85.聖獣の姿
「オブシディアン様······」
でた。リズの、笑顔だけど怖い顔。
だがやはりオブシディアンにはこうかがないみたいだ……。
こうげきが効かないオブシディアンは
「エリザベス! 私にも用意しろ」と要求した。
するとノックがされ「失礼致しますっ!」と、新たに食堂に入ってきたのはエレーネさん、と······?
「エレーネ? これは、どういう事なのかしら?」
例の笑顔だけど怖い顔で、今度はエレーネさんをリズが見る。
オブシディアンには効果はなかったが、エレーネさんへは こうかは ばつぐんだ!
「ひぇっ! も、申し訳ございません。オブシディアン様をお止めしたのですが······
“ この気配はっ! 美味い物を食べてるに違いない!! ”と言って、飛び出されてしまって······っ」
うん······。
食べ物の為に暴走するオブシディアンをエレーネさんに、止めろ。というのは酷な話だよね······。
そう思い助け舟を出すべく
「私の分を一緒に食べるので、オブシディアンにも用意を」とリズに指示をした。
それとエレーネさんの後ろにいる少女に目を向けると少女は、はいっ! と元気に手を挙げて言う。
「ネージュもジルティアーナと一緒に食べたいです!!」
「············」
······やっぱり。
エレーネさんの影から現れたのは、腰までの長く豊かな白い髪のとても可愛い女の子。
その白い髪には全て真っ白ではなく、ローライトのように所々グレーの髪が混じっている。
そして見覚えのある海のようなキラキラ光る青い瞳。
「······だめ?」
私が返答しなかったせいか、ネージュが不安そうに首を傾げた。
私は膝を屈めてネージュの目線に合わせる。
「うんん。だめじゃないよ。私もネージュが一緒に食べてくれたら嬉しいな」
私が笑って言うと、ネージュも嬉しそうに笑ってくれた。
ネージュと笑いあっているといつの間にかリズが、オブシディアンとネージュの食事のセットをしてくれていた。
「ネージュ様も、こちらにどうぞ」
「うん!」
嬉しそうにネージュもテーブルに付いた。
ネージュとオブシディアンも、ラクレットを用意してもらい
「
「おいしーいっ!」
それぞれ声を上げ、オブシディアンは凄い勢いでワイングラスを空ける。
スティーブさんは、突然現れたオブシディアンとネージュに思うところがあるだろうに、黙々と素晴らしいタイミングでオブシディアンにワインを注いでくれていた。
そして、何杯目かのワインを注いでもらった時に、スティーブさんの顔をじっと見つめた。
「······お前。どこがで感じたことのある魔力だと思ったら、いつもクリスティーナの後ろにいた男か」
え? 知り合い??
思わずオブシディアンとスティーブさんを見るが、何事も無かったようにワインを飲み続るオブシディアンに対し、スティーブさんは戸惑った様子だ。
すると代わりにリズが答える。
「はい。こちらの者は専属としてずっとクリスティーナ様にお仕えしていた、スティーブです。
スティーブ、オブシディアン様はクリスティーナ様に協力し助けてくれていた、あの聖獣様ですよ」
「············は?」
固まるスティーブさん。
そうそう。そういえば、オブシディアンって馬の聖獣だったよねー。
なんて思いながら私は念願の海鮮、エビとマッシュルームのアヒージョを頂く。
うーん、おいしいっ! ワインが進むわぁ。
久しぶりに、美味しくて多めに飲んだワインでふわふわしながら私は食事を堪能した。
「えっと······聖獣様って、あの黒い神馬様の······? たしかにオブシディアン様の艶やかな黒髪は、あの聖獣様の尻尾に似てはいますが······」
だけど、冗談でしょ?
とでも言いたげにスティーブさんは、リズとオブシディアンを見た。
どうやら聖獣様が、人の姿になることも。
そして更に、こうして会話をする事が普通ならありえないことらしい。
日本が常識な私にとっては全ての事がファンタジー過ぎて、オブシディアンが私に話しかけて来た事も、いきなり私を主として人の姿に変わった事も、異世界ってすごーい! と、この世界では普通の事なのかと思ってしまったがそうではないらしい。
昨日私たちと再会したあと、オブシディアンが人の姿になって会話をするようになっていた事を知ったエレーネさんはとても驚いていた。
そう言われてみればネージュの声を聞けるようになっただけでリズもミランダさんも、とても驚いてたもんね?
「エリザベスが言っている事は、本当だぞ?」
疑いの目で見られていたオブシディアンの声が聞こえ、私もオブシディアンに目を向けると······
!!!?
今まで無かった馬の耳がぴょこんと頭の上に。
お尻からはオブシディアンの髪の毛のようなまさにポニーテールが現れたのだった。
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