第34話 隠しエリアとお爺ちゃん再び?
「へー、まさかこんなところに隠しエリアがあったなんて……流石はクレハ、転んでもタダじゃ起きないというかなんというか」
『転ぶことすら幸運への布石』
『というか転んだ不幸に対して返って来る幸運が大きすぎる』
『これがリアルラック9999の力か』
「勝手に私のリアルステータス決めないで!?」
私がバクシンライノ──ゴンゾーと名付けた──に吹き飛ばされた先で、偶然見つけた崖の横穴。
どうやらそこはかなり奥まで続いているようで、隠しエリアの発見だとみんな浮足立っている。
「入口のところに一本だけ木が真横に生えてるから、これを目印に飛び降りた人か、飛行系の騎乗モンスターで降りた人だけ見付けられるようになってるみたいだね。中々性格悪い隠し方するなぁ、運営も」
『落ちたら即死なはずの場所だからな』
『枯れ木一本不自然に生えてるからって、飛行系連れてなきゃ調べようとも思わん』
「それで、えと……奥、調べてみますか?」
議論が白熱し始めたところへ、ティアラちゃんからそんな問いかけが。
今回の目的はお金稼ぎで、隠しエリアの攻略じゃない。受注したクエストも既に粗方達成条件を満たしてるし、特にここを調べる理由はないんだけど……。
「せっかく見つけたんだし、覗いてみようよ! その方が面白そう」
「やばかったら退けばいいだけだしね、いっちょ行きますか」
「お、おー!」
私が意見を口にすると、スイレンもティアラちゃんも異存はないのか、早速中を調べることに。
これまで山の上を目指して昇って来たわけだけど、この隠しエリアは地下へ潜っていくパターンのようで、下り階段を三人(とモンスター三体)で並んで降りていく。
ティアラちゃんのルビィはともかく、スイレンのスカイと私のポチにとっては中々に狭いその階段に息苦しさを覚えつつも進んでいくと──
「うわっ、暑っ!!」
その先に広がっていたのは、真っ赤な溶岩が至る所に流れる灼熱のエリア──《業火の坩堝》だった。
「落ち着いてクレハ、ゲームなんだから焼けたりはしないよ。気温も入った時の一瞬くらいしか変化ないし」
「分かってるけど、もう見てるだけで暑いというか。ティアラちゃんは大丈夫?」
「うん、私は平気だよ。それより……あそこのNPCのお爺さんは、大丈夫かな?」
「へ?」
ティアラちゃんが指差した先に目をやると、確かにお爺ちゃんのNPCが一人、岩場にもたれかかって休んでいた。
って、あのお爺ちゃんなんか見覚えが……。
「あっ、思い出した、キノコ爺さんだ! なんでこんなところに!?」
「なぬ、キノコ爺じゃと!? 儂をあの偏屈な弟と一緒にするでない、儂はトレジャーハンターのお宝爺さんじゃ!!」
「ええ!? えっと、ごめんなさい?」
まさかの兄弟!? しかも相変わらず本名ないし!
プンプンと怒りを露わにしながら目前まで迫って来たお宝爺さんに驚いていると、このお爺ちゃんはそのままじろじろと私達を見る。
「おぬしらテイマーか、ここはお前達のような者が来るようなところではない、早く立ち去れ!」
「そ、そう言われても……」
キノコ爺さんはクエストをくれたけど、この人はむしろ追い出そうとする立場みたい。
私やスイレンはどうしたものかと困り果て、ティアラちゃんはあまりの剣幕に怯えて私の背にぴたりと隠れてしまった。
けれど、お爺ちゃんはそんなティアラちゃん……というより、ティアラちゃんが首から下げている《幸運の首飾り》を見て、「むむ?」と眉を潜めた。
「それは、儂の家内の作った首飾りではないか。お主ら、あやつと知り合いか?」
「えっ、家内って……お爺ちゃん、あのお婆ちゃんの旦那さん!? ってことはサーヤちゃんのお爺ちゃんでもある!?」
「そうじゃぞ」
あまりにも予想外過ぎる家系図の判明に、コメント欄にも『な、なんだってー!?』との文言が並ぶ。
いやー……あの一連のクエストがこんな形で繋がるなんてね。
「ふむふむ、なるほどな……その首飾りをつけておるということは、家内や孫娘が世話になったようじゃな。そういうことなら仕方ない、お礼に儂からとっておきの情報を教えてやろう」
「とっておき……?」
一気に態度を軟化させたお爺ちゃんが、「ほれ」と懐から一枚の紙切れを取り出し、首飾りを持つティアラちゃんへ差し出す。
恐る恐る、それをティアラちゃんが受け取ると……どうやらそれは、この隠しエリアの地図のようだった。
最奥と思われる区画に大きく×印がマークされたそれは、まるで宝の地図のようで──ポーン、と鳴り響いたメッセージは、予想したそれを肯定するものとなっていた。
『クエスト:お宝爺さんの宝の地図が発生しました』
クエスト:お宝爺さんの宝の地図
内容:業火の坩堝最奥に眠る財宝を手に入れろ。
「このエリアの最奥には、一体の強大なモンスターがおってな。そいつが守る金銀財宝が眠っているという噂なんじゃ。儂はこの通り、ここの暑さにやられてとても踏破出来そうにないが……儂の家内を助けてくれたお主らになら、それを託してもよかろう。頑張るのじゃぞ」
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