第5話 不穏な空気。
私の兄はかっこいい。学園内だけではなく、このあたりにいる男性のなかでも一番かっこいい。それに加えて、優しさ、面白さも兼ねそろえている。いつか私もこんな男性に一生を捧げたいと思いを馳せる。
兄にとって初めての学校だったから馴染めるのか不安だったけど、兄の話を聞く限り友達ができたとか。いつか兄に代わってお礼をしたいと思う。
一条悠の入学式は無事に終わり、今日は最初の休日を過ごしている。結局、あの試合の賭けで一人勝ちをした水樹は五万ポイントが約二十倍になり一儲けしたようだ。奴には絶対飯を奢らせよう。
そして今、俺は妹と一緒の大型のショッピングモールにいる。今朝、さくらは俺とデートがしたいと言ってきた。俺も特にやることがなかったので快諾したが、少し後悔している。
さくらはかれこれ一時間ほど試着室と洋服売り場を往復している。まさにファッションショー。
「これはどうかな?似合ってる?」
「今までのなかで一番似合ってるよ」
さくらが試着しているのは白のワンピース。やはり、清楚な感じがする洋服が彼女には似合っているようだ。
さくらも俺が疲れているのを感じたのか何を買うか決めるようだ。
「気に入ったものはすべて俺が買ってあげるから、好きなの選びな」
一応、この間まで仕事して得たお金は余っているのである程度は買い与えることができる。その言葉を聞いた妹は嬉しそうにして何を買うか真剣に選んでいた。
さくらの買い物が終わったあとはレストランで食事をした。二人で他愛もない話で盛り上がりながら、食事を楽しんだ。
食事中に女性は俺に、男性はさくらに声をかけてきた。男女二人が一緒に食事しているのにナンパする勇気、俺は素直に称賛していた。
食事も終わり、二人で仲良く家に向かって帰っていると、路地裏から助けてと女性の声が聞こえたので急いで路地裏に駆け付ける。
そこには男性三人が女性を囲み襲おうとしてる場面だった。俺はすぐに声をかけた。
「お前たち、そこで何をやっている」
男たちは突然の声に驚き、はっと俺のいる方を見た。俺とさくらを見て気持ち悪い笑みを浮かべながら言った。
「なんだ?お前も混ざりたいのか?そっちの女の子をこちらに寄越せば混ぜてやるよ」と笑っていた。
「冗談は顔だけにしとけ。お前らのグループに混ざると、俺の男としての価値が下がる」
「……てめぇ!イケメンだからっていい気になるなよ」
「自分の顔が醜いからって俺を妬むな。キモいぞ」
なかなか俺もいい性格しているようだ。
「てめぇ、俺らをおちょくるのもいい加減に……しろ!」と言って男三人で殴り掛かってきた。
襲われていた女性は危ないと言って目を塞いだ。次に目を開けるとすでに決着がついていた。
大丈夫でしたかと声をかけると彼女は涙ぐみながら俺たちに感謝を伝えた。
「ありがとうございました。一条くんたちのおかげでケガもなかったです」
俺のことを知っているということは、おそらく学園の生徒だろう。
「私の名前は清水朱莉です。一条くんたちと同じ第一学園の生徒です」
綺麗な長い茶髪の可愛い女の子はそう言った。
それにしてもこの雰囲気……どこかで見た記憶がある。思い出せそうで思い出せない。
襲われていた経緯を聞いてみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます