第18話 『夢想』

「やっほぉ〜! オルヴァイスの幹部が一人! 『夢想』ちゃん〜登場ッ!」

「夢想……!」


少女、夢想は剣を掲げると、そう言って名乗りを上げた。ユウゴとルナは直ぐにデバイス装備すると、起動して武器を構える。ユウゴはルナを庇うように前に出ると、夢想に向かって笑みを浮かべた。


「拠点めちゃくちゃにされて最悪だよ。折角二人で平和に仲睦まじく暮らしてたってのにさぁ」

「あれ〜? やっぱりお二人ってそんな感じぃ?」


二人で暮らしていた、その言葉にルナは一瞬戸惑う。しかし、ユウゴが何故そう言ったのか、すぐに察する。シュウはまだ拠点から出てきていないので、中にはもう狙うべき存在がない、そう思わせて拠点の破壊を防ごうとしているのだろう。幸いシュウは面が割れておらず、相手はルナを守っているのはユウゴ一人だと思っているのかもしれない。


「というかぁ、こっちは姫神と撃砕やれられて、もうぷんぷんのおこおこなんだよねぇ〜! こりゃそこにいる彼女渡して貰わないと、ちょっと怒り収まらないかなぁ」

「へぇ、なら奪ってみなよ。俺は渡す気一切ないからさ」

「あらぁ〜! 姫を守るナイト様? かっくいぃ〜!」


夢想の意識は完全にユウゴとルナに向いている。拠点の方へ興味は失っているようで、まず思惑通りにことが進んでいるだろう。


ユウゴは先手必勝と言わんばかりに、夢想に向かって走り出した。言わずとも援護は任せている、それを感じて頷くとルナも銃を構えた。

ユウゴはまずは相手の力量を図るために一撃目を叩き込んだ。薙ぎ払うように切りつけたが、それは夢想の剣によって受け止められる。ウィルデバイスで強化されているとしても、小さい体の割に力が強かった。拮抗したせめぎあいの中、ルナの放った弾丸が夢想の服を掠めた。


「(外した……!)」


また姫神の時のようにユウゴに当たるのではないか、そう考えると少し弱気になってしまった。ユウゴは一度剣を受け流し後退すると、相手の隙を狙って睨んでいる。夢想は余裕な様子で笑っており、こちらが仕掛けるのを待っているようだった。その強者の立ち振る舞いに、不安が募る。


「ルナちゃん! 俺に当ててもいい、そんぐらいの気持ちでいいよ!」

「でも……!」

「俺は大丈夫!」


ルナが何故外したのか察したのか、ユウゴはそう言って一度ルナの方を向いた。戸惑いつつもそれに頷くと、ルナは気を入れ直して銃口を夢想に向ける。

まず狙うは──頭だ。報告は出来なかったが、ルナは自身の能力がひとつ分かった。ユウゴの時のように最初からあからさまに頭を狙わない方がいい、そう思いまずは胸元に照準を合わせる。

ユウゴが夢想に向かって再び走り出すと、ルナは彼が接触する前にまず夢想の胸元に発砲した。弾丸は真っ直ぐ夢想へ向かう、そしてそれを剣で弾いた夢想は、ユウゴへの反応が少し遅れた。


「──おうっとッ!」


しかし、すぐに素早い動きでユウゴの剣を受け止めると、夢想はニヤリと笑う。ユウゴが力で押そうと腕力を強めると、夢想は──足でユウゴの膝を蹴りつけた。痛みに顔を顰めたユウゴだったが、引くことをはせずに力を込め続ける。すると夢想は一度ユウゴの剣を受け流すと、大きく距離を取った。

遠距離戦ならルナの方が得意だ。剣はここまで届かない。故にユウゴが抑えている間に、ルナは安全な状態で集中して撃つことが出来た。


ルナの弾丸をぴょんぴょんと新体操のように跳ねて避けると、夢想は剣を上に向かって突き出し掲げた。


「貴女ずるいね〜! だから、ちょっと本気だそうか──なァッ!!」

「──ルナちゃんッ!」


振りかぶられた夢想の剣は──長く伸びた。

そしてまるで鞭のようにルナへ向かってしなって飛んでくる。すぐに刀身を撃って対応するが、勢いが強すぎて軌道を逸らせない。ユウゴのように片手剣だと思っていた夢想の剣は、蛇腹剣だったのだ。そのまま体を真っ二つに切り裂かれる、そう思って上に大きく飛んだ。足の下を刃が通過して、ルナは夢想から更に距離を取る。


しかし、追撃が早い。ルナを先に無力化した方がいいと思ったのだろう、夢想はまたルナに向かって蛇腹剣を振るった。姫神と言い、撃砕と言い、彼女と言い、オルヴァイスの目的はルナを捕らえることであるはずだが、本当は殺す気では無いのか。そう思わせるほど死を覚悟するような攻撃ばかりで、ルナはもう心臓が飛び出そうであった。


「(──そうだ、この作戦なら……!)」


そして、ルナの弾丸が肩口を狙うが──全く違う方向に飛ぶ。今度は足を狙い、外して、胸を狙い、外して。命中率が格段に落ちて、ユウゴは焦りに一度ルナの側まで後退した。


「集中して! 怖くない!」

「わ、分かってるわよ……!」


その様子を見て、夢想はにたりと不敵に笑った。ルナは極度の緊張状態に上手く撃てなくなったようだった。これなら警戒せずとも、ユウゴに集中すればいい。そう思って、夢想はユウゴへ向けて蛇腹剣を振りかぶった。しかし、ユウゴは薙ぎ払われたそれを剣で受けると、大きく弾いた。その衝撃でよろめいた夢想の腹に──一太刀入れたのだ。


「──ぅあ゙ッ!!」


吹き出した血に、夢想は目を見開いた。

しかし、ユウゴは攻撃が当たったことに一瞬安堵して気を抜いてしまった。その隙を夢想が逃す訳もなく、蛇腹剣がユウゴの右肩を斬りつける。血が広がる感覚に顔を顰めると、ユウゴは大きく飛び退き夢想から距離を取った。利き腕をやられたことに僅かに焦りながらも、痛みを落ち着けるように短く息を吐く。


「ユウゴ!」

「問題ない、まだ戦えるよ!」


ユウゴが剣を構えて強く握ると、肩が激しく痛んだ。しかしルナが不安定な今、止まるわけにはいかない。そう思っていると、夢想は唐突に剣を下ろした。それに驚いていると、ユウゴに指先を向けたのだ。


そして──


「何を──」


────パンッ!!


夢想がフィンガースナップをした時、ユウゴの足は何かに貫かれた。唐突の出来事に思わず膝をつきそうになったユウゴは、すぐに体制を立て直すと夢想を見つめる。そして、一回、二回と指を鳴らすと、その度にユウゴの体が何かに貫かれている。


「な、なんの能力?! デバイスって二個も武器を作れるの?!」

「いや、無理だ! それに……そうだったとしても何の武器なのか……!」


まるで指先から弾丸を放ってるかのように、体が貫かれる。唐突な出来事にルナもユウゴも戸惑い、それに対して夢想は楽しげに笑っている。


「夢想ちゃんは凄いのだ! デバイス使いが武器二つも持てないなんて、誰が決めたのかなぁ?」

「そんなの体が耐え切れるはず……!」

「にゃははっ! まだまだいくよ〜!」


今度は蛇腹剣でルナを狙うと、ルナは刃に弾丸を放つ。だが、それも全く当たらずに、ルナは避けようとするが足を斬りつけられてしまった。僅かに動きが鈍るが、二撃目が来たので大きく飛び退いて間一髪で避けることが出来る。傷を負ってもデバイスをつけている間は自然治癒力が高くなっている。徐々に塞がることを祈りつつ、ルナは銃を構えた。


「くそ、どうなってるんだ!」

「はい! はい! はぁいっ!」


夢想が指を三回鳴らせば、ユウゴの体を三回弾丸のようなものが貫通した。痛みをどうにか堪えるが、このままで穴だらけになってしまうだろう。本来なら立っていることすら奇跡のような状況だが、それでもユウゴはルナを守るように立ち続けていた。


そしてルナが夢想の頭部に向かって銃口を向ける。夢想はそれを察したが、ルナの弾が当たることは無いだろう。そう思って再びユウゴに指を向けると──ぐらり、頭が揺れたのだ。


「────ガぁッ?!」


火傷を負ったような激痛、一瞬の出来事に意識が朦朧とする。夢想は、ただただ油断していたのだ。それが──ルナの思惑通りだとは知らずに。


緊張して命中率が下がったように見せるため、ルナは今までわざと弾を外していた。焦っているような演技をして、この機会を待っていたのだ。先程夢想の意識は完全にユウゴだけにあった。


「(よし、これで……!)」


ルナと夢想の目と目が合う。

すると────瞬きの間に、ルナは病室にいた。


ベッドには一人の少年が横になっており、傍に置いている椅子に、少年の手を握る少女が座っていた。少女の顔を確認すれば──やはり、夢想だ。彼女は少年の弱々しい呼吸を音を聞きながら、神に祈っていた。


「お願い……弟を助けて……神様……!」

「リ、リア……」

「ライラ!」


ライラと呼ばれた少年は、夢想の名を呼んだ。彼の意識が戻ったことに安心した夢想、リリアは安心したようにその顔を覗き込んでいる。


「お医者様、なんて……?」

「……大丈夫、大丈夫だって! 手術すれば治るって言ってたよ!」

「そ、う……良かった……」


ライラのこぼした笑みに、リリアも笑い返す。彼は病気だが、リリアの願いが叶い手術をすれば助かるようだ。敵のことでありながらも、ルナはそれを見て少し安心していた。

そして、シーンが変わる。リリアは医師と話をしているようだった。まだ幼いにも関わらず、医師と話をしているのは彼女だけだった。もしかしたら保護者となる人が居ないのではないか、そう思っていると、医師は首を横に振った。


「大変申し訳にくいですが……末期のガンです」

「──ッ!! ……あ、と……何年、生きられますか?」

「……三ヶ月程だと思われます」


リリアの言葉は、嘘だったのだ。

あまりの絶望に言葉すら出ないのか、リリアはただただ俯いていた。悔しそうに、強く拳を握って。


またシーンが変わる。リリアは小さい体でライラをおぶりながら、街中を歩いていた。彼女らには恐らく保護者が居ない。そのせいで治療費すら払えなかったのだろう。このままライラは死ぬかもしれない。そう思うと、ルナは胸を痛めた。


その時──リリアの前に一人の男性が道を塞いだ。


顔を上げたリリアを見て、男性は彼女を見下ろしている。用があるのだろうか、リリアとライラを見てにこりと微笑んだ。


「助けてあげようか?」

「……いえ、大丈夫です……」

「どんな病も治す、魔法をかけてあげよう」


それを聞いて、リリアは驚きに目を見開いた。弟がもう治らない病気だと知っている。それに対して警戒するよりも先ず、治すという言葉に目を輝かせたのだ。


「な、何でもします! 弟を助けて! お願い!」

「ああ、助けようとも──私に、従うのであれば」


男性は緋色の瞳を僅かに細めた。怪しげな人物だったが、リリアは迷いもせずにそれに頷いた。


そして、再びシーンが変わる。

ウィルデバイスを装備したリリアが、蛇腹剣を振るっている。そしてその隣には、デバイスで生成されたライフルを手に持つライラが立っていた。今までのぐったりした力ない様子では一切なく、とても元気そうで、健康そのものといった表情をしている。


「本当にこれのおかげで元気になったんだね! やっぱりボスは凄い!」

「これでずっと一緒だね。リリア……ううん、もう『夢想』だね」

「一緒! ずっと一緒だよ! ライラ! じゃなくて、『寄生』かあ!」


リリアとライラは抱きしめ合った。

二人は幸せそうに笑い、


ルナは──現実に戻った。


すぐに戦闘に集中すると、ルナは遠くの方へ視線を向けた。推測が正しければ、この場にはあと一人、戦闘に参加している人物がいる。


「ユウゴ! あと一人、ライフルを使うデバイス使いがここにいる!」

「──分かった、探す!」


ユウゴは急なルナの言葉に驚きつつも、頷いた。それを聞いた夢想は明らかに動揺していた。的確に仕掛けの種が当てられて、驚きを隠せなかったのだろう。その様子を見ていたのか、遠くの物陰から人が出てきた。


「もう隠せない。僕の名は『寄生』……ここで倒させてもらう」

「この子が撃ってたのか……! めっちゃ痛かったし、お返しさせてもらうよ!」

「夢想! 守って!」


寄生はライフルを構えると、立ち撃ちでルナを狙ってきた。撃たれた弾丸を避けると、ルナも相手に向かって発砲する。それを見た夢想はその弾を剣で弾き、そのまま伸びた剣をルナに向かって斬りつけた。

それはルナに接触する前に、ユウゴの剣に受け止められる。安心したルナは、夢想に向かって銃を連発する。


「寄生! 隠れてて、前に出ちゃだ──! グウ──ッ! ぁあ゙ッ!!」

「夢想!」


被弾した夢想を心配した寄生はそこに意識が向いた。その隙に、寄生に向かって弾を撃つと、今度は夢想の意識がそこに向く。お互いを心配して、まともに戦えていないのだ。

しかし、相手にも譲れないものがある。寄生は足を踏ん張ると、ユウゴに銃口を向けた。もう銃弾が五発も命中しているのだ、それも、弾の威力はルナよりも強いように見える。ルナはユウゴを傷つけられる前にと寄生に集中するが、すぐに夢想が剣を振るう。


「ぐゥッ──!」


どうにか右腕を掠った程度で被害を防いだが、鋭い痛みに一度動きが止まった。だが、そのまま寄生に向かって弾丸を放つ。それは──真っ直ぐ寄生の頭に当たる。血が吹き出した彼を見て、ルナは歯を食いしばる。



…………



リリア、ありがとう。

これでずっと一緒だよ!


訓練は大変だけど、僕上達してきたんじゃないかな?

天国のお父さんとお母さんも、喜んでくれるよね!


でもやっぱりリリアには叶わないや。

リリアは何時でも強くて、優しくて。

僕、大好きだよ。


もうリリアが居ないと僕、生きていけないや。

ずっと一緒にいようね。


大好き。

僕のリリア。



…………



流れてきたビジョンに僅かに足を止めるが、ルナはそれでも銃を構え続けた。このまま戦っていいのか、そんな迷いもありながら、しかし相手はレアートを殺した組織の一員である。それに腹の奥底で煮えたぎる憤怒を感じ、ルナは歯を食いしばり寄生に弾丸を撃ち込んだ。


「ぁ゙ぁあッ!! ──くそォっ、こんなので!!」

「まずっ……ユウゴ!」


寄生の銃口の向かう先が──ユウゴの左胸であると分かった。いくら立ち撃ちとはいえ、今まで寄生のその正確な射撃能力はもう思う存分に知った。やられる、そう思ってルナは足に全ての力を込めてユウゴに接近した。


ユウゴを突き飛ばすと────ルナの体を、弾丸が貫通する。


右肩を撃ち抜かれ、急所を外したことに安堵した。

そのまま、ルナはユウゴと共に地面に倒れ込む。


「──ルナ、ちゃん……!」

「ぃッ……ゔ、この、程度──ッ!!」


強がって立ち上がるが、右腕も夢想に斬られ、利き腕はもうボロボロだ。左をメインに戦うしかない、そう思いながらルナは寄生に弾丸を撃った。

すると、ユウゴはその弾丸を追うように寄生に接近して、ルナの弾丸を避けた瞬間を、追撃した。ユウゴの今までとは違う鋭い視線を受け、寄生は目を見開いた。


──殺される。


寄生は直感的にそう察し、強く目を瞑る。

それを見て、夢想は咄嗟に庇おうと寄生とユウゴの間に入った。そして、ユウゴは振りかぶった剣で、流れるようにターゲットを寄生から夢想へと変えた。


「許さないよ」

「──ッ?!!」


──ざくり。

隙だらけの夢想の胸に、ユウゴの剣が突き刺さった。

そのままユウゴは傷口を広げるように、手首を捻ってぐりぐりと刃を動かす。


「──げほっ、かぽ……ッ!!」

「……リリアッ!!」


地面に倒れ込んだ夢想を追うようにさらに剣を突き立てると、ユウゴは彼女の体を踏んで剣を抜いた。そして、首に向かって剣を振り下ろすと──夢想の体が、灰色に染る。


「リリア、リリア……リリアッ!!」


夢想に駆け寄った寄生は、目を見開いたまま動かない彼女の体を支えた。しかし、彼が何度呼んでも夢想は返事を返さない。口から溢れた血が流れ、夢想は苦しそうに寄生に手を伸ばした。


「死なないで! 置いていかないでよ!」


その様子を見ていたルナは──手出しが出来なかった。

二人の過去を見た。

何があったか知っている。

故に、殺そうという気が起きなかったのだ。


しかし、寄生はルナとユウゴが何かをする前に体が灰の色に染まり出した。夢想を抱えながら絶叫すると、そのまま体がボロボロと崩れだしている。


「嫌だ……嫌だ、嫌だァ……ッ!!」


そのまま二人の体は崩れていく。

混じるように灰となって地面に落ちた二人は、そのまま風に乗って消えてしまった。


ルナ達は──勝利したのだ。


「デバイスとリンクした感情がおかしくなったのかな……うぐ……ッ、しかし、随分とやられた」

「ユウゴ、大丈夫?」

「ルナちゃんこそ。……どうかした?」


ルナはユウゴを支えるが、ユウゴは彼女の異変に気づいたようだった。夢想の記憶を見たせいで、ルナは素直に喜べなかった。これが赤毛の女性の言っていたルナの才能だと言うのなら、無かった方が良かった。そう思ってしまう。それ程までに、胸が締め付けられ、辛かった。


二人はただ幸せに生きたかっただけだ。

あのまま終わりを迎えれば幸せだった、そうは言わないが、また別に道があったのではないか。

恐らく、あの声をかけた男が二人を歪めたのだ。

それに、怒りを感じる。


「ううん。なんでもない」

「……あっ! シュウのこと忘れてた!」

「そうだった、拠点は崩れてないと思うけど……!」


二人で入口の方を見れば、ベコベコに凹んでいて上手く開かなかった。ユウゴが力任せにそれを剥がせば、勢いよく開く。階段のところにシュウの姿はなく、まだ部屋の方にいるのかもしれない。


「シュウ〜? 終わったよー!」


ユウゴの声が聞こえたのか、シュウは共有スペースの方からひとつのカバンを持って出てきた。そしてルナとユウゴが傷だらけなのを見て、僅かに動揺したように見えた。心配している、そうルナは感じた。


「シュウがすぐ逃げないから、俺とルナちゃんの関係で要らぬ誤解を相手がしちゃったじゃん!」

「拠点にはお前たちに関する詳しい資料がある。それを持ち出す必要があった」

「なぁるほど、だから戻っちゃったわけだ」


施設の中を確認すれば、物がいくつも床に落ちていて、棚は倒れてまるで大地震のあとのようだった。これを全て片付けるのは骨が折れるだろう。そう思っていると、ルナの考えを見透かしたのかシュウを首を横に振った。


「位置が相手に知られた以上、もうここは捨てる。すぐに予備の拠点に向かうぞ」

「予備の拠点とかあるの?」

「こういった事態に備えて用意している。ここより狭いが文句は言うなよ。必要なものだけまとめろ、早く出るぞ」


シュウも一度室内へ戻ると、自室の方へ向かった。ルナとユウゴもその後を追って、荷物をまとめることになった。

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