第3話 招き猫


お初にお目にかかりますにゃ。


この青果店で、しがない招き猫の付喪神なんぞしている「たまこ」ですにゃ。


「たまこ」なんて名前ですが、本当は雄猫なのにゃ。


それなのに、ここのご主人…。


自分が女の子だからって、幼少の頃に「たまこ」って雌の名前を付けてしまったのにゃ。



そんな町でも有名な美人で働き者なんだけども…。


まぁ、要はちょっと抜けたご主人なのにゃ。




普段はお店にお客さんを[招く]のが、たまこのお仕事ですにゃ。



招き猫の本領発揮…と、言ったところかにゃ?



お陰でお店はいつでも大繁盛!


でも…たまに変なやつも招いてしまうのにゃ。




―――ほら、また来た。


ご主人に交際を申し込む、不届者にゃ。


コイツが初めてじゃない。


もう何人も、何人も…こうして交際を求めてやってくる。


ご主人は…たまこのものなのに……。


ご主人が美人すぎると…付喪神も苦労するにゃ。



だから、こう言う奴が来た時は、たまこが何とか追い出しているのにゃ。


人間の男なんて、あっという間にやっつけられるからにゃ。



大丈夫にゃ、ご主人。


貴女は、たまこが御守りしますのにゃ。





――そのために……。





今日も少し身体をお借りしますのにゃ。






アイツに言ってやるのにゃ。





優しくて、何も言えない…ご主人のために………








【失せろ、目障りな人間め。コイツは私の……神のものだ……。】









――ほら、あっという間に逃げていったにゃ。


―――化け物?


付喪神に向かって失礼な奴にゃ……。


やっぱり人間の男はロクな奴が居ないのにゃ。


だから、ご主人は……たまこが守ってあげるのにゃ。






そういえば……最近、ご主人に【化け猫憑き】の噂がたってるらしいのにゃ。


そのせいかお店にはあまり人の出入りが無くなってきたのにゃ。


お店に人が来ない。と、ご主人は悩んでいるようにゃけど……。


変な奴が出入りしなくなって、たまことしては大満足で、安心にゃ。


「招き猫のくせにそれでいいのか?」って他の付喪神には言われるけど、気にしないのにゃ。


だって、これでずっとご主人の側にいられる……。




―――大丈夫にゃ!ご主人!


お店に人が来なくたって、ご主人はひとりぼっちなんかじゃないのにゃ。







だって………



………たまこがずーっと、



…………ご主人に………








―――――憑いてるのにゃ。



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