第3話 旅の目的
森を抜けると村が見えてきた。
「あれが私たちの村です。それであの建物が私たちの住んでいる教会です。」
クリスが指をさした先には村の中央で時計がついた建物があった。
「じゃあ、クリスは教会でシスターをしているワケか」
「はい、まあ、見習いですが。それとこの村の上の丘に建っている神殿の巫女もやっています。でも、もう奉る宝玉がなくなってしまったので、神殿とは呼べませんが・・・。」
「宝玉がない!?」
突然、ディノが大声を出した。
クリスは少し、驚きながら答える。
「は、はい。ついこの間、神殿に行ったときに宝玉が光りだして、光が消えたときにはもう・・・。」
「そんな・・・。」
放心状態のディノ。
そんな、ディノを心配して、ピットが声をかける。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
ピットに心配をさせまいと、不器用な笑みをつくり答えるディノ。
「いや、神殿があるなら、お参りしようと思ったんだけどな、これじゃあ、しょうがないな。」
ピットの頭に手を乗せるディノ。
「じゃあ、教会でお祈りすれば、いいよ。」
「そうだな。そうするか。」
「じゃあ、行こう!」
そういって、ディノの手を引いて、教会へと走っていく。
そんな二人を見て、ほっとして追いかけるクリス。
けれど、クリスは心の端でさっきのディノの表情が気になっていた。
教会に着くと、シスターと子供たちが迎えてくれた。
シスターは普通の人間のおばさんだった。
「おかえり、二人とも。あら?お客さん。」
「はい、森で危ないところをたすけてもらったので、お礼がしたくて。」
「ディノといいます。お世話になります。」
深々とお辞儀をするディノ。
「そうですか。どうもありがとうございます。」
シスターもつられて、お辞儀をする。
「まあ、こんなところで立ち話もなんですから、こちらへどうぞ。」
「ちょうど、料理の準備もしなくちゃいけないしね。さ、いきましょう。」
そのまま、教会の横の家に行く。
そうして、シスターとクリスが料理をしている間、ディノは教会の子供たちと遊んでいた。
カラーにいたっては、子供たちにいじられて、ヘトヘト状態だった。
「これだから、子供は・・・。」
「まあ、人気なのはいいじゃないか。」
「人事だと思って、まったく。」
カラーがぐったりしていたので、暇になったピットがディノに寄ってきて、質問をした。
「ねえねえ、この村に何しにきたの?」
それにつられて、子供たちも興味深々で聞いてくる。
「そういえば、聞いてなかったわ。」
料理をしながら、振り向いて聞いてくるクリス。
「どこから話そうか、じゃあ、まず、昔話をしよう。」
そういうと、この世界に伝わる伝説を話し始める。
邪神を倒した神殺しの話を・・・。
「そして、邪神は倒され、宝玉に封印されました。とここで出てくる宝玉の一つが、どうもこの村の神殿にあるんだと言うんだよ。」
「えっ!」
ビックリして振り返るクリス。
「もしかして、さっきの話であんなに戸惑ったのは・・・。」
「ああ、そういうことだよ。俺は宝玉を見に来たんだ。」
もうしわけなさそうにクリスを見るディノ。
「ごめんなさい。もしかしたら、私のせいかもしれませんね。」
慌てて謝るクリスをみて、ディノも慌てて訂正した。
「いや、責めてるわけじゃないんだよ。ちょっと残念と思っただけだし、それにそんな簡単に壊れる代物じゃない。」
「どういうことですか?」
「俺が見てきたものは、衝撃なんかじゃ、びくともしない。たとえ、神殿がくずれようともね。」
「じゃあ、宝玉はどこに?」
「それについては、便利なものがある。」
そういうと、首からかけたネックレスを掲げる。
「これは宝玉が近くにあると光を放つんだ。近いほどに明るくなる。」
「おおお、きれいだなあ。でも光ってないよ?」
さっきまで、ディノの昔話を聞いていて、ウトウトしていたピットが興味深々にネックレスを手にして眺めていた。
「近くにはないってことだろうな。」
「ふうん。」
「クリス。そろそろ、料理を再開してくれない?」
大体の話が終わったとき、シスターがクリスに声をかけた。
「あ、すいません。すぐに戻ります。」
クリスは慌てて料理に戻っていった。
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