中年男の頭の中はこんなモン

しょうわな人

 ソコに女子がいるから

 ワタシの名前はそう仮に安中灰朗あんなかはいろうとでも名乗っておこうか。

 現在四十九歳の既婚、週に二日は妻を抱く四人の子供を育てる普通のサラリーマンだ。

 【射ち止め】宣言を妻に出されて、毎回ゴムを付けらされるが、何とか外そうと画策するワタシと、外させまいとする妻との攻防はまた別の機会に話そうと思う。


 今回は、不惑まどわず(四十歳)を迎えて九年も過ぎた男の頭の中を皆に教えたいと思う。その前にワタシの幼少からの記憶を辿ってみよう。退屈だろうが、どうか気を長くして付き合って頂きたい。


 ワタシは三歳の頃、当時住んでいた家の向いにいた女子大生のお姉さんがお風呂に入ってるのを何とか覗こうとして、痴漢としてお湯をかけられたのが第一の記憶だ。


 次に女性を意識したのは小学一年生の時だ。隣の席の美代ちゃんが大好きだった。それは小学二年生まで続く。


 そして小学三年生の時に美代ちゃんから心変わりをしてしまう。そう、美代ちゃんとは違うクラスになってしまい、同じクラスにいた直美ちゃんを好きになってしまったのだ。しかし、直美ちゃんを好きだったのは一年間だけだった。

 小学四年生になったワタシは美保ちゃんに恋をしてしまったのだ。何と目移りの激しい事か! 我が事ながら書いていてそう思ってしまう。

 そして、小学五年生に決定的な事が! そう、ワタシのクラスに転校生がやって来たのだ。名前は康恵ちゃんだ。ワタシは一目で恋してしまった。

 しかし、昭和の小学生である。今の小学生に比べると、当時は女子に好きだと言うのは軟派だと思われていた為に告白なんて出来やしなかった。

 そのままワタシは六年生になったが、ソコでまたもや転校生が来る。名前は恵美ちゃんだ。この子も可愛らしい顔をしていた。が、当時の私よりも背が高かった為に、私は好きにならなかった。

 しかし、そんな私に第一のモテ期をもたらしたのは恵美ちゃんだった。

 ワタシの父は昭和十年代の生まれで厳しい人だった。なので、ワタシは学校生活もかなり真面目に【演じて】いた。そう、【演じて】いたのだが、ソコに恵美ちゃんが惚れてくれたようだ。

 ある日、恵美ちゃんに呼び出されて体育館裏に行くと、恵美ちゃんとその友人が立っていて、ワタシの事を好きだと告白してくれたのだ。

 しかし、そう、【しかし】である。当時は女子と付き合うなんて軟派ヤロウだと言われる時代である。それにワタシは康恵ちゃんが好きだったから、内心は『こんな可愛い子に告白された、ヒャッホーッ!!』状態だったのをおくびにも出さずに、ぶっきらぼうに「付き合うとか、今は考えてないから」と言ってしまった。

 同窓会で会う度に恵美ちゃんにその事を突っ込まれてしまう。


 そんなワタシは康恵ちゃんを好きなまま小学生活を終えた。康恵ちゃんは頭が良かった為に地元の中学には行かずに都会の中学に行く事になった。

 中学に入学してからも、暫くは康恵ちゃんの事が好きだったワタシだが、新たな恋を見つけてしまう。そう、美由紀ちゃんの登場だ。地元の中学は地域に三つあった小学校から集まってきていた為に、新たな可愛い子に目が奪われてしまったのだ。

 それも結局は中学一年生の一年間だけだったのだが。二年生になってワタシは女神に出会った。そう、陽子ちゃんだ。

 陽子ちゃんは名前が示す通りに太陽のように温かい子だった。そしてワタシは中学を卒業するまで陽子ちゃんが好きだった。けれどもそんな事も告白出来ずに高校へと進学した。


 高校一年の時にワタシは女性を知った。学校はバイト禁止だったのだが、長期の夏休みに父に呼ばれて父の単身赴任先である関西のある県で、父が任されていたレストランでウエイター兼レジ〆のバイトをしていたワタシは、そこで同じくバイトをしていた十九歳の沙織さんに初めてを【奪われた】。そう、【奪われた】のだ。沙織さんは森口博○さんに似た美人さんであったが、年下初心が好みだったようで、ワタシはドストライクだったそうだ。

 そして、ワタシは長期の休みの度に沙織さんに手ほどきされて、女体の素晴らしさとその神秘を教わった。そのお陰か、高校三年間は可愛いと思う子はいたが、好きになる事は無かった。

 

 そんなワタシは高校卒業後、関西のとある府で西洋料理のコックとして働き始めた。同期入社は二十五人いた。ウチ、女性が十二人だ。

 ワタシはその同期入社で一つ年上の美沙さんに惚れていたが、皆さんは知っているだろうか? 料理人と言うのは手が早いと言う事を。

 ワタシが告白する間もなく、先輩だったタケシに美沙さんはモノにされていた。

 それから、入社して一年後にワタシは七十キロあった体重が過酷な仕事の所為で五十五キロまでに落ちてしまい、コックを止めてしまった。


 そして、バイトで食い繋ぎながら、正社員になろうと奮闘して、とあるカメラ屋に採用された。ソコでは同郷の方が店長をしていた事もあり、随分と可愛がられた。ワタシは成人式も地元に帰らずに、仕事をして過ごした。すると、会社形式だったカメラ屋の副社長と、同郷の店長から成人式のお祝いだと、五万円ずつ頂いたのは今でも忘れられない思い出である。


 更に翌年の事だが運命の出会いがあった。ワタシは久しぶりに三日間の休みをゴールデンウィークに頂いて、母に顔を見せる為に田舎に帰省した。

 そして、痩せたワタシを見て母に衝撃の一言を浴びせられた。


「アンタ、変なクスリを射ってるんじゃないでしょうね?」


 母よ、息子は今でもその言葉を覚えているぞ。今や半ばボケて施設で暮らしている母だが、死の間際にはその事を伝えて笑いを取りたいと思っている。


 そうして、あまり楽しくない帰省を終えて、仕事が待っている関西に帰ろうと乗った電車で、高校の同級生だった妻と再会したのだ。卒業以来で久しぶりに会った妻とワタシは、普通科と商業科でクラスは全然違っていたが、部活動が同じだった為に直ぐに意気投合して、関西に帰る電車で連絡先を交換しあった。勿論、当時は携帯なんて無くそれぞれが一人住まいだったアパートに引いていた固定電話の番号である。

 妻は大学生だった。関西に帰ってからワタシは頻繁に妻に連絡を取り、デートを重ねて親密になっていった。

 そして、何度も終電を逃して妻のアパートに泊まっていた。勿論その頃は手を出したりしてない。昭和の男は硬派なのだ。


 八回目のデートで、少ない給料を頑張って貯めて、最初の職場である某ホテルの鉄板焼きを予約して、妻をデートに誘いソコで初めて付き合って下さいと告白した。妻は直ぐにOKしてくれた。

 それからは早かった。妻の初めてを貰い、ワタシはこの子と結婚するんだと心に誓い、プロポーズも妻が大学卒業前に行った。


 妻は長女、次女の二人姉妹だった為に、何れは田舎に帰って家を継がなくてはいけないと言ってワタシのプロポーズを喜びながらも申し訳無さそうにしていた。しかし、ワタシは長男ではあったが、分家の小せがれであったので、婿養子に入る事に躊躇はしなかった。

 妻が大学を卒業して、田舎に帰った時にワタシは少し心に迷いが生じた。それは従妹の存在である。従妹の絵美は中学卒業後に当時イジメられていた地元ではなく、ワタシの母校を受験して合格したので、ワタシの実家から高校に通っていた。そんな絵美が高校三年生になり、就職活動を始めてワタシが住む府に企業見学の為に訪れた。その時はホテル代を浮かす為に、従妹の母親から泊めてやってくれと頼まれた為に、ワタシは快諾したのを覚えている。


 妻は大学卒業した後で、コチラには居なかったのも災いしたのだろう。従妹は見学を終えてワタシのアパートに帰ってきて、ワタシが仕事を終えてシャワーを浴びていた浴室に裸で侵入してきたのだ。そして、


「ハイ兄ちゃんに将来を約束した人が居るのは分かってるけど、それでも子供の頃から好きだったの。私はハイ兄ちゃん以外に初めてを奪われたくないから、この一回だけで後はワガママを絶対に言わないから抱いて」


 と言ってきたのだ。ワタシはその場で絵美を抱き締めて絵美の思いに応えてしまった。


 それが妻に言えない墓まで持って行くワタシの秘密である。その後、絵美は本当にワガママを言わずに普通に高校を卒業して、就職して結婚。今では二児の母である。


 ワタシは母が倒れたのを機に、田舎に帰り父と母を説得して妻と結婚した。二十五歳だった。


 三十一の時に三人目の子が産まれたのを見た父が亡くなった。それから数年後に四人目も産まれ、今では小学六年生である。

 母は、数年前にまた倒れて一度目に倒れた時には大丈夫だった左半身も少し麻痺が残り、結局は施設に入ってもらった。最近はワタシの顔を見ても清掃人だと思ってるようで、拙い口調で


「このゴミ箱のゴミをちゃんと処理してや」


 と言われている。何故か初孫であるワタシの長男の顔は良く覚えているようで、長男が顔を出すとニコニコしている。まあ、そんなモンだろうとワタシは少し寂しい気持ちになりながらも、そんな母を受け入れている。


 ここまでが、ワタシの記憶している要所部分だ。さて、ここからが本題である。


 ワタシは近所の人からも、そして愛護班(地域の子供を通じた親の班)の人からも愛妻家として認められている。勿論、妻もワタシが妻に今でも惚れている事に気がついているだろう。

 それに、それはワタシの子供達にも伝わっている筈だ。一度、息子が反抗期の時に、妻に暴言を吐いた事がある。ワタシはワタシの父がそうだったように、子供達には厳しく接していた為に、息子もワタシには反抗する事が無かった。

 但し、妻にはワタシが居ない時に反抗していたようだ。その日はワタシが居ないと思っていた息子が、何時もの様に妻に反抗して暴言を吐いた為に、ワタシは高熱でだるかったが、息子の前に飛び出して、言った。


「ワレは、ワシの女に何をぬかしとんじゃっ!」


 ワタシは怒ると地が出て関西弁が出てしまう。その時は二人の娘も居たのでかなり怯えさせてしまったものだ。しかし、それを今でも覚えている息子達は、それ以来冗談以外で妻に暴言を吐く事は無くなった。四人目はその出来事を知らない筈だが、兄姉から何か聞いているのかも知れない。

 

 そんな、今でも妻に惚れているワタシだが、目移りしない訳では無いのだ。

 可愛い女性を見れば頭の中を妄想が渦巻く。ソレは人妻だろうが関係無い。その女性を妄想の中で裸にして、抱いているのである。


 但し、誤解の無いように言っておこう。あくまでも妄想である。そして、自分の息子や娘と同じ位の歳の子は性的対象にはならない事も。

 ワタシの長女は二十一歳だ。息子は二十三歳である。ワタシが性的対象に見てるのは三十歳以上五十二歳以下の女性である。

 独身だろうが、人妻だろうがワタシ的にストライクな顔立ちで、スタイルで、性格が良さそうなら妄想が始まってしまう。

 不思議な事に若い頃は顔やスタイルが良ければ妄想できていたのが、不惑まどわずの年を迎えてからだろうか、どんなに顔やスタイルが良くても話して性格が悪そうだと思ったら妄想が始まらないのである。


 世間的には間違っているだろうが、コレが不惑まどわずなのだと妙に納得した自分がいる。


 そして、今日もワタシの妄想は全開である。組内に住む三十六歳の人妻、道代さんと早朝に互いに飼い犬の散歩で出会うと道代さんの小柄ながら大きな胸を想像して裸にして抱いている。


 買い物に行き、愛護班の人妻幸恵さんに出会うと、その細い足を両手で抱えて腰を振っているのである。(妄想)


 勿論、そんな事は顔にも態度にも表さないが、ワタシは思う。ワタシがそうなのだから、世の男性の九割は同じ様な妄想をしている筈だと。


 何故なら、ソコに魅力的な女性が妻以外にも沢山居るのだから……








※注意


 コレは実話ではありません。

 また、作者自身の事でもありません。(ここ重要。笑)

 作中に表される人名は全てフィクションです。

 全ての男性がそうだと言う訳ではありません。



 最後まで駄文をお読み下さり、有難うございます。共感されたなら、ハートと星をよろしくお願いします。m(_ _)m

 女性には心より謝罪致します。
































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