02
学校の帰り、友達とふざけ合ったりしながら帰路に就く。
友達の一人が、声をあげて電柱の張り紙を指差した。花火の写真が使われたそれは、夏休みに入ってすぐにある縁日のポスターだった。
親に小遣いを頼むか、一緒に行ってねだるか、どちらがいいかと悩みだす友達らに混ざらず、僕はポスターを見つめる。縁日をする場所を確認すると、近所の神社だった。
不意に、聴こえないはずの鈴の音が鳴った。
誘ったら彼女は来るだろうか。もうクラスメイトたちに誘われているかもしれない。それとも、歳の近い男子と行くのだろうか。
そんなことを考えたら、知らずランドセルを握る手にぎゅっと力が入る。楽しみが増えて喜ぶ友達らと違い、僕は気がかりに気付くことになった。
友達と別れ、家の近くまで来ると、いつもの角で舞桜とばったり会った。
「おかえり。早いね」
「ただいま。しょーくんが遊びすぎてたんじゃない?」
そんなことはない、と答えたけど、裏道探しと称していつもと違う道を通ったから少し遅いかもしれなかった。
当たり前に隣で歩き出す舞桜。彼女も友達付き合いがあるから、帰りまで一緒になることは珍しい。彼女の帰りが遅くなる日は友達が理由じゃない可能性に気付いて、内心複雑になる。
「こんな帰り早いなんて、舞桜姉モテないの?」
「なっ、そんなことありませんー! ……たぶん」
反射的に否定をしたものの、舞桜は最後は自信なさげに一言を添える。どうやら今のところは杞憂のようだ。
「そういえば、もうすぐ神社でお祭りするって。舞桜姉行く?」
誘いとも質問とも取れる曖昧な問いに、彼女はぴくり、と一瞬の
「そーなんだ。……えっと、来年は受験だし、夏休みは真面目に勉強しようかなって」
ぎこちない笑みでそう返す舞桜に、それ以上の言及はできなかった。彼女が、神社の縁日に反応したことは確かだ。
「意外と真面目なんだね。舞桜姉」
「意外と、は余計ですー」
茶化して縁日の件を流したあとは、いつもの舞桜だった。家の前に着くと、舞桜は彼女の家へと帰っていき、僕も自分の家の玄関のドアを開けた。
リビングに行くと、洗濯物を畳む母親がおかえりと迎えてくれた。その母親に何気なく、今日の出来事を報告する。
「舞桜姉、神社のお祭り行かないって」
「そ、そう。舞桜ちゃんも近所の小さなお祭りより、もっと若い子向けのところに遊びに行きたいでしょうね」
母親の
麦茶と一緒におやつを食べてから、自分の部屋へと上がる。ランドセルを投げ置いて、ベッドにぼふり、と身を
思い返してみると、夏祭りに行く舞桜を見たことがなかった。僕が生まれてから、このかた彼女の浴衣姿を見たことがない。
別に浴衣でないといけない訳ではないが、舞桜の性格を考えると浴衣を着たがるはずだ。イベントごとには全力投球で、ハロウィンには子供の自分よりガチな仮装をするし、クリスマスにはサンタ服でプレゼントを渡された。毎年そうなのだから、彼女の行動パターンは解る。
もっと早くにこの違和感に気付いてもよかったのかもしれないが、舞桜が幼い頃はイベントを楽しみにするあまり知恵熱を出したり、風邪をひいたりして、間が悪かったからそのせいだとばかり思っていた。
理由に心当たりがない訳じゃない。
部屋の本棚の一番下の段にあるアルバムを一冊取り出す。ぱらぱらと
「約束、覚えてたのか」
ぽつり、と零した呟きは、窓の外の
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