第2話 カラドリアス

いつの間にかクリスの前に現れた旅人と思われる男。

その肩には小さな白い鳥がとまっていた。

男は野犬をにらみつけていて、後ろからみていても、凄い殺気が感じられた。 

そして、その殺気を受けて、こちらへの突撃をやめて、野犬はおびえていた。 

男が大声をはる。

 「無駄に殺したく無い。失せろ!」

獣は今の言葉で恐れをなしたのか、一目散に逃げ出した。

 「ふう。」

マントの人がため息をはき、こちらを振り向いた。

茶髪に黒い瞳。やさしそうな雰囲気で腰に剣を差し、胸当て、篭手、脛あてなどの最低限な防具で旅によさそうな服装。首からはきれいな宝石のついたネックレスがきらめいていた。

 「大丈夫だったか。」

男は手を差し出してきた。

 「は、はい、ありがとうございます。」

クリスはその手をとって、立ち上がった。

 「君は亜人族かい?」

 「あっ、はいそうです。」

 「あ、別に他意はないよ。身近に亜人族がいなかったから珍しくてね。なにはともあれ、無事でよかったよ。」

とその時、茂みの奥から、ピットが駆けてきた。

 「大丈夫!クリスお姉ちゃん。」

泣きそうになっているピットの頭に手を置いて、クリスは答えた。

 「この人に助けてもらったから、大丈夫。」

ピットの顔が明るくなり、男にお辞儀をした。

 「ありがとう!お兄ちゃん!」

男は、照れくさいのか頬を掻きながら答えた。

 「なに、通りすがっただけだ。そんなに気にするな。」

 「いえ、命の恩人です。何かお礼をさせてください。あ、そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はクリス。この子はピットです。」

 「よろしく~。」

 「俺はディノ、よろしく。ついでに、俺の肩にいるのがカラドリアスのカラー。」

ディノが右肩にとまっている鳥を指しながら言った。

 「よろしくね。」

 「えっ!、しゃべれるんだ~。すげえ。」

 「カラーは幻想種の鳥だから、人の言葉がわかるんだよ。」

 「ふふん♪」

カラーが胸を張るように自慢した。

その時、ディノのお腹が鳴った。

ディノは顔を赤くしていった。

 「すまないが、先ほどの礼のことなんだが、ご飯をもらえないかな?」

 「はい、喜んで。家についたらごちそうします。」

 「ありがとう。それじゃあ、いこうか。野犬を追い払ったとはいえ、ここはまだ危険だ、すぐに移動しよう。」

 「そうですね、ではいきッ!?」

が、まだ、背中の痛みがとれていなかったのか、クリスは座り込んでしまう。

 「大丈夫!?」

 「大丈夫よ。ちょっと背中を打っただけだから。」

 「痛みなら、まかせろ。カラー頼む。」

 「了解!」

ディノが指示すると、カラーがクリスの方を向き、大きく息吸い始めた。

すると、クリスは痛みが和らいでいくのを感じた。

 「痛みが・・・。」

 「カラーは体の中の悪いものを吸収して空気中に吐き出すことができるんだ。」

カラーが吸い終え、息を吐き出していた。

そのころには痛みが消えていた。

 「もう、なんともないわ。」

 「すげえなぁ!」

ピットが目を輝かせてカラーを見る。

 「どんなもんよ。」

 「調子に乗るな。」

 「あいた。」

自慢気なカラーにデコピンするディノ。

 「何から何まで、ありがとうございます。」

 「いやいや、こっちもご飯を要求してるんだし、いいよ。ご飯には期待していいかな?」

 「はい!」

 「クリス姉ちゃんのご飯はおいしいよ。」

 「そりゃ、楽しみだ。」

そんな会話をしながら、森を抜けていった・・・。

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