中学時代の思い出?

「はぁぁぁ……ほんとに派手にやってくれたよな」

リビングの現状を見て、深いため息をつく。

一体これをどう直したらいいのだろうか。

李音が風呂から上がるまで、とりあえずこのリビングを元通りにしてやろうと思った。

ちなみに、時刻はとっくに八時を過ぎていた。

こうなることをわかっておいて、あらかじめ華花に電話しておいたんだ。「ちょっと遅れるから」と。

「まずは、これからか……」

ほうきとちりとりを物置から出して、床に飛び散っている皿などの破片を集めていく。

さすがに床が皿の破片だらけでは危なくて歩けない。

とりあえずリビングの床ははき終わったので、そのあとに床を雑巾がけ。

ひっくり返っているテーブルを元に戻し、ぐちゃぐちゃになっているカーペットなんかも直す。

「よしっと……ほかの部屋は大丈夫だよな?」

まさかとは思うが、他の部屋もこんな風にめちゃくちゃにされていたら、とてもじゃないが今日一日で直すことはできない。

一応台所などを見てみるが、ぐゃぐちゃになっていたのはリビングだけだったようだ。

「はぁ……ほんとになんなんだ今日」

「――終わったよー」

掃除が終わり少し背伸びをしていると、背後から李音の声がした。

「おう――って!?」

「ん……なに?」

「なにじゃなくて、ふ、服は!?」

「だって血まみれのまま行けないんでしょ?」

そうだった。

この子が裸なのはそのためだったのか。

「そうだったな……えーと、替えの服は……」

もちろん俺の家には女ものの服などはない。

だが、親戚かなんかが、なぜか女ものの服を置いて行った気がする。

かすかな記憶をたどりに二階に行き、俺の部屋の隣の部屋のドアを開ける。

この部屋は、誰かが泊まりに来た時用の、いわゆる来客用の部屋である。

来客用ってどっかのホテルみたいだが……まあいい。

この部屋のタンスに、親戚かなんかが服を入れていったような記憶があるんだ。

「これか……?」

タンス開けると、そこにはたしかに服が入っていた。

下着やらスカートやらが二着ずつ入っていた。

元々この家には俺しかいないのだが……どうして女ものの下着なんか入れたのだろう。

……考えれば考えるほどよくわからなくなってきた。

とりあえず今は深く考えずに、この服たちを李音に着せてあげよう。

その服たちを持ってリビングへ。

「はい、とりあえずこれ着ててよ」

あまり李音の裸は勅使はせず、さりげなく服たちを差し出した。

「……うん」

李音はしばらくその服を見ていたが、俺から受け取るとおもむろに下着などを着こなした。

「……どう?」

着終わると、俺にその服を見せた。

「うんいいと思うよ」

なんとなくだがそう返すと、李音は少し照れたような気がした。


「――いらっしゃーい!」

華花の家に来たのは、八時半を過ぎたころ。

「今、中学の友達で集まって会食してるんだー!」

予想が的中した。

やはり会食だったらしい。

「……っと、その子は?大賀に妹なんかいたっけ?」

「いやいや、この子は妹じゃなくて……えーと」

さすがに、「血まみれの少女がリビングにいたんだ」って言えないよなぁ。

どう言おうか……。

「ああそう!ちょっと親戚の子が来ててさ!」

俺は李音を見ながらそういうが、ちょっと胡散臭い嘘だったかもしれない。

「ふーん……親戚の子がねぇ」

華花も少し疑っているものの、とりあえず華花の家に入ることができた。

「おっ!リアクションの薄い奴の登場だ!」

「おお、大賀じゃーん」

華花の家のリビングに行くと、そこには五名ほどの中学の友達がいた。

三名が男子、二名が女子だった。

つまり、俺と華花を合わせれば、計七人ということになる。

七人……?いや、李音がいるじゃないか。

李音も合わせれば八人の会食ということになる。

「さーてと、大賀もそろったことだし!さっそく始めましょー!」

「ういー」

乾杯と、カツンとグラス同士がぶつかる音が響く。

李音は俺の後ろに隠れて様子をうかがっているようだ。

テーブルの上には、いくつかの料理が並べられており、例えば骨付き鳥だったり、サラダだったりと、どれもおいしそうなものばかりだった。

「ほら、大賀君も座りなよ」

そういって隣をポンポン叩く女子、この子は楓。

中学の時は、そこまで喋る機会はなかったが、喋ってみると面白い話題がいつもあった。

この子も華花と同じく明るくて、いつも面白いことを言ってみんなを笑わせてくる。

中学の時この子といっぱい喋っていたら、今はとても仲良しだっただろう。

喋れるだけまだマシではあるが。

「それじゃあ失礼します」

楓の言葉に甘えさせてもらい、楓の隣に座る。

それと同時に俺の隣に李音が座る。

「あれっ、その子は?」

「えーと、親戚の子だよ」

華花と同じ回答。

楓はこの言葉について深く考えようとせず、そのまま信じてくれた。

まあ、華花はまだ疑っているように見えるけどな……。

「それじゃ、食べていきますかね」

一つのテーブルに計八人座っているで、少々狭い。

が、それには誰も文句は言わなかった。


華花の家に来て一時間ちょっと時間が過ぎた。

ちなみに、お腹が空いていいた李音は一応ご飯は食べているようだが……どうもおかしい。

なにか、この子は普通の子じゃないように見える。

だって前歯が少しとがっているし……でも、普通の人でも前歯がとがっている人もいるしな。

「ふぅ……」

お腹がいっぱいになった俺は、少しの間その場に寝ころんでいた。

ご飯を食べている間、中学での思い出話や、中学で起きた面白いことなどといった、中学関連の話で盛り上がっていた。

「そういえば大賀って公立だっけ?」

そこへ、華花がそう聞いてきた。

「ああ、公立だけど」

「へぇー、大賀が公立ってなんか以外なんだけど」

「どういう意味だよ」

そういいながらむくりと起き上がる。

「いやだって、中学の時そこまでいい点数取れてなかったじゃん」

「うぐっ……ま、まあそうだけどさ」

中学の時はあまりいい点が取れず、特に期末ではひどい点だって取ったことがある。

そんなことが華花に知られ、華花からは色々と煽られたりしていた。

゜まあでもいいじゃん。高校には行けたんだから」

そこに楓が口をはさむ。

「まーね。それと、大翔はどうだったの?」

俺の向かい側に座っている、俺から見たら少々イケメンである大翔は肩を落とした言った。

「……私立」

「ああ……」

聞いてはいけないことを聞いてしまったかもしれない。

「まあ……公立だろうが私立だろうか、高校に行けたという意味では同じでは?」

と俺が言うと、

「ううん……それはそうだけど、ほんとは公立に行きたかったよ」

誰もがそう思うだろう。第一志望が私立じゃない人は。

「でもよかったじゃん。滑り止めやっててさ」

「今思えばそうだね」

もし滑り止めをせず、公立に行っていたら彼はどうなっていただろうか。

考えるだけで恐ろしい……。

高校に行けず就職とか、普通に考えたくもなかった。








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