どうして吸血鬼と生活しなきゃいけないんだ
かろん
吸血鬼少女
八月中旬。
セミの声が聞こえたのと同時に目を開ける。
時刻は午前の八時過ぎ。
正直もう少しだけ寝ていたい、だけど「あの子」の世話がある。
「はぁ……よし、起きるか――って!?」
「んー……あっ、起きちゃった?」
「起きちゃったじゃねぇよ!俺がいいって言ってないのに血を吸うなぁぁ!」
吸血鬼。
人によっては怖いと思うかもしれないが……かわいい吸血鬼だっている。
それが、この子。
「にへへぇ、お腹が空いたからつい」
「つい、じゃないよ!……まあ、いいけどさ」
吸血鬼少女と言うのはこのことであり、前歯の二本は少し尖っているし、なんといっても見た目が幼女……。
その見た目からか、血を吸われても何もいえない。
吸血鬼、バンパイア……色々な名前があるがどっちでも良いだろう。
この子の名前は佐藤李音。
銀髪ツインテに吸血鬼らしい赤い目、幼女と言えるような小さな体躯にまん丸い顔。
「ねぇ大賀ー、お腹すいたー」
俺のベッドの上で足をバタバタさせる李音。
スカート姿なので、足をバタバタさせられるとその……あなたのパンツが丸見えなんですけどねぇ。
「はいはい……ほらよ」
李音に自分の腕を出す。
いつも李音は、俺の右腕から血を吸っている。
吸血鬼だから、主食は血なのだ。
「それじゃあー……えいっ!」
「ぬおっ!?」
李音がかぶりついたのは腕……ではなく、なぜか俺の首だった。
「ちゅー、ちゅー……ぷはぁっ、おいしかった!」
笑顔でそういう李音。
だが、俺は驚きで少々動けないでいた。
「な、なんで首……しかも、結構吸っただろ?!」
「えへへー、だから言ったじゃん。お腹空いてるって」
「…………それで、なんで首?」
そう。俺の疑問は、なぜ腕ではなく首なのか。
「んー、今日はちょっと違うところを吸いたいと思って」
「いや、血って同じ味だろ?」
「違うよ。血って言っても、吸う場所によって味が全然変わってくるんだから」
へぇ……俺には全く理解できないけど。
「ねー、食後にちゅーしよ?」
そういって体を俺に近づけてくる。
うおっ……近づくと、妙にミルクのような甘い香りが……し、しかも、このムニムニは、なるほど膨らみかけですね!
「ち、近い近い!」
ほんとにキスされそうになったので、慌てて李音を離した。
「んー……キスするのダメ?」
あまりにもかわいい顔で言われて、ほんとにキスしようかと迷ってしまった。
「だ、ダメ!しかもお前にキスされたら、おまけに血まで吸われるから!」
「むーけちー……まあいっか。そのうち絶対してあげるんだからね!」
李音はそういい、怒ったかのように俺の部屋から出て行ってしまった。
「はぁ……世話するのも大変だよ」
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