第15話 優等生、山本美咲

 一時間目の授業は国語だ。授業が始まる前にノートと教科書を机の上において置かなければいけない。そう担任の先生に言われた。そして美咲はその言葉の通り、ノートと教科書を机の上に置いた。美咲はまじめで小学生の時から模範的な優等生であった。その性格は不真面目で攻撃的な三階堂あまねとは対局に位置していた。


 美咲とはあまねは犬猿の中であった。


 クラスメイトたちはざわざわとしていた。美咲はそんなクラスメイトたちを静かに眺めていた。そうしていると、ふと鬱病のお母さんのことが気になった。お母さん、大丈夫だろうか。お母さん、必ず元気になるから。美咲はそう心の中で祈った。美咲はお母さんの介護があるから、クラブ活動はできないなと思った。仕方がないなど思った。でもそうだからといって、お母さんを恨むようなことは美咲はしない。だって美咲は優等生だから。美咲は自分がしっかりしてお母さんを支えなければと思った。


 やがてチャイムが鳴った。国語教師が教室に入ってきた。


 美咲は国語の教科書を開いて、それを静かに眺めた。


 そんな美咲の姿を三階堂あまねはジロジロと舌なめずりしながら眺めていた。


 美咲もそれに気づいていたが、どうせあまねは美咲をバカにしたり、陥れることを考えているのだろうと思った。

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