第19話 sideエマ Last

(エマ視点)


イアン。あなたを愛しているわ。

これまでも、これからも、ずっと…。



2人並んでシチューを作った。

あなたもおじいちゃんも好きだったカブのシチューよ。


楽しかった。

普段あまり饒舌で無いおじいちゃんが、シチューを作った時だけは口が軽くなる。

イアンと言い合いしたり、私の普段着が派手すぎるなんて事も言われたっけ。

そんな事ないんだけどなあ。


両親が亡くなって、祖父に引き取られて、忙しい祖父の代わりに私が料理をするようになったけど、最初は全然上手く出来なくて。



イアンに初めて振舞った時も、火加減を間違えて焦がしてしまったし。




「ふふっ」

「どうしたの?エマ」

「昔のこと思い出しちゃって。あなたに初めて食べさせた手料理は、焦げてるのに生煮えのカブのシチューだったなあって」

「ああ、そんな事もあったなあ。頑張って食べたからあの後お腹壊したんだよね…」

「え?なにそれ、初めて聞いたわ」




知ってる事。知らない事。

あなたと笑い合えるこの瞬間は、何よりの宝物だった。


残り少ない時間に、思わず弱音を吐いた。

あなたともっと一緒にいたいんだって、叫んだ。

笑って誤魔化したけど…たぶん、もう限界だったの。



「私、あなたの子供が見たいの」


あなたと私の子供を抱いて、愛してるって言いたかった。


「あなたには幸せになってほしいの」


私があなたを幸せにしたかった。



私、今凄くいっぱいワガママを言ってるわ。


でも、あなたは良いって言うの。

私を好きだと言ってくれるの。


手を繋いで夜通し話した。

愛してるって言えば、愛してるって返ってくる。

大好きよって言えば、僕はそれ以上に大好きだって返ってくる。


ねえ、知ってる?

私、幸せだったの。

今の私が知らない私も、きっと幸せだったに違いないわ。



イアン。私の愛しい人。

だから、ね。そんな悲しい顔しないで?

ごめんね、本当は私の事忘れて欲しいって言わなきゃいけないんだろうけど。

私、それだけは絶対言いたくなかった。


覚えてて欲しいの、私の事。

他に好きな人ができても良い、けど、私を愛してくれていた事を忘れないで欲しいの。


ワガママだよね…ごめんね。あなたをまた置いていくのに…。

でも言ってやれない、ごめんね。イアン。


私の最愛のあなた。

愛しているわ。



「…君をずっと忘れない。忘れられるわけない…。愛してるよ、エマ…君は…君こそが僕の最愛だ」


あなたの震える声を聴きながら、私がどんどん薄くなっていく。




どうか、あなたがこれからも幸せでありますように…。


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メモリアル〜心の人形 @listil

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