第9話 契約


 「くっ!」

ディノは苦痛により、覆っていた鎧は消え、槍はネックレスへと戻っていった。

そして、そのまま、うずくまってしまった。

 「ディノさん!」

 「お兄ちゃん!」

二人が慌てて、ディノに駆け寄る。

 「大丈夫。カラーがきてくれれば、どうにかなる。」

そういうと脂汗を掻きながらも、左手に刺さった剣をゆっくりと抜いていく。

抜いた剣を放りだすと剣は灰と化し、消えていった。

剣が抜き終わったのを確認したクリスは自分の服の袖をやぶり、ディノの傷口を止血した。

が、剣の刺さっていた部分から、段々とディノの体が黒々と変色していった。

 「何これ。」

 「どうやら、呪いの類だったらしいな・・・。」

顔面蒼白のディノがそういって、そのまま倒れこんでしまう。

 「ディノさん!ディノさん!」

 「はやく・・・カラーを・・・。」

 「待ってて、探してくる。」

カラーを探すのをピットにまかせ、クリスはディノを安全な場所に運ぶために肩を貸す。

 クリス「とにかく、あそこへ。」

わらの積み上げている場所へと向かい、そこへ寝かせた。


 しばらくして、ピットがカラーを連れて戻ってきた。

その頃には左腕全体が、黒ずんでいた。

 「連れてきたよ。」

ピットが息も絶え絶えにいった。

 「もう大丈夫。って、なによこれ!」

状態の異常に驚くカラーはすぐにディノの治療を始める。が、

 「だめだわ、私の力だけじゃ進行を食い止めるくらいしかできない。」

 「そんな、じゃあ、どうしたらいいの。」

 「より強い魔力があれば、なんとかできるかもしれないけど、魔力を持っているディノがこれじゃあ。」

 「お兄ちゃん死んじゃうの?いやだよそんなの・・・。」

涙目に訴えるピット。

その時、ディノが微かな声で言った。

 「契約。」

 「えっ、契約?確かに契約すれば、魔力も上がるけど、ディノの体じゃ無理よ。」

 「違う。俺じゃなくて、クリスだ。」

 「なに言ってるのよ。契約にはディノの持っている契約石のような物がないとだめよ。」

 「契約するものなら、クリスの中にある。」

 「もしかして、宝玉?駄目よ、どうやったら宝玉の力を使えるかわからないのに。」

 「大丈夫。宝玉には意思のようなものがあるって言っただろう。願えば、答えてくれる。」

ディノ精一杯の笑顔でクリスに言った。

 「わかった。やってみる。お願いカラー。」

 「わかったわ。方法を教えるわ。方法は簡単。お互いの魔力を出して、お互いの名前を唱えればいいの。」

 「わかったわ。」

そういうとクリスは目をつぶって祈った。

 (お願い、ディノを助けたいの。力を貸して!)

段々と体の内側から魔力があふれてきた。

 「これならいけるわ。契約開始。」

カラーも魔力を出し始める。

お互いが見つめあい、声を出す。

 「カラドリアス」

 「クリス」

 「「われ、ここに契約を結ぶ。」」

契約を結んだ瞬間、クリスを光が包んでいき、白いドレスになった。

 「じゃあ、いくわよ。」

 「はい。」

自然と出てきた言葉を発する。

 「ホーリーブレス。」

するとクリスから光が放たれ、ディノを包んでいく。

そして、その光はディノの体から黒いものを吸出し、空へ放っていった。

後には、健康な色に戻ったディノの体があった。

 「成功したの?」

 「みたいだな。ありがとう・・・。」

そういうと、ディノは意識を失った。

 「ディノ!」

 「お兄ちゃん!」

 「大丈夫よ。気を失っただけみたい。」

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