第101話 煽られ女神と七海宝物
「ふむ、つまりこの宝石はお主がうっかりそこの穴に落としてしまったものじゃと?」
「そう、そうなの! それで、取りに行こうとしてこう、ぴょーんってしたら、あなたが下にいたってこと。分かってくれた?」
王女様を結果的に押し倒してしまった私は、現在地面に正座させられ、王女様直々のお説教を食らっていた。
ティアラちゃんの存在はスルーされてるから、不法侵入そのものより、王女様を押し倒したことの方が問題視されてるみたい。いいのそれで?
「理由は分かったが、わらわを押し倒したことは許さん! まだ婚約者もおらぬこの身を、よりによってこのようなちび助に弄ばれるなど……」
「ちび助!? その言葉はちょーーっと聞き捨てならないな!? 私はまだ成長途上なんですー、ちび助じゃありませんー!!」
『弄んだって方はいいのか』
『てか、クレハちゃんが自分で言ってた通り高校生なら、もう伸び代ないのでは』
『しっ、言ったらダメだろそれは!』
『現実は時に残酷なんだぞ!』
『本当のこと言ったら女神が泣くだろ!』
「あんたらもかーー!!」
いっつも人のこと子供扱いしてくる癖に、こんな時だけ高校生扱いして!!
いや、本当に高校生だからそれはいいんだけど、伸び代ならまだあるし!! 私はちょっと成長が遅いだけだし!!
「というわけで、この宝玉は没収じゃ。ぐふふ」
「待って、元々あげるために来たからそれはいいんだけど、没収は納得いかない! 報酬は!?」
「不法侵入とわらわを押し倒した罪を考えれば安いものじゃろ」
「むぐぐぐぐ!!」
ここに来て不法侵入の方を持ち出すなんて卑怯だよこの王女様!!
いや、相変わらず押し倒された方も気にしてるみたいだけど!
「そうですよ、横暴です……! そもそも、クレハちゃんに押し倒されるなんてご褒美じゃないですか、嫌なら私と代わって欲しかったです……!」
「そうだそうだー! ……ってちょっと待ってティアラちゃん、それはそれでおかしくない?」
押し倒したのは単なる事故だし、怪我もないのに罪だなんだ言われるのは納得いかなかったのは確かだけど、ご褒美にはならないと思うよ?
まあ、恋愛ドラマとかならそういうシーンもなくはないけど……どうせやるなら私じゃなくて、カッコいい男の子がいいんじゃないかな?
「やかましい! わらわの決定は絶対なのじゃ! ……しかし? どうしてもというなら、条件付きで許してやらんこともない。報酬もきちんと払おう」
「条件?」
すっごいにやけ顔で、王女様はそんなことを言い出した。
悪そうな表情を精一杯作ってるんだろうけど、あんまり悪人っぽくないね。これはこれで可愛いよ。性格は前情報通りワガママな感じだけど。
「この《海竜の宝玉》が名を連ねる《
『特別クエスト:ワガママ王女の無茶振り案件が開始されました』
クエスト:ワガママ王女の無茶振り案件
内容:《海竜の宝玉》、《海魔の卵》、《海神の矛》、《海王の牙》、《海姫の涙》、《海鬼の角》、《海凰の羽》をスピナ王女へ納品せよ。
「えー……」
「えーとはなんじゃ!? わらわがせっかく慈悲を与えてやっておるというのに!」
見た目だけならティアラちゃんより年上の女の子がぷんすこと頬を膨らませる姿は可愛いけど、その内容は全く可愛くない。
ドラミが守ってた宝石と同等のアイテムってことは、全部同じくらい難しいってことだよね? それをあと六つ?
クエストの名前通り、随分無茶振りかましてくるね、この王女様。ていうか、スピナって名前だったんだ。
「それに、王様経由で納品しても報酬は出るんだよね? ……どっちの方が貰えるか怪しいなぁ」
『まあ、こんなルートはまだ誰も見付けてなかったしな』
『走破するにも骨が折れるし、どっちがいいかはわからん』
視聴者のみんなからしても、果たしてどちらがいいのかは判断つかないらしい。
多分……というか、まず間違いなくイベント限定のクエストだし、別に挑戦してもいいんだけど……うーん、この王女様の口車に乗るのはなんか納得いかない。
「それとも、やはりお主のようなちび助には、《七海宝物》全てを集めるのはちぃとばかり荷が重かったか……?」
「カッチーーン!! いいよやってやろうじゃない、私にかかればどんなお宝だってちょちょいのちょいで集められるってとこ見せてあげるよ!!」
『クレハちゃんちょっろ』
『散々渋ってたのはなんだったのか』
『煽り耐性ゼロの女神ちゃん』
『可愛い』
「しゃらーーっぷ! 外野は静かにーー!!」
人には誰だって、引けない戦いっていうのがあるんだよ。
そう、私はちびじゃない。成長が人より遅いだけ!! それを証明するために、この王女様を何がなんでもぎゃふんと言わせなきゃならないの!!
「それじゃあ、どんな報酬か知らないけど、きっちり用意して待ってなさいよね。すぐに持ってきてあげるから!!」
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