第5話 抜け殻
それからしばらく、穏やかな月日が流れた。
変わらずイアンは鉄を叩き、エマは側で微笑み、子爵家から手紙が来た。
仕事が少しずつ増え、エマの体調が良好な日が増え、未読の手紙が増えていく。
「ねえ、イアン!私、久しぶりに街に行きたいわ!なんだか最近調子がいいし、友達にも会いたいし!いいかしら?」
どうしてあの時「いいよ」なんて言ってしまったんだろう…。
どうしてあの時一緒にいたのに、守れなかったんだろう…。
イアンが目覚めたのは、知らない部屋だった。
そこが街にある診療所だと気づいたのは、エマの痛み止めを処方して貰っている医師が部屋に入ってきたからだ。
医師はイアンが目覚めた事を喜び、言いにくそうに顔を逸らした。
医師に案内された場所に、彼女はいた。
「…エマ?」
触れると柔らかな赤毛の髪も、白い肌もボロボロで…綺麗な緑の瞳は、固く閉ざされたまま…
イアンはそっとエマの頬に触れた。
伝わってくるのは、冷たい体温…
そこにあるのは、エマの抜け殻だった。
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