9.異世界のごはん



ぐぅぅぅぅぅ~~~ぅ·····


「すぐに夕食の準備をさせますね」


静かな部屋に私の腹の音が鳴り響いた。

それを聞いたエリザベスさんは笑う訳でもなく、食事の用意をするのか部屋を出ていた。


···············恥ずかしすぎる!!


なんてこったい。昼間の号泣といい恥を晒し続けてる気がするわ。

でも、お腹がなって気づいた。目覚めてから····この世界に来てからそう言えば何も食べてない。

お腹の音を聞き自覚してしまうと、空腹である事に気づいた。空腹である事に気づかないほど、緊張してたのだろう。


しばらくするとテーブルの上に料理が次々と次々と次々と並べられた。


な、何これ!?


6人位用くらいの大きめのテーブルいっぱいに並べられた料理たち。ここは私の、ジルティアーナの自室なのに何人かで食べるの?と思い、ジルティアーナの食事の記憶を探る。


ーーーうん。いつもこんな感じだったようだ。

ジルティアーナ1人の為に用意された、沢山の品数の大量の食事。品数はざっと見ても10ほどあり、その一つ一つが大皿だ。

小規模なビッフェかな?といった様子だ。

いくらジルティアーナがデ····いやいや、ぽっちゃりさんで沢山食べるといっても女の子。食べる量は知れている。どうやったって食べきれない。


ジルティアーナの今までの食事を思い出してみると・・・そんな食事をその時の気分で少しずつつまんで、気に入った皿を追加で大量に食べたりしていたようだ。

うん。まさにビュッフェだね。


エリザベスさんが、いくつかの皿から食事を取り分けてくれ、私の前に置いた。


コレって·····。

品数が多いものの、なんか肉ばかり。しかも、妙にテカテカしてるような。


嫌な予感がしつつも空腹に耐えられず「いただきます」と手を合わせ、鶏のソテーの様な物を口に入れた。


うぐぅ!!から~~い!

何これ?香辛料??激辛な辛味があるのではない。大量のスパイスによって味が濃すぎてしょぱくてツラい。

この1口でお茶碗1杯くらいいけそうな味の濃さだ。だが、当然米はない。


更に、なによこの食感·····。鶏皮のような部分がぶにぶにで気持ち悪く、おそらく食材自体も脂が多いのに····凄い油敷いたでしょ!?噛む度に脂が口の中に広がりギトギトして気持ち悪い。


次に横の、何のお肉かは謎な煮込みを食べてみる。

·····超コッテリ、そして酸っぱい。

どっからきたの、この酸味ぃ。更に肉はスジ切りしてないの?固くてなかなか噛みきれない。もう仕方なしにある程度頑張ったら、丸呑みした。


うん。肉はやめとこう。

と、言っても8割の料理は肉料理っぽいんだけれども。どの料理も見た目からして、油が凄い。

そして、見た目以上に凄い味·····お腹空いてるのに、ツライ。


はっ!!そうだ。米は無くてもパンがある!

パンを食べよう!!


ガシッと横にあるパンを掴むと·····固っ。

バケットの様なパンが食べやすく、切られ置いてあったが。持っただけで解る。この固さ。


ちぎって食べようとしたが、ぐぬぬ!·····固くてちぎれん!!

コレ、スライスする前なら釘打てそうだわ。そのまま齧り付く勇気はない。よし、スープに漬けよう!


でも、これまた得体のしれないスープだ。

何かの肉と芋と豆のスープ?でも煮込まれすぎたのか、具材が原型を止めていない····。


ううう~。案の定、具は煮込まれ過ぎてドロドロ、なのに肉はゴム?と思うくらい固く、スープは濁っている。

なのに·····味がない。

いや、塩味はするよ?でも出汁がない。

塩を入れたお湯を飲んでるようだ。


そして、このスープ・・・・ぬるい。

いや、スープだけではない。先程食べた肉料理も全部冷めていた。それも不味さに拍車をかけてる気がする·····。


恐る恐るパンをスープに漬ける。


うーん。美味しくなーーい。

そりゃあパンにお湯に漬けても、美味しくは無い。

でも、固いままじゃ食べれないし、まだ、他の肉料理よりはマシか。

と泣きそうになりながら、空腹には耐えられずパンを塩スープに浸しながら黙々と食べたのだった。



ーーーデザートも、酷かった。


ほぼ、あの塩スープとパンのみを食べ続け食事を終えると、最後にデザートが出てきた。

これまたデザートビュッフェ。ケーキなどが色々出てきた。


なんと!デザートがあるんじゃない!!

昼間にダイエットをせねば。と決意したはずだったが、あのご飯にはあまり食べられず、無理矢理空腹を誤魔化したもののお腹いっぱいではない。


さっきのご飯とは違い、デザートは美味しそう!とウキウキとショートケーキのような物を食べると·····


あまーーーーーーい!!!

激甘だった。クリームはねっとりとして舌に張りつくような感じでとにかく甘い。なのにスポンジ?も、物凄く甘い。激甘×激甘。

更にスポンジは固くてボソボソ。ふんわり感や繊細さは全くなく、噛んでるとジャリっと砂糖を感じた。

無理、コレは無理。もう他のものに手を出す勇気は無くなり、デザートは下げてもらった。


ちなみにこの国では水は貴重で、酒より水が高級らしい。平民は水の代わりにエールを飲むらしい。

そんな訳で、食事と共にワインのような酒も出た。お酒!と思ったが·····これまた美味しくはなかった。味は酸味が強すぎた。

ただ、美味かったとしても美味しいツマミがないから微妙だけど。

私はお酒が好きだが、美味しいツマミを一緒に食べたい人なのだ。


ヌルヌル、ギトギト感を流す為に紅茶のようなお茶を飲む。

唯一、エリザベスさんが入れてくれたお茶だけが美味しいのが救いだった。



「食事は、口に合いませんでしたか?」


「残してしまって、ごめんなさい」


心配そうに聞かれ、私は謝罪した。

お腹は空いてたのに、あの料理は全然食べれなかった。

あまりの酷さに、継母の嫌がらせか!?と思ったがそうではないらしい。


貴族には当たり前の食事で、高級な油や砂糖を沢山使える料理が出せる事。そういった料理を量も種類も多く出せることが、一種のステータスらしい。

なんだそれ·····勿体ない。

しかも私が大量に残してしまった料理は、そのまま捨ててしまうらしい。


本当に勿体ないよ!

犠牲になった動物さんごめんなさい!!

と、心の中で懺悔した。


本来は作ってくれた料理人にも謝るとこだが、あまりの出来上がりの酷さに、お肉になった動物や、酪農家さんに謝れ!!と思ってしまった。


ただ、私になる前のジルティアーナはあの食事を沢山おいしく頂き、こんな体型になってしまったようだ。

よくアレを大量に食べれたな·····。油大量・砂糖も盛り沢山の食事やデザート。それを大量に食べればそりゃあ太るわけだわ。と妙に納得した。


量はジルティアーナより当然すくないが、義母やシャーロットも同じ食事を取ってるというのだからびっくりした。

·····料理人が悪いんじゃなくて、私の口に合わないだけ?だとしたら、料理人さんにも、沢山残してゴメンなさい!


でも、あんな食事を食べ続けたら、糖尿病や痛風になるわ。

異世界の人は体のつくりが違うのかしら??


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