第9話 元気な君と

(イアン視点)

メモリアルが目覚めて、もう一つ驚いた事がある。

彼女の姿が、元気な頃の、結婚したばかりの頃のエマに見えるんだ。



「…っ、なんでもないんだ…。おはよう、エマ」


「大丈夫よ。何も怖くないわ」


彼女がそっと抱きしめてくれる。

自動人形(オートマタ)のはずなのに、その身体は温かくて…。


「こうやってあなたを抱きしめてると、なんだか昔に戻ったみたいね」


思い出を語るその声も、表情も、君そのもので…


「愛してるよ、エマ」


「ふふっ、私も愛してるわ。イアン」


愛しさが溢れて仕方なかった。



「ああ、全然痛くない。良いわね、最高!」


苦しむ君はどこにもいなくて、


「おもいっきり走り回れるって素敵!イアン、あなたも来なさいよ!」


本来の快活な君がそこにいて、


「大好きよ、イアン」


都合の良い夢なんじゃないかって、頬をつねった。


「痛い…」

「あははっ、もぉ、何してるのよ」


おかしそうに彼女が笑う。



1週間だけでも良い。

君と過ごせる奇跡…彼女が元気になったらやりたいと思っていた事を、全部しよう。



「エマ、お願いがあるんだ。あのね?」

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