88.こんなので大丈夫?



翌日。

私はフェラール商会で購入した、ジャケット付きのブルーのワンピースドレスを身につけて、お姫様の為に作られたような、真っ白なドレッサーの前に座った。


例のフェラール商会でローランドさんから貰ったドレッサーだ。

今まではホテルで過ごしていたのでマジックバッグにしまい、ドレッサーはもちろん化粧品も必要な分だけ取り出して使っていたが······私の前にズラリと並んだ化粧品たち。

大きなドレッサーなのにそれが全ては収まりきらず、ドレッサーはもちろん横にある棚に並べられている。

まるで、デパートの化粧品売り場みたいっ!


口紅やアイシャドウがほぼ全種類、グラデーションを作り並んでいた。

眺めてるだけでも、幸せ~!

これが全部私の物なんて······っと、うっとりとした。



最初に化粧水で潤いを与えたあとに、少量の乳液を手に取り、付けて保湿をしながら軽くリンパマッサージをする。


すると後ろに控えていたエレーネさんが不思議そうにするのが、鏡越しに見えた。



「それは、何をされているんですか?」


「リンパマッサージだよ。

ジルティアーナって血色があんまり良くないでしょ? こうやってメイク前にマッサージをすると、肌のくすみが抑えられて健康的な肌にみえるのよ」


「そうなんですか? 私も今度やってみます!」



もしかして、エレーネさんはメイクに興味があるのかな?

リズはあまり興味がなさそうで残念に思ってたけど。エレーネさんとなら色々メイクについて話できるかしら?


そんな事を考えながら、次の手順に取り掛かる。

まずは化粧下地。そばかすを隠す為にピンク系の化粧下地を顔全体に手で塗り、仕上げにスポンジで軽く叩き馴染ませる。


次はファンデーション。

ジルティアーナはまだ10代だから、パウダーファンデーションで。

と言いたいところだけど、そばかすにくすみニキビ跡が気になるので、カバー力のあるリキッドファンデーションを選んだ。


そう。私がジルティアーナになった直後、衝撃を受けたニキビだらけの顔っ!

食事の改善やスキンケアという私の努力の結果、かなり良くなった。

それでも、どうしてもニキビ跡が残ってしまった⋯⋯。

だが、化粧でカバーできる!


厚塗りにならない様に気をつけながら、手の甲にとったリキッドファンデーションをスポンジに馴染ませるようにとり、顔の中心から外へ顔にのせ伸ばしていく。

鼻の小鼻周りは叩き込むように塗る。

最後にフェイスラインを中心から外へ塗り、境目をぼかしてグラデーションを作れば、ファンデーションは完成。


その後に肌の色に合ったコンシーラーをシミとそばかすに。気になるニキビ跡にはワントーン暗いコンシーラーを筆で置くようにのせた。



「すごい⋯⋯っ! ニキビ跡やそばかすがとても綺麗になりました。よく見ないと分かりません」



横から聞こえた声につられ、そちらを見るとエレーネさんと目があった。

「す、すいません」と、焦ったように視線を反らし、その場から後ずさった。


ベースメイクの最後、ブラシに少量のフェイスパウダーを含ませながら、私は笑った。



「エレーネさんも、メイクするの好き?」


「は、はい。あまり上手くは出来ませんが⋯⋯」


「私もメイクするの好きだし、人がメイクしてのを見るの好きなんだ。人のを見るのも楽しいよね。

見てて大丈夫だよ、良かったら参考にしてみてね」


「はい⋯っ! ありがとうございます」



そんな会話をして笑いあった後、フェイスパウダーを付けたブラシをTゾーンやフェイスライン、目の下や小鼻の周りなどに軽くのせベースメイクは完了した。


その後、明るいピンク色のアイシャドウをチークとして使い、ブラウンのアイブロウで眉を描き、瞼にはヌーディカラーのアイシャドウをのせ、目尻にはキラキラのラメシャドウを置き奥行き感をだした。


まつ毛の内側にブラウンのアイラインを入れ、マスカラを塗り、ピンク系のリップを付ければナチュラルメイクのジルティアーナが完成した。



うん。いい感じにナチュラルメイクにできた!!


これでメイクは完成したけど⋯⋯、


メイクのおかげで、印象がかなり変わったとは思うけど⋯⋯、こんなメイクと服装変えたくらいで本当に大丈夫? ジルティアーナだと思われない?


そんな事を思っている間に、リズが手早く髪型をセットしてくれ、上品なハーフアップにしてくれた。



「ティアナ、お前にコレをやろう」



いつの間にか横に現れたオブシディアンが、ことんっと小さな音をたてドレッサーに手をついた。


手が退かされ、そこにあったのは綺麗なゴールドの髪飾り。

アンティーク調の、蝶がモチーフの綺麗な髪飾りが置かれていたのだった。


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