第35話 溶岩の川と炎の鰻
『まさかの宝探しクエスト』
『内容はボス討伐だけどな』
『都合良すぎて笑う』
降ってわいた幸運に、コメント欄は活気付く。
スイレンがやってたゴーレム討伐クエストが既に達成済み扱いで、追加受注も問題なく出来たのが大きいね。
「というわけで、地下探検の始まりだー!」
「お、おー!」
思い切り拳を振り上げる私に、ティアラちゃんも追従する。
そんな私達を見て、スイレンはなぜか拝み出した。いやなんで。
「いやー、眼福眼福……と、それはともかく。そこら辺に流れてる溶岩、触ったら絶対にダメージ入るやつだから、クレハは気を付けなよ」
「分かってる分かってるー」
私の少ない体力でそんなことになれば、一瞬で死に戻りだしね。
今日散々集めたアイテムやお金もパーになっちゃうし、言われるまでもなく気を付けないと。
「いくら私がドジだからって、こんな熱そうな溶岩に突っ込んだりしないよ。誰かに押し込まれでもしたら別だけど……」
「ギャオオオオ!!」
「ふぎゃー!?」
そんなことを呟きながら溶岩の方を見ていたら、唐突に炎の鰻(?)みたいなモンスターが溶岩の中から現れた。
ちょっ、そんなところに隠れてるのズルくない!?
種族:マグイール
レベル:13
「ギャオォ!!」
「ちょっ、え!?」
驚く私に向けて大口を開けて襲いかかってきたマグイールは、私をパクリと咥え……そのまま溶岩の中に引き摺り込もうとする。
待って待って、私の《不死の加護》は単発攻撃にしか対応してないよ! 溶岩の継続ダメージ(予想)はダメだってー!
「スイレン、ヘルプー!!」
「分かってるって、《サンダーボルト》!!」
すぐさまスイレンから支援の魔法が飛び、マグイールに直撃。
その衝撃でマグイールは溶岩の中に逃げて行ったけど、代わりに私はポーン、と投げ飛ばされてしまった。
ちょ、これ結局溶岩の中に落ちるパターンじゃ!?
「スカイ、クレハを受け止めて! 《飛翔》!!」
「ブルルッ」
そんな私を、スイレンの相棒が素早く空中でキャッチしてくれた。
ふう、助かったぁ。
「まだ仕留めきれてない、追撃するよ! ティアラ、索敵お願い!」
「は、はいぃ! ルビィ、《探知》!」
「コン!」
私が九死に一生を得ている間に、下ではマグイールとの攻防が続く。
ティアラちゃんの火狐が繰り出した炎の索敵によって、マップ上に敵性モンスターの現在地が表示されるんだけど……。
「あれ、ちょっと多くない?」
マグイールは一体だけではないようで、溶岩の中に次々と反応が生まれていく。
どうやら、攻撃されてアクティブになったマグイールが溶岩の中を泳ぎ回り、他の仲間を呼び集めているみたい。
「取り敢えず、順番にやってくしかないか! 《サンダーランス》!」
飛び出して来たマグイールに、スイレンから追加の一撃。
けれど、最初に攻撃してきたのとは別個体だったようで、撃退するのみに留まっている。
「ギャオオオオ!」
「スカイ、《ホーリーフラッシュ》!!」
「ブルルッ!」
「うひゃあ!?」
当然、その隙を突いて他の個体が攻撃してくるんだけど、私を乗せたままスカイがスキルを使用し、さらに撃退。
そうして時間を稼ぐことで、スイレンが次の魔法を繰り出す準備をしているみたいだけど……中々追い付かないみたい。
「わわわっ! ル、ルビィ、《ファイアウォール》!」
「コンコンッ!」
ティアラちゃんを襲おうとしたマグイールが、ルビィの張った炎の壁に阻まれて一瞬止まる。
けれど、属性が同じであまり相性がよろしくないのか、すぐに突破されてしまった。
「ひう……!?」
「ポチ、助けてあげて!!」
「クオォォン!!」
その場でルビィを庇うようにしゃがみこんでしまったティアラちゃんを助けるように、ポチが《切り裂く》で攻撃を仕掛ける。
弾き返されたマグイールを狙い、追撃を仕掛けようとするポチだったけど……溶岩の中に突っ込むことも出来ず、立ち往生。
ゆらゆらと体を揺らして挑発するマグイールにキレたのか、いきなり《ライトバスター》をぶっぱなしてるけど、ひらりと避けられてしまった。
どうどう、落ち着いて。
『なんちゅー厄介なモンスターだよ』
『これ結構じり貧では? ヤバくね?』
視聴者のみんなからも、少しずつそんな声が上がり始める。
ルビィの《探知》がなきゃ最初の私みたいに不意打ちを食らっちゃうけど、こっちのスキルにはどれもCTがある。
でも、向こうの溶岩に隠れるアクションはスキルじゃないのか、攻撃する時以外は陸に上がってくる様子はない。
それでいて、こっちの攻撃はどれもかなり効いてはいるけど、一撃で仕留められるほどじゃなく……状況は中々好転しなかった。
「うん、なるほど、大体分かった」
そんな中で、スイレンがふとそんな言葉を口にする。
もしや、攻略の糸口が掴めたのかな? と、私も配信の視聴者もみんな期待を高める中……くるりと、スイレンは踵を返す。ほえ?
「二人とも、ここは一時撤退するよー! 駆け足!」
「えぇぇぇぇ!?」
「ま、待ってください~!」
すたこらさっさと入り口へ向かってダッシュするスイレンを追って、私とティアラちゃんも必死に走る。
こうして私達は、探検開始早々の撤退を強いられるのだった。
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