91.改善点と注意点
「エビって、とっても美味しいですね。
こんな美味しい物を今まで知らなかったなんて⋯⋯っ!
クリスディアについて来て、本当に良かったです」
そう言いながら、追加でお皿にいれたエビをパクパクと食べるエレーネさん。
結局あんなに嫌がっていたのに、エレーネさんが1番気に気に入ってしまったのだ。
それを呆れ顔で見つめるリズ。
「エビは、虫みたいで嫌だったんじゃなかったんですか?」
「⋯⋯だって、皆さんがあまりにも美味しそうに食べるから、つい⋯⋯」
へへへと誤魔化すように笑うエレーネさんに、大きくため息を吐いたリズ。
そんな2人を私とレーヴェとステラは苦笑いで見つめた。
どうやらエビは食わず嫌いだったみたい。
ちょっと安心した。エビって色々料理に使えるから、出来れば喜んで食べて貰えると、作りがいがある。
さっき話してたように海老フライもいいし、エビチリ、エビマヨといった炒め物はもちろん、パスタなんかに入れてもいい。
その横で私たちとは違い、エレーネさんの事なんて気にならない様子で、オニオンスープとサンドウィッチを食べ始めていた、オブシディアンとネージュ。
「このスープ、見た目は地味だが美味いなっ!」
「本当ですね。見た目はちょっと心配になりましたが、玉ねぎがトロトロに煮込まれてて美味しいです」
オブシディアンが言った感想に、リズが同意した。
確かにオニオンスープは、具は玉ねぎしか入っておらず茶色く、見た目が確かに地味だ。
⋯⋯正直、貴族に出す食事には向かないだろう。
だけどちょっとアレンジしたらどうだろう?と色々考えてみる。
あと、ヴィリスアーズ家などで食べた塩スープに比べれば、玉ねぎがトロトロに煮込まれているので美味しかったが、はやりちょっとボヤけた味なのでコンソメとか入れたいなぁ。と思ってしまう。
「このパンも色々入ってて、おいしーよ!?」
そう言いながらサンドウィッチを頬張るネージュ。
サンドウィッチは色々な具が入ってて、オニオンスープとは対照的に見た目が華やかだ。
パンは今日焼いたものらしく、いつものカチカチではなくそれよりはマシ、だと言ってもフランスパン並に固かった。
ただその前に手掴みで食べるのは、貴族的にNGな気がする。
ただ、やはり食べやすくしてくれているのか、片手で持てるほどの小さめのサイズに切られていた。
⋯⋯うーん。どうにか柔らかいパンを食べたいなぁ。
色々改善点はあるものの、今日の昼食も美味しかった。
ーーー⋯⋯
「よし! では厨房に行ってみますか」
そう宣言しながら、ちらりと姿見で自分の姿を確認した。
結局、私の髪と目はオブシディアンから貰った蝶の髪飾りを使い、髪はローズブラウンに。
瞳の色はこの国で一般的な、ダークブラウンにした。
化粧も服装も本来のジルティアーナのイメージとはだいぶ違うし、先程リズが言ったようにこれならまずバレる事は無いだろう。
厨房にお邪魔するメンバーは、私とリズとエレーネさんの3人だ。
ステラやネージュも行きたがったが、あまり大人数で行くのは迷惑になるだろう。と考え、今回は遠慮してもらう事にした。
「ティアナさん」
呼ばれ振り向くと、リズが真っ直ぐに私のダークブラウンに変えた瞳を見て言葉を続けた。
「改めて設定の確認ですが、貴女は下級貴族でジルティアーナ様付きの専属侍女ティアナです。
ティアナはジルティアーナ様からとても信頼されていて、色んな事を決める権限を与えられています。
ですが重要そうな事や判断に困った時は、“ 主であるジルティアーナ様に確認をとらないと答えられません ”などと言い、明言を避けて下さい」
「わかったわ」
私は同意し、頷いた。
そんな私を見ながら、リズは少し言いにくそうに言った。
「⋯⋯先日、ティアナさんが私に相談してくれた事を、ずっと考えていたんです。
“ 私って元々こんなに、迂闊だったかしら? ”て仰ってましたよね」
「う、うん⋯⋯」
自分の失態を指摘されたみたいで、気まずさを感じながら返事をした。
私がジルティアーナになってから。
最近だと内緒にしておこうと思っていたドライヤーの改善点をうっかりギルベルトさんに漏らしてしまったりと、あまりに迂闊な事が多すぎて自省してる事を話したのだ。
今までは幸いにも大した問題にはならなかったが、これからは領主というこの土地での最高責任者。
迂闊な行動や発言が、今後は大きな問題に繋がる可能性もあるのでは?と怖くなってしまいリズに話していたのだ。
「最初に⋯⋯、ティアナさんが転生者である事などを話してくれた時に、私が以前会った転生者が幼い子供の肉体に精神が釣られてしまったようで、感情のコントロールに苦労したらしい。と言うことはお話しましたよね?」
「うん」
「ティアナさんが仰っていた、最近の自分が迂闊すぎる。というのは本来のジルティアーナ様の影響かもしれません。
ジルティアーナ様は⋯⋯あまり人を疑うということを知りませんでした。人を信用しすぎて迂闊な行動や発言をして私が注意する事も多かったんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます