリス @koneka

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