第116話 宝探しと海中探索
「さーて、今日は張り切って宝集めするぞー!」
ティアラちゃんとのトラブル(?)もあって昨日はほとんど出来なかったけど、本来の目的はイベントの宝探しだ。
お姫様のクエストやってる間、ずーっとモンスター達に任せっぱなしだったし……たまには自力でやらないとね!
「というわけで、キュー太と一緒に素潜りに挑戦してみたいと思います」
水着装備で砂浜に立った私は、カメラに向かってそう宣言する。
なんでも、海上を進むより海の中を探索した方がたくさん手に入るみたいで、試しにやってみようと思ったの。
たまには一人でね!
『クレハちゃん泳げないのに?』
『キュー太にちゃんと掴まってないとダメだぞ』
『というか宝探しはもうモンスター達に任せておくのが一番効率良いのでは』
「はいそこうるさーい! それじゃあ配信者の意味ないでしょー!」
確かにね? 私の知らないうちに、モンスター達がじゃんじゃん宝箱集めてくれてたよ?
でもね、あくまで私がご主人様なの。私が活躍して手に入れないと、意味がないの!!
主に、投げ銭的な意味で!!
『確かに、クレモンの活躍はどこぞのブロガーが纏めてるだけで、クレハちゃん自身が配信してるわけじゃないしな』
『クレハちゃんの収益になるのはクレハちゃんの活躍だけ』
『いや、言うて俺は一日の終わりに見るクレモンの成果発表も好きだけどなw』
『俺もw』
コメントに、そんな内容が口々に書き込まれる。
ふむ、なるほどなるほど。
「じゃあ、今日は私とたぬ吉達、どっちが多くのお宝を集められるか勝負だよ! ご主人様の力見せてあげる!!」
『おー』
『頑張れー』
『クレハちゃんに勝ち目ある??』
『クレハちゃんはクレモンが本体だからなぁ……』
『クレハちゃんには天下無双の幸運があるだろいい加減にしろ!!』
『その幸運の恩恵を常に受けてるのがクレモンなのでは?』
『やっぱ勝ち目ないわ』
『運だけのクレハちゃんと、運に実力が伴ったクレモンではな……』
「みんなひどくない!?」
確かに私は運以外取り柄がないけど、だからってそんなにハッキリ言わなくてもいいと思うの!! みんな、オブラートに包むってことを覚えようよ!!
「ふーんだ! 絶対お宝ざっくざっく見つけ出して、みんなのこと見返してやるから!」
『頑張れw』
『もし出来たらたぬ吉達の稼ぎとの差額分投げ銭するわ』
「あ、言ったねー? 約束だよ?」
これは俄然負けられなくなったね。
ふんす、と気合いを入れていると、更に追加のコメントが流れていく。
『クレハちゃんが負けた時はどうするの??』
『そっちも何か賭けようぜ』
「うん? いいけど、どうしよう? お金かかることは出来ないけど」
私、そんなに余裕のある暮らししてるわけじゃないからね。
いや、視聴者にお金賭けさせて、自分は賭けないっていうのもどうかと思うけど……。
『じゃあ、俺らが勝ったらクレハちゃんはコスプレしよう』
『ティアラちゃん監修のファッションショー見たい』
『そして締めにキスしよう(提案)』
『最後のはティアラちゃんが死ぬだろ自重しろw』
「うん? ティアラちゃんが許してくれたら私は大丈夫だけど……それでいいの?」
『全然オッケー』
『超楽しみ』
私のファッションショーにそんなに需要があるとも思えないけど、みんなそれが良いって言ってくれてるし、いいのかな?
いや、私は全然負けるつもりないけどね!!
「それじゃあ、早速潜ってくよ。キュー太、行こう!」
「キュ!」
キュー太の背中にしがみつき、海の中へダイブしていく。
これまではサメに追いかけられたり、溺れかけたりとそんなことばっかりであまり余裕もなかったけど、改めて海中を見渡すと色んな魚やサンゴみたいなものもあってすごく綺麗。
これなら、もう少し早くから海に潜れば良かったかな?
(っと、お宝探さなきゃならないんだった)
海の中を泳いでるだけでも楽しいけど、目的はあくまでお宝だ。
お姫様がお宝に色を付けてくれるんだから、出来ればお姫様が喜びそうなやつがいいよねー。
まあ、お姫様が何を好んでるのか全く分からないんだけど。
(んー、なかなか見付からないなー)
海中の方が多いって言っても、そんなにザクザク拾えるなら苦労しない。
水着装備の効果があっても、息が続く時間には限りもあるんだし、早くしないと。
(……おお?)
そんな時、海の底に宝箱らしきものが沈んでいるのが見えた。
しめしめ、早速一つゲットだと思いながら手を伸ばすも、なんだか岩の間に挟まってるみたいで動かない。
(んん?)
よいしょっ、よいしょと引っ張ったり、インベントリにそのまま収納出来ないかと触ってみるも、やっぱり反応なし。
どうすればいいんだろ? と首を傾げつつ、とにかくもう一度、力の限り引っ張ってみる。
(んぎぎぎぎ……!!)
岩場に張り付き、精一杯引っ張るも、びくともしない。
もしかして、筋力値のステータスが一定以上ないと取れないとか? だとしたら困るんだけど。
「キュー!!」
そんな風に思ってたら、突然傍にいたキュー太が岩に向かって《水鉄砲》を放った。
岩が砕け、挟まっていた宝箱(?)が一気に外れる。
(むむむ!?)
急に抜けてびっくりしたけど、これでようやくお宝が一つゲット出来る。
そう思ったんだけど、私が掴んでいたのは宝箱なんかじゃなく、箱みたいな形をしたリュックだった。
そして、当然ながらリュックには、その持ち手というのが存在するわけで……。
「ぬおお!? なんじゃ、お主がワシを助けてくれたのか?」
「がぼぼぼぼぼ!?」
シュノーケルみたいな装備をつけたお爺ちゃんの顔が突然目の前に現れた私は、驚きのあまり叫んでしまい、危うく、探索開始早々に溺れ死ぬところだった。
視聴者のみんなには大爆笑されたけど……これ、私のせいじゃなくない?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます