吸血鬼少女はどこから来た?

佐藤大賀。

俺はただの高校二年生だが――いや、「ただの」高校生ではないな。

なぜなら、普通の高校生は吸血鬼なんかと住まないだろう。

だから俺は普通ではないのだ。

俺はこの「吸血鬼」と、少し前から一緒に生活することになった。

きっかけは、今から一年ぐらい前だろうか。


ようやく中学校生活も終わりを迎え、次のステージへと上がる時が来た。

高校生というステージに。

中学まで一緒だった奴らは、俺とは違う高校に行ってしまうため、また新たに友達を作らなきゃならない。

小学校の時どうやって友達作ったんだっけな。

最初は話をして……。

気が付いたら、どうやって友達を作ろうかという考えになってしまっていた。

「はぁ……春だなぁ」

始業式が終わり、この春の温かさを感じながらなんとなくブラブラしていいた。「――あっ!大賀じゃん!」

ブラブラしていると、聞きなれた声が俺を呼ぶ。

「うおっ……びっくりした」

「びっくりしたじゃなーい!もう、君はほんとにリアクションが薄いよねー」

「悪かったな」

細身な体で俺よりもやや身長が小さいくせに、胸はそれほどあるといういわゆるロリ巨乳的な女子生徒がそこにいた。

「あー……華花も今日始業式だったの?」

高橋華花。中学の時、いつも俺と一緒にいた女子だ。

黒髪ポニテで、いつも明るく華花のそばにいるとなんとなく落ち着く。

俺はいつも明るくないが……やっぱり明るい方がいいのかもしれない。

その方が、自然と人が寄ってくるのだろう。

「うん。大賀もだったの?」

「まあね」

「そっか。これからみんな違う道だもんねー。大賀も、恋愛とか頑張りなよ?」

「なんでそうなる」

「ははっ!まあ、中学で恋愛できなかったんだから、恋愛するなら今っていうでしょ?」

「いわねーよ!」

どうして俺は、華花から恋愛を応援されなきゃいけないのだろうか。

まあ、中学で恋愛は失敗したからなぁ……やるとしたら高校か。

「まあまあ……それより、大賀って今日暇だったりする?もしそうなら、今日の午後八時くらいに私の家に来てよ」

「えっ?なに、なんかお祝い事でもあるのか?」

「んー、まあそんなとこ!」

お祝い事?今日って誰かの誕生日とかっていうのじゃないよな……まあいいや。

「それじゃあ来れたら来てねー!」

華花はそういって俺に手を振り、小走りに家に帰っていった。


「八時ねぇ……」

家に帰宅した俺は、自分の部屋にある時計を眺めながらつぶやいた。

八時までだいぶ時間がある。

「うーん……」

時計を見て少し唸った後、お腹が空いてきたのでリビングへと行くことにした。

一階に降りようと自分の部屋のドアを開ける。


ガッシャーン!!!


「うおっ……なんだなんだ?」

華花にも言われた通り、俺はリアクションが薄い。

いや表には出さないだけであって、俺の心臓はドクドクと鼓動が速くなっている。

何か大きなものが倒れたような音が一階から聞こえた。

少し怯えながらも、その音がした方へと向かう。

「どうなってんだ……?」

その音がした方とは、俺が行こうとしていたリビングだった。

リビングでは、テーブルが派手にひっくり返っており、床には皿などが割れ落ちていた。

そして、リビングの中央の方には一人の少女が立っていた。

銀髪で、所々破けている服には、なぜか血がついていた。しかもたくさん。

「ハァ、ハァ……」

後ろを向いているので顔はうかがえない。

その少女は肩で息をしていた。

俺の頭は追い付いていなかった。

だって、リビングはこんなにハチャメチャなことになっているし、しかもなんで俺の家には少女が……そして少女の服にはなぜ血が?

「あ、あの……」

俺は何を思ったのか、その少女に声をかけてみることにした。

「君、大丈夫?」

「……ふぇ?」

少女の肩に触れると、少女はゆっくりと俺の方を見た。

その少女と目が合った。

「え、あの……」

少女は俺の方をジッと見る。

なんかこの子に襲われそうな感じがするのだが……。

「お腹空いた……」

少女は一言そういうと、俺の方に倒れてきた。

「あっ!」

思わず俺は少女を抱きしめるような形で受けてめてあげた。

「ご飯……なにかあったかな」

とりあえず少女をソファの方にゆっくり置くと、冷蔵庫を漁った。

だがめぼしいものは無かった。

と、そこで時計が目に入った。

「七時……あと一時間か」

なぜこんなにも冷静でいられるのかが俺にもよくわからないが、華花の家に行く時間が少しずつ迫ってきていた。

だけど、この子をこのままにしておくにはいけなしいな……。

少し考えた結果、この子も一緒に華花の家に連れて行ったらどうだろうかと。

今日はなにかのお祝いのようなことをするらしいので、恐らく会食的なことをするのだと思う。

あいにく俺の家には食料がない。

こうなったらそうするしかない。

「なぁ、君の名前を教えてくれないか?」

俺はソファで横になっている少女の死頃に行って名前を聞くことにした。

「李音……」

か細い声で、なんとか李音という言葉が聞こえた。

「李音、俺はお前を連れて今華花のところに行くんだけどいいか?」

「……はるか?」

「あー……俺の友達だよ」

「友達……?うん、いいよ」

これで李音も一緒に華花のところに行ける。

と、そこで俺は気づいた。

この子の服をどうしようかと。

そもそも血がついた服で外に出るのは……ダメだろう。

この子の服を洗濯したとしても、俺の家には女ものの服はない。

「どうしたの?」

ソファで俺が悩んでいると、李音が体を起こして聞いてきた。

「あ、いや……その服って、なんで血が?」

「……色々あったの。今は言えない」

人には、たれかに言えないような秘密は一つや二つあるだろう。

まあ無理には聞かない。

「そうか。それでだな、その服で外に出るとまずいんだよ……だから、一回風呂に行ってきてくれ」

「お風呂に?……まあいいけど」

なんか強制的に風呂に行かせた感はあるけど……。

李音はソファから立ち上がろうとすると、少し倒れそうになってしまった。

「んっ……ダメかも」

「ダメか……」

どうしようかと考えていると李音が、

「じゃあ抱っこして」

「……え」

抱っこだと?う、うーん、それはちょっとまずいんじゃないか?

なんというか、色々といけない気が……。

そんなことを言っている間にも時間は過ぎる。

「……わかったよ」

仕方なく李音を抱っこし風呂場に行った。

「じゃあ終わった呼んでくれ」

「うん」

そして風呂場のドアを閉めてリビングに行き、これをどうやって元通りにしたらいいの頭を抱えた。















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